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生まれてからずっと魔力特訓をしてたら、そのせいで大人まで生きられないと宣告されました

作者: 京楽

 魔法が使える世界に転生した。


 赤ん坊の頃から意識が有ったので、魔力を増やそうとこっそり魔力操作をしていた。

 親たちは気付いていなかった。

 それに気を良くして、どんどん繰り返して行った結果――。


 3歳にして、大人になるまで生きられないかも知れない、と言われる体になった。

 三つ子の魂百までが、10くらいまでに目減りしてない?




 いやぁ、何か親が気付いた時にはもう手遅れ、な状態だったらしい。

 肌の色が悪くて、ちょっと調子が悪そうだから、念のためにと、お医者様に見せたらしい。

 そうしたら、臓器機能が著しく低下していて、慢性不全を起こしていたと。


 泣いた。

 親にも泣かれたのは、心苦しかった。


 実は、この世界にはいわゆる魔力と呼ばれる物は、厳密には存在しない。

 魔素糖と呼ばれる糖分を、分解する機能が臓器に備わっていて、それを分解する能力が高い事を、魔力が高いと称する。

 要は魔力=魔法の威力とか溜め込んだ力ではなく、魔素糖分解能力、略して魔力なのだ。


 魔力枯渇とは、体内で分解出来ない状態になるほど、臓器を酷使した状態。

 アルコール飲み過ぎて、これ以上無理ってなるのに近い。

 そりゃ魔力枯渇(急性アルコール中毒)で死ぬわ。


 で、その魔素糖を分解した物質が、魔法を使うための通貨みたいな扱い。

 それは妖精さんか何かの好物で、それを生み出してくれる奴に、替わりに魔法を使わせてあげる感じらしい。

 妖精あるいは精霊魔法って感じだろうか。

 俺的にはその妖精さん、かもすぞとか言ってそうなのだが。


 しかも魔力操作と思っていたのは、異物である魔素糖を体内でぐるぐるかき回していたのを、臓器がフル稼働で処理してただけなんだよな。

 魔力を感じると思ってたのも、体がアレルギー反応を起こす体質だからだって。

 普通の健康な体は、そう言った感覚なくて何も感じずに、するっと使える。

 お、魔力感じられたぞ俺って実はスゲー? って思ってたら、実はアレルギー体質なだけでしたよ。


 その辺り、転生する時に案内人(神?)に言われていたらしいのだが、浮かれていた上に、校長の長い話並に長かった話だったので、スルーしていたようだ。


 これらの情報を何で知ったかって、今目の前で説教なう、されているから。

 つまり説明を聞き逃していて、今知った。




「説明はちゃんと聞きましょう、って習いませんでしたか」

「習いましたね」

「契約内容はよく読み込むように、分からなければ調べるなり質問をするなりするように、とか言われませんでしたか」

「言われた、ような気もします」

「あのですね、知識が無いせいで不利益を被ったりしないように、転生者の皆さんに予め説明をしているんですよ」


 言われた事はいちいちごもっともなのだが、俺にも少しは言いたい事がある。

 盗人にも三分の理と言う奴だ。


「いやでも、話長くないですか」


 そう、話が長い、長かった。

 只管説明に次ぐ説明で、分からない事は有りますか、にいいえで答えるだけの苦行。


 とはいえ、それにもきちんと理由があるわけで。


「それは転生者の皆さんが何かやらかす度に、項目が追加されて行った成果ですね。

 誇って良いですよ、これだけの分厚い事例べからず集を作った転生者の方々を」

「何も誇れはしないですね、はい」


 今のは俺でも皮肉と分かる。

 ここで本当に誇ったら、呆れられる、絶対。


「まぁ、起こってしまった事は仕方有りません」

「既に起こった事に怒っても仕方ないと」

