第29話 顛末
「あぁ、まぁ、この程度はレジェンド探偵としての基本中の基本だがな。 で、オレ達が襲われた近くに、同じようにグルアッシュに襲われたと思われる馬車があったんだ。 その積み荷はハチミツ、銀製のカトラリー、シルク、水晶、塩等があったな。想像するに、盗賊、もしくは強盗団の馬車だったんだろうな。」
「ふむ、確かにその積み荷の内容だと一般的な貿易商人では無いの。」
「残念ながら馬車に乗っていた人達は全員息絶えてたんだが、一人だけ、そう、カールさまだけが、現場近くの草むらに倒れていたのさ。 それを見つけ出したのが、こちらのニーニャってわけさ。その後は、一分一秒でも早く、カールさまをヴァルトベルクへお連れすべく、オレが背中に背負って全速力で走って戻って来たって訳なのさ。」
「それはそれは大儀であったの。 いや、ただ、さっき貴殿は、カール様が写真と違うと言っていたような? はて、そうだとするとどうして、カールさまだと気づいたのかの?」
う・・そこは忘れていてもらっておいた方が良かった部分なんだがな・・。
「いやなに、オレが言いたかったのは、写真と違う、という事実で、それこそそれは、本人が居るからこそ言える話だからな。」
「なるほど、確かにそれはそうじゃの。 と言う事は、その盗賊団がカールさまを誘拐したということか? して、何者なのか、その盗賊団は。」
「いや、今の段階ではそこまでは分かってないさ。なにせ、今説明したとおり、盗賊、もしくは強盗団の馬車はグルアッシュに襲われて、カールさま以外が全滅していたからな。だから、まずはカールさまの安全の確保、そしてこれから、盗賊、強盗団の調査を進めることになるな。」
「確かにそうじゃの。わかった。それでは、引き続きよろしく頼むぞ、朝倉殿。」
「あぁ、任せておいてくれ。 ただ少し、頼みがあるんだが。」
「なんじゃ?頼み事とは?」
「まず、このニーニャ嬢をオレの助手としてチームに加えて欲しい。まぁこれは、既にカールさま誘拐に関する事実を知ってしまってる以上、そちらとしても、彼女はこちらにチーム入れておくことこそが最適解だと思うしな。 それと、ニーニャにも宮廷広報のIDを作って欲しい。そして、オレのIDの再発行だ。 グルアッシュとの戦闘の際に無くしてしまったのでな。」
「なるほど、それは理にかなった話、承知した。助手の給与条件は宮廷職員と同じ程度で良いかな?」
「あぁ、良いだろう。それではオレ達はこれで一旦失礼させてもらうぞ、とにかく戦闘からの走り続けなので、かなり疲れてるのでな。」
「いやいや、カールさまを連れて走ってもらった朝倉殿たちをそのまま帰すわけにはいかん。いま、部屋を用意させているので、今夜は宮廷に泊って行ってもらいたい。もちろん食事も用意する。」
「そうか、まぁ、そういうことならありがたく頂戴しようか。とにかく身体が痛くて堪らないので、早く休みたいのだ。」
「わかった、後で部屋にマッサージ師も手配する。もう少しで部屋の準備が整うので、もうしばらくだけ待たれよ。」
コンコンコン。
近衛騎士団長室の扉がノックされる。
「どうぞ。」
ガラハッド団長が扉を振り向き返事をすると、大きな扉がギィっという音を立ててゆっくりと開いた。
「お部屋の準備が整いました。」
キチッとしたメイド服姿の女性が2人入って来た。
「おう、ちょうど良かった。 さ、さ、朝倉殿、ニーニャ殿、まずは部屋で休んでこられよ。」
「朝倉さま、ニーニャさま、こちらで御座います。」
メイド2人に先導されて宮殿内の違う建物に移動した。
綺麗に絨毯が敷かれた大きな階段を昇ると、丁寧な装飾が施された大きな扉の部屋の前に出た。
「こちらで御座います。」
メイドがドアを開ける。
カウンターバーが付いた広い部屋に、大きなソファー。テーブルにはフルーツが盛られている。
「こちらがリビングルームで御座います。そして、こちらが朝倉様の寝室、あちらがニーニャ様の寝室になります。今、果物をお切りしますが、なにがよろしいでしょうか?」
「果物か。それじゃオレはこのブドウとパパイヤを貰うか。キミはどうする?」
「アタシはリンゴとオレンジ、あとパイナップルも欲しいわ。」
「承知致しました。今ご準備致します。ご一緒に紅茶やコーヒーは如何ですか?」
「そうだな、オレはコーヒーをブラックで。」
「アタシは紅茶、ミルクティーを下さい。」
「承知致しました。」
メイドの一人が果物を切り、もう一人が飲み物を準備して、大きなテーブルの上に持ってきてくれた。
「それでは、なにか御座いましたら、そちらのベルでお呼び下さい。」
2人のメイドは部屋を出て行った。
「貴方、実は凄い人だったの?」
「え? 今更何を言ってる? 最初から、オレはレジェンド探偵だと言っただろ。」
「いや、だって、話の半分以上、いや、ほとんどがでっち上げで、よくもまぁ、そんんなにスラスラと息を吐くように嘘がつけるものだ、なんて凄い人なんだろう、って関心してるのよ。」




