第28話 カールさま
宮殿に着くと、馬車はそのまま正門を抜けて、騎士団長室のある建物の前で止まった。
「ご苦労様です、朝倉殿。」
衛兵が外から馬車の扉を開けてくれる。
「あぁ、助かったよ、ありがとう。では、ガラハッド団長へ報告に行ってくるよ。」
「よろしくお願いします。」
衛兵の敬礼を受けて、建物の中へ入った。
コンコンコン。
『近衛騎士団長室』と書かれた部屋の大きな扉をノックする。
「どうぞ。」
ガラハッド団長の声だ。 ほんの数日しか経ってないけど、内容的に色々あったんで、この声を聴くとちょっとホッとするな。
しかし、このネコ娘と子供の件、なんて報告すれば良いだろうか? 女子供を拾ってきただけ、みたいに文句を言われないように、先に予防線を張っておかないとは。 何か良い案は無いか? まぁ、ぶっつけ本番で乗り切るしかないかな。
ガチャっ
大きな扉を開いてガラハッド団長の部屋へ入る。
「朝倉殿か。どうかされたか? ところでそのご婦人と、その背中の子供は・・はうえぇぇぇぇ?」
ガラハッド団長が大きな机から飛び上がるように立ち上がって、こちらへ全力で走って来る。たいそうな歓迎っぷりだな。それとも、また何かやらかしちまってるのかオレ? いや、もしかしてネコ娘に興味があるのか?
「カ・カールさま!」
ガラハッド団長がオレが背負ってる子供を両手で抱きかかえて、そのまま部屋を飛び出して行ってしまった。
え? 何だ今のは? カールさま? って言ったよな?
扉も閉めずに飛び出していってしまったガラハッド団長が居なくなって、近衛騎士団長室の入口にポツンとオレとネコ娘だけが立っている。
なんだ、この状況。 とりあえず、座って待つか。
「なんだか状況が良くわからないけど、とにかく、一旦座ろうか。」
ネコ娘の方を向いて、応接ソファーを指さした。
「そうだね。歩き通しで疲れたしね。」
2人で応接ソファーに座る。
扉の開いたままの近衛騎士団長室、応接ソファーにポツンと2人。さっきとたいしてシチュエーションは変わってないけど、座ってるだけでも助かるって感じかな。
不思議なシチュエーションのまま、2人でじっとソファーに座ったままで、待つこと10分。ガラハッド騎士団長が部屋へ戻って来た。
「流石はレジェンド・ディテクティブ、朝倉殿じゃ。カールさまの保護、見事じゃったぞ。先ほどカールさまは目を覚まされて、今は医務室で医官の診察を受けておるところじゃ。して、カールさまを誘拐した犯人はどうなったのかの?」
ガラハット騎士団長はソファーに座ると同時に話はじめた。
「えぇっ? あの子供がカールさま? でも、オレが見せて貰った写真とは違うような・・。」
「あ、なるほど・・」
そう言うと、ガラハット騎士団長は立ち上がって、自分の机の引き出しをゴソゴソして、何かを持ってきた。
「これじゃの、お見せした写真は。 まぁ、確かにちょっと・・、ほんのわずか盛りすぎてる感は否定できないがの・・。」
「はぁ? カールさまの写真が盛りすぎ? それじゃ捜索用の参考写真にならないじゃないか。」
「まぁまぁ、王族の皆様は、国の顔じゃから、写真に多少の補正が入るのは当然じゃろう。」
「多少の補正ってか、ほとんどパネマジ級に違ったぞ。」
「は?パネライ?ハネマン?? それが何のことだかは分からぬが、無事保護出来たのだから、朝倉殿には感謝しかないぞ。 して、カールさまを誘拐した犯人は誰であったのか? どうやって救出されたのじゃ?」
しかし、まさか、あの子供がカールさまだったとはな。 ってことは、カールさま救出を最大限活用して話を組み立てれば良いってことだな、よし。
「まぁまぁ、そう話は急かすもんじゃないぜ。まずはこちらのお嬢さんを紹介させてもらいたいな。」
「ぉ、そうじゃった。大変失礼した。カールさまの件であまりにも興奮しておって、いや、本当に失礼した。」
「こちらのお嬢さんこそ、カールさまを見つけてくれたお方で、ネコ族のニーニャさんだ。」
「ニーニャです。初めまして。」
ネコ娘が立ち上がってペコっと一礼した。
「さようであったか。ニーニャ殿、感謝申し上げる。私はヴァルトベルク、近衛騎士団長のガラハットだ。貴殿の活躍は国王にもしっかりと伝えさせてもらうぞ。」
ガラハット団長も立ち上がって一礼した。
「さて、それじゃ、状況説明をしていこうか。 話はヴァルトベルクの外の森の中から始まる。 オレは、とある情報を掴んで、シャドウディーラーの一行と共に森の中を進んでいたんだ。 そこでニーニャと出会って、オレの助手として旅を続けたのさ。 そこへグルアッシュが現れた。 オレはシャドウディーラーのメンバーと共闘して、グルアッシュを撃退したんだ。」
「ほほう、なんと、朝倉殿がグルアッシュを撃退したとな。」
「あぁ、まぁ、残念ながら、あと一歩というところで、グルアッシュを倒すことまでは出来なかったが、追い払うこと位なら朝飯前だ。」
「朝倉殿は武芸にも秀でておったのか、流石はレジェンドじゃの。」