「何かおっしゃいましたか?」

「イイエナニモ」

「はぁ、怒らない、怒らない、怒っちゃ駄目よ、こんなのまだ可愛い方。

 そう、たかが地を這いつくばる蟻が何をしようと、いちいち感情を向けている暇なんて無いんだから」

「大変そうですね、ご苦労お察しします」

「ちっ」


 心配したのに舌打ちされた。

 うん、これ以上余計な事を言う前に、話題を逸らそう。


「あの、それで今案内人さんが現れた理由って」

「警告ですよ、一応の、ですがね」

「警告?」

「事例集に反する行為を行なった方はですね、警告をするようにしているんです。

 軽い違反は、一方的な通知で終わる事も有るんですが、今回は死にそうだったのも有ったので。

 それに脱法意識の無い方も居ますので、これ以上ふざけた、いえ悪い事をしないようにパイルバンカーを刺すように」

「なるほど、救済措置みたいなものですね」

「うーん、まぁそうですね」


 一応俺のやった事は、軽い違反として扱われるようだ。

 赤とか青切符とかじゃなく、青春18禁切符みたいな感じだろうか。


 本来は通知だけで良かったんだろうけど、自業自得とは言え死にかけたので、こうして出て来てくれたと。

 律儀な人だなぁ。

 でかいパイルバンカーは勘弁だが。


「因みに重度の違反とかしちゃうと、どうなります? 免許(生きるの)停止とか」

「そうですね、その前に大体死ぬか、殺されてしまうのですが」

「ですよねー」


 死ぬ方は俺みたいに、世界の理を知らずに、自爆する奴。

 殺される方は、他人に何かしてしまうパターンだろうな。


「影響が大きければ、強制退場も有り得ます。

 勿論この影響とは世界への影響であって、人に対する影響は、人同士でどうにかして貰うのが基本ですが」


 人に幾ら悪影響を与えても、それは人の範囲での影響に限られるから人で解決すべき案件だと。

 基本と言っているので、例外も有るんだろうが。


 対して世界への影響は、人以外も巻き込むし、世界そのものへの危機も考えられる。

 そうなれば、介入してでも止める必要が有ると。


「普通の対応ですね」

「生死に関わる事なんですから、もう少し何と言うか、緊張感を持って下さいよ」

「すみません」

「悪意が無いのは分かりますが、無関心過ぎるのも駄目ですよ」

「そうですね」

「本当に分かってますか?」


 失礼な、分かっていて尚こんな態度なだけです。


「ふう、とにかく、罰と言うか規定の対応として、事例集をあなたの頭の中に、直接書き込みますので。

 酷い頭痛に苦しんだり、熱が出たりするかも知れませんが、自業自得なので我慢して下さい」

「そんな酷い!」

「酷いのはあなたの頭と性格です」

「それは、仕方ないですね」


 痛い所を突かれてしまった。

 甘んじて罰として受け入れよう。


「それでは、時間も押しているので今回はこれで。

 目が覚めたら、事例集が頭に叩き込まれている筈ですので、後はそちらを参考にして下さい」


 そう言われて、段々と案内人の声が遠くなって行った。




 目が覚めると、酷い頭痛とともに、事例集が頭に叩き込まれていた。

 言われた通り熱も出たので、暫くは親を掛かり切りにさせてしまった。

 申し訳ない。

 迷惑を掛けるのは本意ではないので、事例集についてはなるべく守って行く事にしよう。


 そして、俺の内臓からだはボロボロだ問題について。

 これも案内人さんが、おまけでインストールしてくれたomake.exeの中に解決法が入っていた。


 この世界の魔道具は、魔法と同じ原理で動いている。

 つまり、魔素糖を分解する能力が有る。

 それを体内の濾過装置として、使う方法が有ったのだ。


 律儀すぎる。

 案内人さん大好き、結婚して!


