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第14話 鉄格子の外

「ところで、その『ヴォイドベル』って何なの?」


「えっと、ヴォイドベルは、『虚無の鐘』っていう世界の「終わり」を望む謎の教団っていうのが彼らの口上なんだけど、アタシが今まで聞いた限りでは、実際には各地に散らばってる各地の反社チームの共通名称って感じかな? しっかりした組織体制があるわけじゃなくて、反社仲間的な感じだと思うんだけどな。」


「『虚無の鐘』で『ヴォイドベル』、そして、世界の「終わり」を望む謎の教団って、それ、まんま厨二病じゃないか。いい年したオッサンがそんなこと口にしてて恥ずかしいとか思わないのかな。」


「・・え、それを貴方が言っちゃうの? まさしく『おまいう』だよ?」


は?なにが『おまいう』だよ。まったく最近のネコは礼儀を知らないな。


「うん?ってことは、あのバーがヴォイドベルのアジトってことか?」


「そうだろうね、貴方はシュバリア王国にあるヴォイドベルのアジトを見つけたってことだよ。」


「ふん、実はオレも最初っからそんなことはわかってて、キミが気づくかどうか試してただけなんだけどな。まぁ、キミも一応見つけられたってことだな。」


「あぁ、なぁんだ、そうだったんだ。そりゃそうだよね、あのバラの紋章を見れば誰でもヴォイドベルってわかるもんね。」


「当たり前だ、バラと言ったら、バラの包の髙島屋かヴォイドベルだからな。」


突然ネコ娘がケラケラと笑い出した。


「・・なんだよ急に笑いだしたりして、気持ち悪いな。」


「貴方って冗談抜きで面白い人なんだね。こんなに笑ったの久しぶりだよ、人と話するって楽しいね。」


何言ってるんだ、このネコ・・。


「そうか、貴方はナイフの柄に彫られたバラを見たんだね。それは白昼夢だよ、アハハハ。」


「はぁ? 何言ってるんだよ?」


「あのね、ヴォイドベルの紋章って、ライオンの図柄だよ? バラどころか、花すら無いんだよ。」


あ、また引っ掛けやがったな、このクソネコ!


「あ、あれはライオンだったのか。あのタテガミのとこがバラの花びらに見えちまったのかもしれないな。初めて見る紋章だったしな。」


「あぁ、そっか、タテガミの所がね、そっかそっか。あ、ゴメン、アタシ謝らなきゃだね、ヴォイドベルの紋章ってライオンじゃなくって、鐘に十字架と鎖が絡まった図柄だったわ。アハハハ。」


・・・二重の引っ掛けかよ、マジ、クソネコだな。


「あぁ、もう、わかったよ。そう、ナイフの柄の紋章に気づかなかったよ。いや、違う、気づいたんだけど、どんな紋章だったか記憶するのを忘れてたんだよ。」


「ねぇ、貴方って、間違いを認めたらタヒっちゃう感じ?」


クソ黒ネコが床をバンバン叩きながら笑ってる。



カツ、カツ、カツ、カチャっ、カツ、カツ、カツ・・


鉄格子の向こう側から足音が聞こえてきた。剣が擦れる音も聞こえるってことは、これは警備兵か?


「オイっ、その男、出ろ!」

警備兵が鉄格子のドアの鍵を開けながら言った。


その男って、オレ? だよな? 

なぜかネコ娘の方を見てしまった。


すると、ネコ娘も、ウンウンと頷き、貴方のことだよ、と小声でオレに伝えてきた。


ギギキー・・。


「ほらっ、こっちへ来い!」


鉄格子のドアが開き、警備兵が大きく手招きをした。


オレが扉の所まで近づくと、両手に手錠というか、鉄製の腕輪のようなものを取り付けられて、取り外せないようにガチャリと鍵をかけれれた。


「着いて来い!」


警備兵に腕輪チェーンをグイッと引っ張られて鉄格子を出た。


ジメジメした階段を何階分か登ったところで中庭のような所へ出た。

やっぱりあの監獄は地下にあったんだな。

外の日差しが眩しいぞ・・。


中庭を通り抜けて、別の建物に入り、さらに階段を登ったところの黒い木の扉の部屋に入れられた。


「ほら、座れ!」


机の前に置かれた椅子、じゃなくて、単なる丸太に座らせられた。


ガチャ


部屋の奥の扉が開いて、警備兵とは対象的な貧弱な男が入ってくる。


男は机の上にオレの宮廷IDを置いた。


「やぁ、こんにちは。アサクマ? アサクラ? 妙な名前のシュバリアの番犬さん。ちょっと話をしようじゃないか。キミが興味津々だった、ここヴァンダニアでね。あ、まずは挨拶しておかないといけないね、私はエルネスト、ヴァンダニア国軍で審問官をやっている。キミは、シュバリアの宮廷広報官のアサクラさんだね? ようこそヴァンダニアへ。」


いかにも審問官って感じの、冷酷そうな目がオレを見つめている。

さて、どうするか。まさか異世界から召喚されてきました、なんて言って話しが通じるわけもなく、だいたい、誘拐された王族の捜索なんてことバラしたら今度はシュバリアから確実に命を狙われちまうじゃないか。


えぇい、そもそもオレはハードボイルドでダンディな群れない孤高のレジェンド探偵、情報戦と心理戦でオレが一歩でも引けを取るわけがないじゃないか。


ふん、ここは敵の本拠地、相手は審問官か。ますます面白くなってきやがったぜ。

それじゃ、勝負開始といこうか。


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