第20話 知らないな
ガラガラガラ・・
リサイクルゴミ、とオレとネコ娘を乗せた荷車がマグメトリア監獄の通用門で止まった。
オレとネコ娘は空き瓶が詰まった箱の陰に身を潜める。
「ご苦労様です。」
「おぅ、ご苦労さん。オイ、荷台確認しとけよ!」
荷車の前の方から声がする。
「ハイ、了解です。」
今度は荷車の後ろから、若そうな声が聞こえた。
雑用を一手に押し付けられてる下っ端の警備兵なのかな。
バサッ。
荷台の幌が開けられた。
警備兵は特に中を見ることもなく、そのまま幌を閉じて言った。
「大丈夫でーす。」
「おぅ、ご苦労。行っていいぞ。」
「はい、ご苦労様です。」
また、荷車が動き出した。
確かに、はたから聞いててもちょっと雑な感じの検問だったな。
荷車が進み、幌の隙間からマグメトリア監獄の通用門が遠くに小さく見える程度まで来た。もうオレは監獄の外、自由の身、フリーダムだ。
「ふん、これくらいのこと、オレ位のレジェンドからすれば朝飯前だったな。」
「ねぇ、まだ貴方は特に何もしてないでしょ?」
いちいち細かいことを言うネコ娘だな。人がせっかく気持ちよく呟いてるってのに・・。
荷車が十字路を右折したところで、もう完全にマグメトリア監獄は見えなくなった。ということは、向こうからもこっちは見えないってことだ。
「そろそろ降りるか。」
「そうね。」
そういうとネコ娘がパッと荷車から飛び出して、スッと道に着地した。
まったく、ネコはこういう時楽で良いよな。
オレは、荷車の揺れと速度を見ながら飛び降りるタイミングを計る。
荷車って、結構スピード出てるんで、なかなか踏ん切りがつかないな。
「早く、ほら、掴まって!」
ネコ娘が荷車の後ろを走って追いかけながら手を伸ばしてきた。
藁をもつかむとはこんな感じなのか、とにかくその手を握った。
「ほらっ、飛んでっ!」
ネコ娘にグイッと手を引っ張られて、半ば荷車から落ちるように飛び出した。
うわ、これじゃ地面に叩きつけられちゃうじゃないか、と思った所で、ネコ娘が体当たりしてきてオレの勢いと、倒れそうな姿勢を止める。
なんとか不格好ながら着地した。
「はい、これでよしっと。さ、アタシの役目は無事完了だよ。あとは貴方のタームだからね。」
ネコ娘がパンパンと両手を叩きながらオレに笑いかけた。
「おぉ、サンキュー。」
ちょっと無理矢理だったけど、まぁ、ちゃんと荷車から降りられたし、よしとするか。
「で、次はどうやってシュバリア、ヴァルトベルクへ向かうの?」
「さぁ、オレはこの世界の人間じゃないし、この街に来たのも初めだから、シュバリアがどっちにあるのかも知らないな。」
「はぁぁぁぁ? 貴方が、『オレがキミをヴァルトベルクに連れて行く』とかって言ったんでしょー?」
「あぁ、もちろん連れてくさ。 ただ、ヴァルトベルクへの行き方を知ってるとは一言も言ってない。」
「ちょっと貴方、なにそんな訳ワカメなことドヤ顔で言ってんの! どうするのよ、これから!」
「そうカリカリするもんじゃないぜ。急いては事を仕損じるっていうだろ。まずは落ち着いて、こういう時こそ、ハードボイルドで・・・」
「ハードボイルドエッグでも、ハートブレイクでも何でも良いから、なんとかしなさいよ!」
ちっ、ネコ娘のくせに、オレのセリフが終わってないのに、上から被せてきやがった。
「心配する必要は無いぜ、お嬢ちゃん。これからオレがなぜレジェンドと呼ばれてるのかを見せてやるから。」
「・・・・」
ネコ娘がメッチャ疑問符を付けた顔でオレを見てる。
「いいか、人には2種類ある。ひとつは親切心を持ってるヤツで、もうひとつは親切心の無いヤツだ。例えば、あのオバちゃん、あれは親切心を持ってる。オレはそれが一目でわかるんだ。 よし、ちょっと待ってろ。」
道の向こう側を歩いてるオバちゃんに声をかける。
「あの、ちょっとすみません。道を教えて頂きたいんですが。」
「はいはい? なんでしょう?」
ほら、ちゃんと立ち止まってくれた。 オレの人を見分ける眼力を舐めて貰っちゃこまるぜ。
「すみませんね。あのですね、オレたち、シュバリアから来たんですけど、どうやって帰れば良いですかね?」
「はぁ?・・・・ごめんなさいね、急いでるんで。」
オバちゃんは、もの凄く可哀そうなものを見るような目つきでオレを見た後、直ぐに立ち去ってしまった。
「まぁ、急いでたなら仕方ないか。」
「ちょっと貴方、なんで貴方が監獄に入れられてたか忘れたの?」
「え? 監獄に入れられた理由? それは単にオレがシュバリアのスパイだと誤解されたからだろ? 実際、オレはスパイじゃ無いんだから、全く見当違いの話で捕まったんだぞ、オレは無実だ。」
「いや、だから・・ なんでスパイだと掴まるのよ。ってか、なんでスパイが必要なの。」
「それは、この国とヴァンダニアは国交が無いってか、国交以前に、正確には休戦中だからだろ? ・・あぁっ。」
「あぁっ、じゃないわよ。貴方、今自分でまた、オレたちスパイです、こんにちわ、って言ったのと同じよ? 何考えてるの!」