 それを親に伝えると(結婚しての方ではない)、神様が憐れんで下さったとか、喜んでいた。

 神様かどうかは分からないけど、凄い憐れな物を見る目をされていたので、間違いは無いだろう。


 それからそれ用の魔道具について、特注品として街の魔道具屋に注文を掛けた。

 人工臓器と名付けたそれは、臓器と言うには大き過ぎた、なんて事はなく普通に携行可能なサイズ。

 届いてから、実際に稼働させて、定期健診でそこそこ内臓の数値が改善された事で、効果が有る事を確認出来た。


 その事で親は、感謝の1日1万回正拳突きはしなかったが、何度も神様に感謝していた。

 いや、正拳突き始められたら止める。

 うちの親肉体派じゃないから体壊しちゃう。


 ついでに人工臓器については、魔道具屋が販売したいと言って来た。

 寺院に伝手が有るので、人体実験、もとい被験者、違う、多人数での確認が出来ると言う。

 俺も親も、俺みたいに苦しんでいる人が救われる(可能性が有る)なら大歓迎と、比較的安価で流通させる事を条件に了承した。

 どちらかと言うと、俺みたいな若年層ではなく、ご老人方に好評なようであったが。




 そして、15歳、大人の階段を登って、シンデレラストーリーを掴むお年頃。

 つまり、何とか成人を迎えられたわけだ。


 その年は、親も大泣きしながら、俺の成人を祝ってくれた。

 俺も泣いた。


 泣きながら好きなパインサラダをたらふく食った。

 吐いた。

 説教食らった。

 以上、俺のお祝いの席ダイジェスト今北産業。


 その後は大人になった事だし、独立だ! と事務所(実家)から独立。

 フリーのアイドル(冒険者)として活躍する事にした。


 家に残る事も出来たし、親は残っても良いって言ってくれたけど、成人まで生きられたんだから、好きな事をやってみたいと。

 それで死んでも、もう大人になったんだし自己責任。

 そもそも大人になれるかも分からんかったんだし、大人になれただけ儲けものだ。


 定期的に帰って来る事を条件に、親に快く送り出して貰い、冒険者ギルドで冒険者として登録した。

 俺達の戦いはこれからだ!

 いや、複数形で言ってるけど、今現在俺しかいないな。


 しかし仲間作ってもなぁ、俺こんなだし、いつ死ぬか分からない奴だし。

 それに幾ら小型とはいえ、人工臓器をしている俺は目立っていた。

 明らかに見下す奴も居る。

 そんなお荷物抱えて、冒険者なんてやって行けないだろうと。

 ごもっともな感想だが、やってみたいから、最初から諦めたくはないから、と返しといた。


 冒険者たる者、チャレンジャー精神を忘れてはいけない。

 列車に乗ってくじらを撃つんだ(うろ覚え)。


 そこで説得のため、俺の生い立ちを話した。

 (魔力操作でやらかした件は省いて)

