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第1話 朝倉信玄

 俺は朝倉信玄、ハードボイルドでダンディな群れない孤高の探偵、レジェンド探偵と呼ばれる探偵の一人だ。

ただ、他のレジェンドと呼ばれる探偵達は、大きな探偵事務所を構えて、その組織力で戦っているので、一匹狼のレジェンドは俺ひとり、そう、単独では俺はこの世界で唯一のレジェンド探偵ってことだ。

あぁ、もちろん名前は偽名だ。探偵が身バレしたら終わりだからな。

なぜ信玄か? それは俺の中の風林火山がそれ以外を許さないからさ。


 真っ暗な事務所で窓際のソファーに腰を掛ける。今宵は月明りを肴にブランデーのロックでも、と思ったが、生憎とブランデーを切らしていた。


ペタペタペタペタ。

廊下をこちらへ向かってくるサンダルの音が聞こえ、俺の第六感が危険を告げている。


ドンドンドン! 

ドアが激しくノックされた。 まさか、遂に組織が俺を消しに来たのか?

素早く書棚の陰に隠れる。


ドアの向こうから大きなダミ声が響く。


「朝倉さん! 家賃、週末までに払ってもらえなかったら出てってもらうよ! 電気も止まってるみたいじゃないの、大丈夫なの? 払えるの? まったく、確かに貧乏度合ではレジェンド級だよ、あんた。」


ふ、親の遺産の不動産だけが収入源の禿散らかした大家のオッサンだったか。

あんたなんかにはレジェンドと呼ばれる俺様の本当の姿なんか理解できないのさ。


ここ2ヵ月、オレが仕事の依頼を受けてないのは、魂が揺さぶられるような案件が来てないからさ。まぁ、仕事の依頼自体が来てないっていうのも、ほんのささやかな理由のひとつではあるけどもな。そもそも探偵ってのは金儲けのためにやるもんじゃないんだぜ、オッサンよ、覚えておけよ。ま、とりあえず、大人として余裕の対応を見せておくか。


「あ、すんませーん。今日調査依頼があって、今週中には解決して入金されるんで、ちょっとだけ待ってもらえますかぁ?」


「朝倉さんねぇ、同じ話を毎週聞いてるよ! これがホントに最後だからね、週末までに払わないなら出てってもらうよ! いいね!」


ベタベタベタ。

大家は大きなサンダル音を立てながら去っていった。


俺はもう一度月を見上げた。

あの月の光の中に宇宙のロマンが詰まってるんだぜ。家賃だなんだって、そんな小さなことは広い宇宙から見ればどうってことない小さなことなのさ。


あぁ、だんだん月がぼやけて見えてきたぞ。これは俺の魂が宇宙のロマンに共鳴している証拠だな。これぞレジェンドとしての・・


・・いや、どんどん視界がぼやけてくるぞ、あれれ? やばいぞ? どうしたんだ? 

頭もクラクラしてきたじゃないか。


耳鳴りもしてきた。 うわ、何かに引き込まれる、ぐわぁぁぁぁ・・。



 「目覚めよ、レジェンド・ディテクティブよ。 目覚めよ、レジェンド・ディテクティブよ。」


ん?妙に低音で迫力ある声だな。ここは何処なんだ? 頭がガンガンするぞ・・・。


「さぁ、目覚めよ、レジェンド・ディテクティブよ。目覚めよ!」


俺は肩を大きく揺さぶられた。


これはもしかして組織の陰謀だろうか、だとすると相当大きな組織ってことだな。まずは相手を確認しないといけないな。


ゆっくりと目を開けてみる。


薄暗い場所だ。俺を覗き込むように男が6人、全員が同じ、中世の聖職者のような仰々しい服を着ているぞ。いや、一人は更に金の冠を付けてるな、あれは王冠、なのか? なんなんだ、この芝居がかった奴らは。 新手のコスプレショーか?


「気が付いたか、レジェンド・ディテクティブよ。貴殿の名は何と申す。」


王冠の男が問いかけてきた。


レジェンド・ディテクティブ? なるほど、レジェンド探偵ってことか。で、ここはどこで、こいつらは誰なんだ?


「・・ここは、何処なんだ?」


「レジェンド・ディテクティブよ。ここは王都ヴァルトベルクの宮殿地下、召喚の間じゃ。貴殿の目の前におられるのは、国王フレデリック様であらせられるぞ、質問に対して、簡潔、正確、丁重に返事なされ。」


王冠をつけた男の隣に立つ、大きな剣を手にした男が鋭い眼光でオレを見ている。


はぁ? 王都?宮殿?召喚? ラノベでよくある転生でもしたってことか?


「オ、オレは、朝倉信玄。ハードボイルドでダンディな群れない孤高の探偵、レジェンド探偵だ。」


「おぉ、やはり貴殿はレジェンド・ディテクティブなのだな。国王に代わって私、騎士団長のガラハッドから説明しよう。ここはオリバーが申した通り、王都ヴァルトベルク。レジェンド・ディテクティブを必要とする事案が生じたため、召喚術で世界一のレジェンド・ディテクティブを呼び出した次第じゃ。早速だが、依頼する事案に関して打ち合わせをしたいので、私の執務室へ移動願いたい。」


今度は王冠の男の反対側の隣に立つ男が答えた。


なるほど、レジェンド探偵として、俺が召喚されたってことか。


「なるほど、レジェンドの力が必要ってわけか、よし、了解した、俺が来たからにはもう大丈夫だ。」


よくわからないけど、とりあえず、俺に任せれば大丈夫。なんとかなるさ。きっと。たぶん。

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