第205話 どこでも仮眠
『こちらマクリーン、おかげでもう60台、全台稼働出来たぞ。 今からオアフ島の奪還作戦を開始する。』
「こちら武蔵、貴部隊のご武運をお祈りします。」
岸壁の戦車が一斉に動き出して、散らばって行った。
「よし、少なくともこの港近辺には敵脅威は無いから、一旦コンディションイエローにしようか。」
「了解。艦内コンディションレッド解除、コンディションイエローへ移行。」
シオリが復唱する。
「さてー、お待ちかねー、コンディションイエローと言えば、これだよねー。」
ミズキがポケットからくじ引きマシーン、KBM1を取り出した。
「さー、休憩順番決めゲームの開始だよー。まずはボタン押しの順番決めからだねー。 はい、じゃんけん、ポイっ!」
「あ、ミユキの負けですね・・。」
「やったー。今回のジャンケンは勝ったよー。これはわたし、波に乗ってるかもねー。じゃ、わたしから押すからねー。 まずはマシーンに人数をセット、2人だよっと。よし、オッケー。じゃ、じゃんけんに勝った、もう一度言うよー、じゃんけんに勝った、強運の女神のわたしから押すよー。それ、ポチっとな。」
くじ引きマシーンの画面が一瞬全部が黒くなって・・・そのままボタンの画像に戻った。
「あれ? 外れた? みたい? かな? あら?」
「それじゃ、次はミユキの番ですね。押しますよ、ポチっと。」
またしてもくじ引きマシーンの画面が一瞬全部が黒くなる。しかし、今回は直ぐに花火のような動画が映し出されて、同時に、高らかにファンファーレが鳴った。
「あ、ミユキ当たりだ。休憩行ってきますね。」
「私も工房へ戻ります。」
ミユキとシオリが一緒に艦橋を出て行った。
「なぁ、ミズキ?」
「ユーさん、今日も良い天気で気持ちが良いねー。ふんふーん♪」
いや、今は夜だから外は真っ暗だよ・・。
わかったよ、しばらく放っておくから、自力で復活してくれよな。
その後もミズキは一人で、くじ引きマシーンのボタンを何度も押してみている。
艦長席で調べものをしてると、ちょっと喉が渇いて来た。
「なぁ、ミズキ、オレ、何か飲み物頼みたいんだけど、どうする?」
「あー、いーなー、わたしも頼むよー。じゃ呼ぶねー。」
ミズキが配膳ロボを呼びだした。
とりあえず、敗戦ショックからの復活はしたみたいだな。
「疲れた時は甘いものだよねー。あ、これにしよーっと。キャラメルマキアート一つっと。ユーさんは何するのー?」
「オレはロイヤルミルクティーが良いな。」
「はーい、ロイヤルミルクティーが一つっと。はい、ポチっと。」
配膳ロボが持ってきてくれたロイヤルミルクティーを飲みながら、窓の外を見る。
もう深夜なんで、何も見えないけど、停船中の艦から陸上が見えてると思うだけでも、なんかちょっと安心する気になるもんなんだな。
「お疲れ様です、交代です。」
ミユキが艦橋へ上がって来た。もうそんな時間なんだ。
「じゃー、よろしくねー。休憩行ってきまーす。」
ミズキが元気に艦橋を出て行った。
「ユーさんは休憩とか仮眠とか良いんですか?」
ミユキが艦長席の方を向く。
「仮眠もしたいと思うんだけど、ほら、まだ奪還作戦中だから、念のため、ね。」
「そうですか。じゃ、艦長席で少し仮眠されたらどうですか? ミユキが居るから大丈夫ですよ?」
「そう? サンキュ。 まぁ、じゃ、疲れてきたら遠慮なくそうさせてもらうよ。」
「おっ疲れー。交代だよー。」
ミズキが入ってきた声で目が覚めた。あ、結局、あの後すぐ寝ちゃってたんだ。
「休憩行ってきます。ミズキ先輩、よろしくお願いします。」
「まっかせてー。」
ミユキが艦橋を出ていくのが見える。
「あれー? ユーさん、ずっとここに居たの―? 休憩してないのー?」
「あ、いや、ここで寝てたみたいだよ。 ここで寝るのも案外気持ち良いんだよ。」
「あー、それはわかるかもー。でも、身体のためにはちゃんと横になって休憩したほうが良いんだよー。」
「あぁ、ありがとう。オアフ島の奪還が終わったら部屋へ戻るよ。 今もマクリーン大佐達が任務遂行中だと思うと、部屋でのんびりって気分にもならないしさ。」
「そっかー。それならせめて、ここで仮眠だねー。 わたしが見てるから大丈夫だよー。」
「ありがとう、遠慮なくそうさせてもらうよ。」
って、オレ、さっきから艦長席で寝てるだけの人になってるけど、良いのかな・・。
「お疲れ様です、交代です。」
ミユキが艦橋に入って来た。
あらっ、ってことは、オレ、3時間づつ、2回、合計6時間ずっと艦長席で寝てた?
これ、皆よりよっぽど休憩してんじゃね?
いや、そんなことより、流石に椅子で寝すぎて身体がバキバキになってるぞ。
「ミユキ、オレ軽く艦内巡回してくるよ。 ずっと座ってから身体がさ・・。」
「あ、はい、了解です。 そうですよ、たまに身体動かしとかないと。」
せっかく停船中なんで、甲板上も一周してみる。 夜明け前のピンと張りつめた冷たい空気が気持ち良いな。
艦内を半周したところで艦橋へ戻った。
窓から見える空は薄っすらと明るくなり始めてる。