 大人になれるか分からなかったけど、大人になれたからには、冒険者をやってみたい。

 それは俺の我儘だから、どこまでやれるか分からないし、それで死んでも良いし、手助けも不要だと。


 為せば成る 為さねば成らぬ何事も 成らぬは人の為さぬなりけり

 とまでは言わないが、何も為さぬ無為だけは駄目だと思う。


 何か泣かれた。

 その人は傲慢だが、涙脆い性格だとか。

 そして努力を決して笑わない人らしい。

 苦労人だったんだろうか。


 ボギードッグと名乗ったその人には謝られて、冒険者として手助けする事は無いが、今後馬鹿にする奴が居たら、俺が抑えると言われた。

 それは手助けじゃないんだろうかと思ったが、線引きが有るんだろうし黙っておいた。




 さて、そんなこんなで、無理をしない前提で冒険者をやってみているが、そこそこ順調だ。

 大きな理由として、実は人工臓器を作った時に、魔道具を自分で改造出来る程度には詳しくなったのが有る。


 採取系は無理せずやれる依頼なので、特に何事もなくやれている。

 討伐系の依頼は、魔道具で索敵から足止め、目潰し、その他に色々と活躍。

 体内の臓器に作用する魔道具作ったんだから、そりゃ色々悪さ出来るよ。

 雑事系、所謂お手伝いクエストなんかは普通に魔道具でパワースーツ的な(本当にアシストするだけの奴だが、これが馬鹿に出来ない)物で対処出来ている。


 チート? カンニング(カニング)と言ってくれ。

 騙すとか不正の意味が強いチートより、狡猾の意味で使われるカンニングの方が良い。

 日本で言うカンニングって、海外じゃチーティングって言わないと通じないっぽいからね。


 とある冒険者カンニング能力でマハザマァダインする ~複数対象スキルは巻き込まれ続出でとほほでござる~

 みたいな。


 そんな活躍とは言えないが、地道で地味な努力も有って、冒険者界隈では俺を役立たずや厄介者として見る目はかなり減った。

 件のボギードッグさんが抑えてくれた可能性も有るが、俺自身の努力の成果とも思った方が精神衛生上良い。


 ある程度続けられる事を示したせいか、他の冒険者と同じように扱われるようになった。

 それは誰から見ても掛け値なしに、他の冒険者と同じ事が出来る、と見られるようになったと言う事だ。




 そしてやって来た、護衛依頼への参加。

 これが解禁となった時は、嬉しさが込み上げて来た。


 護衛は他に合わせて移動しないといけないし、行動範囲も制限される。

 団体行動が出来て、荷物や対象に手を出さないのは基本。

 戻りたいからと街に戻る事は出来ないし、途中でバテて脱落するなんて論外だ。

 つまり、そう言う準軍事的に近い行動でも遂行出来る、と判断されたのだ。


 いやー、いつ死んでもおかしくないってのに、そんな信頼置いて貰えるなんて。

 俺頑張って魔道具の整備しちゃうよ、長期依頼だし。

 あ、その前に健診受けとかないとね。


 健診の結果は、可ではないが不可もなくだった。

 相変わらず、すれすれを低空飛行していた。

 うん、良くなる事は無いのは分かっているので、上々の結果だ。


 ついでに実家にも顔を出しておく。

 護衛依頼を受けたと言ったら、立派になってと泣かれた。

 泣き過ぎじゃない? 俺も泣いたけど。


 最後に魔道具の方も準備は万端、後は仕上げを五郎次郎三郎四郎ってね。

 さぁ、天よ我に艱難辛苦七難八苦七転八倒七転び八起きを与えたまえ!


