第25話 グルアッシュ
夕食後、シャドウディーラーの5人は、焚火の周りで荷物を枕代わりにして、ゴロっと横になった。
そうか、日が出れば働き、日が沈めば休む、まさしくナチュラルライフな生き方なんだな、この人達は。特に街の外に居る時は、こういうリズムが正解かもな。
ネコ娘もちゃっかり、もう既にネコみたいに丸くなって寝てるぞ。
あらら、ネコ娘の足元で黒猫も一緒に寝てるし。
そうか、このネコ娘にとって、ここは、かなり久々の監獄の外だもんな。
うん、いい夢見ろよな。
じゃ、オレも横になろうか。堅い地面に横になっても、ちっともリラックスは出来ないけど、少なくとも牢屋の中よりは断然気持ちが良いさ。
ガサガサと人が動き出す音で目が覚めた。組織の襲撃か? もしくは何かの魔物に襲われてるのか? 薄っすらと目を開けて周囲を確認する。
「お、お目覚めかね? 昨夜はぐっすり眠れたようですの。」
焚火の周りに座ってるシャドウディーラーのボスがオレの方を向いて話しかけた。
他のシャドウディーラーのメンバーは、お湯を沸かしたり、何かを焼いたりしてる。
なんだ、単にみんなが起き出したから音がしたのか・・
「あ、おはよう御座います。みなさん、お早いですね。」
「まぁ、太陽の出てる時間しか移動できんので、一日を有効に使うためには、こうして、日の出前から行動開始しておかんとならんからの。 儂らだって、街に居たら、もっとゆっくりと寝てたいさ、もちろん。 ホッホッホ。」
「あれ? そう言えば、ウチのネコ娘の姿が・・」
途中まで話しかけた所で視界の左奥に黒猫と駆け回ってるネコ娘の姿を視認した。
「あ、居た。朝っぱらから元気な奴だな。」
「うむ。流石はネコ族、ウチのおネコ様があんなに楽しそうにしてるのを見るのは初めてじゃよ。これは何かおネコ様のご加護があるかもしれんの。うんうん、良いことじゃ。」
ま、そちらがそう思ってくれてるならそれで、こちらは全然かまわないし、おかげで、食事にも寝るところにも困らず済んだしね。
「さ、今朝も簡単なものだけじゃが、どうじゃ?」
こっぺパンのような、細長い丸い何かが串に刺されて、炙り焼きされたものと、熱いコーヒーの入ったカップが手渡された。
「またしてもご馳走になってしまい、ありがとうございます。ところで、これは、パン、ですか?」
「これはの、名前はパン茸、キノコなのじゃよ。こうして焼くと、味も食感も完全にパンなのじゃ。まぁ、ものは試し、喰ってみなされ。」
「ほほう、これがキノコ・・。ふうん、すごく良い香りがするな。」
パン茸は、軽くつまむとスッと繊維がほぐれるかのようにパンが千切れた。
それをそのままパクっと口に。 あらら、間違いなく味も食感もパンだな、こりゃ。
炙ってあるんで、ほのかに温かくて、これはかなり美味いぞ。
朝食を食べ終えて、焚火を片付けてた後、全員で森の中を歩きはじめた。
オレとネコ娘は並んで歩く。そして、ネコ娘の足元には黒猫。
途中で一度、休憩をしただけで、森の中を歩き続け、そろそろ昼になろうかという頃だった。
「ほれ、あそこが森の縁じゃよ。」
シャドウディーラーのボスが前を指さした。
確かに前方にトンネルの出口のように光が差し込んできてるのが見える。
ふと、黒猫が立ち止まり、フシャ―ッと威嚇音を出した。
同時にネコ娘も立ち止まる。
「なにか居るよ。」
シャドウディーラーも全員立ち止まり、先頭の仕込み杖の男は杖を持って構えた。
ガサガサッ。
森の奥で何かが動いている。あ、飛び出してきた!
クマ位の大きさで、黒い霧のような体から無数の脚が生えた、見たこともない生物? 魔物?が飛び出してきた。
「これは、グルアッシュだ!」
ネコ娘が叫んだ。
仕込み杖の男の両側に立った2人が両手を前に出して呪文を唱えると、手のひらから火の玉がでて、グルアッシュへ向かって飛んで行った。
「お、すげぇな。実際の魔法って初めて見たぞ。 あ、いや、違うか、オレ自身だって魔法で召喚されてたんだったな。 いやいや、そういうことじゃなくて、第三者的目線で見たのが初めてって意味だし、オレは魔法が使えなくても、レジェンドだし。」
「ねぇ、そんなに言い訳がましい説明しなくても、普通に、魔法凄いなー、で良くない? 謝ったり、感動したり、感謝したりしたら負けなの?貴方の世界では。」
またしてもネコ娘に突っ込まれた。
「・・・凄いな、魔法。初めて見たよ。」
「そうそう、その方が人生楽でしょ?」
ちっ、ネコ娘に何か哲学っぽく語られちゃってるよ・・。
そんな小さなオレの心の葛藤とは別の次元で、グルアッシュとシャドウディーラーの武闘派3人が戦ってる。
しばらくお互い互いに互角の攻防を繰り広げていたたが、徐々にグルアッシュが後退した、というか、逃げていった。
「ご苦労じゃった。グルアッシュ相手では、儂ら商人では追い払えただけでも相当な幸運だったと言わざるを得んじゃろう。本当にご苦労じゃった。」
リーダーが順番に武闘派3人の肩を叩いた。