 なんてフラグを建てたのが悪かった。

 只今、護衛対象と一緒に仲良く、絶賛賊らしき者に包囲されております。

 やばい(語彙力)。


 しかもこの賊がやーらしいの。

 こっちに腕の立つ人が多いのを知ってか知らずか、ヒットアンドアウェイを夜討ち朝駆けでやられる。

 これに参る人がそこそこ出て来た。

 俺はそう言った事が得意らしく、割と参っていない方だ。


 常に気を張ってられないから、平静な気持ちで待ち受けないといけないんだよね。

 何にも気が付かないくらい超鈍い心持ちで、それでも対処出来るような矛盾した行動が必要になる。

 一見対立する事を、両立出来るようにする事を、止揚って言うんだったっけ。


 さて、このままやられっ放しでは拙いので、宿泊ポイントで隊長らしき人に提案する。

 俺の魔道具を使っての、索敵と撃破だ。

 音も匂いも完全に無くす事は出来ない以上、幾ら気配を消しても俺の魔道具は検知出来る。

 またある程度誘導する事も。


 提案した内容は簡単。

 隠密行動の得意な人は、通過予測地点で待ち伏せて貰い、狙撃手はそれより遠くで待ち伏せて貰う。

 襲撃する側は攻撃志向で、対象に意識が向いてて、そうでない場所に注意を払えない奴が必ず出る。

 そこを1人ずつ、各個撃破して行くのだ。

 本来はその予測は無理なのだが、俺の魔道具が可能にしている。


 その他有象無象役は、護衛対象の近くで賑やかして貰う。

 こっちは完全な囮で、慌てたふりで護衛をして貰う。


 さて、魔道具を起動。

 お、居る居る、2時の方向の奴が、ほぼ孤立してて良いかな。

 合図をして、相手に悟られないよう、指定ポイントに移動して気配を消して待って貰う。


 行きはスルー安定。

 暫くして到着した敵さんに、こっちは慌てたふりをして、護衛に駆け付ける。

 相手は余り近寄らず攻撃してから、逃げて行く。

 うん、見事な撤退だ、欲張らずこちらが疲労する事だけに、意識を割いている。

 それでいて、軽度の被害は出ているし。


 そこまでは良いんだけど。

 安心しちゃったか、指定ポイントから、あちらさんらしき悲鳴が聞こえて来た。

 こっちからも、何人か応援に向かわせて、確実に数を減らすようにする。


 他の逃げた奴らが戻って来ないか微妙だけど、自分の部隊が撤退するのが、最優先目標になってるんじゃないかな。

 だから他の部隊が全滅しようが、早々その最優先目標を変えられはしない。

 少なくとも今回は。

 それに護衛もかなり残しているので、いきなりここに戻って来ても対処は可能。

 寧ろそうしてくれた方が、味方に暴れて貰えるんだけど。


 結果、その部隊の頭らしき奴を捕らえる事が出来た。

 いやぁ、隠密に行ってた人優秀だな。

 出来る見た目の人だったけど、本当に出来る人だった。


 そこからは尋問タイムで、襲撃の目的とか規模とかを吐かせる。

 目的については知らされていないようだったが、規模は大体把握。

 大体200人ほどらしい。

 今回の襲撃で倒したのが40人前後だったので、余り影響無いかな。

 まだ余裕有るし、部隊を再編して、分けるか何かして来るでしょ。


 今度は警戒してか、それぞれ一定の距離を保って迫って来た。

 この配置だと、多分まだ様子見だろうな。

 話し合った結果、被害が出るの覚悟で、待ち伏せする事になった。

 但し、今回は襲って来た直後を後ろから叩く。

 一応助けに向かいやすくするためだけど、警戒もするだろうし、一長一短かな。


 襲撃自体は前回と変わらないパターン。

 違うのは、こっちがすぐに後ろから刺しに行った事。

 これは見事に嵌まって、慌てて撤退しようと、浮足立った所を撃破出来た。

 他の襲撃者も、助けに行こうとしてたみたいだけど、急な事でたたらを踏んでしまう。

 逃げてる途中で襲われたら、って前提で話をしてたのかな。

 その隙を突いて、潜んでいた味方遊撃部隊により、それぞれに僅かながら被害を与える事が出来た。

 その時点で各自撤退に切り替えたようで、バラバラに逃げて行った。

 (とは言え潰走しない辺りは、流石だ)

 今回はかなりの損害を与える事が出来て、これで相手は100を割った筈だ。


 次の襲撃は本格的になるか、或いはより慎重になって来るか。

 本格的となると、相手も全滅覚悟で来ないといけないので、及び腰の奴だとやんないかも。


 などと思っていた時期もありました。

 増援が来てた、当然あっち側に。

 そして、正面では敵わない事を理解していて、やはりヒットアンドアウェイ。

 しかも練度の高い奴を孤立させるように見せて、餌にしてた。

 こっちは同じように襲撃を掛けようとして、激しい抵抗に遭い、死者こそ出なかったものの、戦闘不能者が結構出た。

 応急手当をしたけど、結構酷い怪我で、悪くすると死んでしまうかも。


 仕方なく、糖からアルコールを生成出来る魔道具を出す。

 しかも樹皮のセルロースからでも可能な逸品。

 これで木から高純度のアルコールを作って、消毒や止血に遠慮なく使えるので、化膿して腐敗とか発熱を抑える事が出来る筈。

 他にも、布を綺麗にする魔道具とかも有るよ。


 俺の魔道具で、ここまで色々な事が出来るのを驚かれた。

 一般の魔道具って、主におもちゃとか日用品のイメージなんだよね。

 ふふふ、人は私をワンマンオペレーターと呼ぶ。

 ワンオペやん。


 今後、相手は医療品が不足していると思っているだろうから、余計にけが人を出して行く方向にするんじゃないかな。

 死人は置いて行けるけど、けが人は置いて行けないし、リソース圧迫するから。

 相手に出血を強いる戦術、アイアンメイデン戦術だ(違う?)。


 予想通り、荷物や護衛対象ではなく、護衛にけがを負わせる方向に変えて来た。

 これで護衛対象をあんま気にしなくて良くなったのだが、完全に気にしなくて良いわけではないのが、悩み所。

 でも対象が護衛に変わったから、攻撃の姿勢が浅くなるんだよね、護衛対象より手前に居るし。

 それは逃げにも意識を割けるって事で、深入りせず、より撤退が徹底されるようになった。

 これ以上は、今の戦術だと難しいかな。


 そんなわけで、新しい戦術を使います。

 簡単に説明すると、索敵を止めて、範囲攻撃と言うより範囲CCクラウドコントロールで掻き乱す。

 これやると、味方も巻き込むわ消費激しいわで、出来れば使いたく無かったんだよね。

 巻き込まれないよう、立ち回って貰おう。


 襲撃を受けてから、魔道具を起動。

 外道照身霊波〇線! こうかは ばつぐんだ!

 魔道具を向けた方向の敵が皆ぐらりと揺れる。

 そこそこに眠くなったり、三半規管が狂ったり、頭痛がするくらいなんだけどね。

 それでもここでは効果を生み、次々と討ち取られる襲撃者。


 さて、魔道具の燃料が少なかったりするので、いい加減今回で決めてしまおう。

 出し惜しみなく一網打尽だ。


 幾らかの逃亡者は許したが、殆どを討ち取った。

 もう襲撃を掛ける余力も、残っていないだろう。

 後は、近くまで来ていた次の街に入って、任務完了だ。


 この後更に増援がわらわら来たり、実はこの街の奴らとグルだったり。

 と言った事は無く、あっさりと護衛依頼は終了した。

 いや、それまでが全然あっさりじゃなかっただけだ。

 最初から最後まで、あさりあっさりで通して欲しかった。




 それからどったの?

 かなり魔道具の燃料が危なかったので、燃料が届くまで、この街で入院する事となった。

 言ったやん、燃料の消費が激しくて、残りがやばいって。

 燃料切れたら、俺の命のカウントダウンが始まって、死神さんがお見送りの旗を用意し始めるから。

 確実に10年は寿命が縮むから。

 え、元々明日をも知れぬ命だって?

 そ れ は そ う。


 なんてよしなしごとを考えて過ごしてたら、一緒だった冒険者の人達が代わる代わる見舞ってくれたり、護衛対象の人がお礼を言いに来てくれたりと色々有った。

 ボギードッグさんも来てたよ、あの人何だかんだ、面倒見良いよね。

 護衛対象はどこぞのお嬢さんで、俺に顔を赤らめてお礼を、なんて事はなく、ただのおっさんだった。

 うん、お礼は受け取ったよ、何事もなく。

 俺が顔を赤らめる事もなく。

 次も是非依頼したいって言われたけど、ははは勘弁しろ。


 俺は今後も何とかかんとか、この内臓を誤魔化しつつ、魔道具で無難に冒険者を続けられたら良いだけなんだな、と思いました、まる。


 あ、念のために言っとくけど、この世界に来たら、魔法の練習とか言って、赤ん坊の頃から訓練とかしたら駄目だぞ。

 俺の場合は、周囲が親切だったんで、運良く延命出来ただけだから。

 普通は死んじゃうからね、そんで死因、アル中って書かれちゃうから。

 あと、契約内容は良く理解しときましょう。

 俺との約束な。


 ~終~


 後日、この主人公が案内人の人に本当に求婚したり、とある世界の神の一柱になったりするのは、書かれる事の無い別のお話。


※案内人さんは、何だかんだで駄目な奴も見捨てられない性格してます。

通知だけで済ませなかったのも、責任を感じた結果です。

あと、omake.exeのおかげで主人公は割とカンニングな能力を手に入れてます。


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