5,冒険者試験 難題:ゴーレム
今日は冒険者試験当日、領内の冒険者ギルド前は毎年恒例のように賑わっていた。
レイン「リース、緊張するね」
リース「そうですねお嬢様、前日までの対策が発揮されることを願います。」
僕とお嬢様は冒険者ギルドの中に入り受付の指示にしたがって筆記試験場に向かった。
流石に僕やお嬢様と同じ位の歳はいなかったが幅広い年齢の方々が沢山いた。
試験官「皆さん席について下さい、これより筆記試験を始めます。」
リース「お嬢様頑張りましょう」
レイン「余裕ですわ。」
試験官「始め!」
えっと…第一問:あなたはFランク冒険者です。目の前にいる魔物はCランクのミノタウロスです。この場合の行動を書け。
Fランクでは勝てないから…仲間を呼んでくるのと、魔物に追われる危険性もあるから閃光弾を放ち魔物の目をくらませる…と。
第二問:火属性の敵がいます。水属性の魔法以外で倒しなさい。
一般的な選択を潰されているわけか。だったら、土魔法で周りを固めて真空にするっと…
リース「この程度だったら大丈夫そうですね。お嬢様は…」
レイン「ガクガクガクガク…」
リース「めっちゃ震えてる…」
前日までに予習してきたはず、お嬢様は何を迷っているのだろうか…
レイン「数字…足し算…」
リース「第五問以降の計算問題か…」
第五問:パンが3つあります。パン1つの値段が100コルです。そこにお婆さんが「一つよこしな!」とカツアゲされて1つ取られました。このときの主人公の気持ちを4つの中から選べ。
リース「はあ!?計算問題ちゃうんけ、コイツの気持ち?」
1,悲しい
2,お金がなかったのかな?
3,次あったらぶっ◯す
4,「"火球"」
リース「?????」
1と2はまだ分かるが問題が3と4で、こっちを選んだら即退場だろ。
リース「…4と。」
試験官「終了まで後5分です。」
多分大丈夫であろう。一部を除いて全問自信がある。
試験官「そこまで…用紙は裏面にしてください。この後すぐ外の方で魔力測定と魔法測定がございます。」
無事?筆記試験は終わりお嬢様と話しながら外に向かうのであった。
リース「震えておられましたが大丈夫でしたか?」
レイン「あの問題…2を選びましたがリースは何を選びましたか?」
リース「うぇ…っと…よん…お嬢様と同じく2でございます。」
レイン「リースが同じ回答でちょっとホッとした。」
リース「私もでございます。」
お嬢様には悪いけどここは何も言わないでおこう。うん、そうしよう。
試験官「集まりましたか?ではまず魔力測定を始めます。」
リース「一人一人並んで測る感じか。」
魔力測定機:手のひらを専用の魔法本に触れると自身の魔力量が見れるようになる。
一般的な人は50程で冒険者Cランク位は200あれば十分だと言われている。宮廷魔法使いは桁外れで2,000超えである。
試験官「次の人…」
リース「お嬢様の番だ」
試験官「本に手を当てて魔力を注ぎ込んで下さい。」
お嬢様「はい」
お嬢様が本に手を当てると本が燃え始めた
試験官「手を早く離して!」
レイン「はい!」
魔法本が燃えたなんてことは初めてらしく周りの人らはザワザワと驚いていたところ一人の老人が現れた。
アレクサンドル「ワシ以外に燃える者を初めて見たぞ。」
あの方はアレクサンドル…。アレクサンドル!?何故まだ生きてるんだ。あの方は約3,000年前に魔法の探求で雷魔法と氷魔法を自らの手で生み出した方でもあり魔法使いの頂点「賢者」でもあるお方だ。
全ての歴史の本に載る程の人物なのだが寿命によりなくなったとされていたが何故生きているんだ?
アレクサンドル「この本を燃やしたのはそこのお前か?」
リース「僕ではありません。」
アレクサンドル「では…どこの人物だ?」
レイン「私です。」
アレクサンドル「冗談はよしてくれよ、こんなか弱いお嬢ちゃんがワシでも本が少し燃える程度だったのに…」
アレクサンドルはレインお嬢様に手を差し伸べた。
アレクサンドル「お嬢ちゃん手を握ってくれないか?ワシは握った手の者の魔力を感じることができるのじゃ。」
相手の力量を感じることができることは知っていたけどできる人人は見たことなかった。お嬢様には少々悪いがどうなるのか見てみたい。
アレクサンドル「いくぞお嬢ちゃん。」
レイン「はい。」
アレクサンドルはレインお嬢様の魔力を吸い上げ自身の身体の中に取り込むような魔法?的なやつを発動させるとお互いの魔力が他の人に見える「オーラ」なる物を二人は纏った。
二人のオーラはみるみる大きくなり空高く伸びていきましたが、アレクサンドルのオーラは止まりお嬢様のオーラだけが天高く伸び続けました。
アレクサンドル「長い事生きてきたがワシより魔力が高い奴はお主が初めてじゃな。」
アレクサンドルの説明では魔力測定に使われる魔法本は最大9,999までしか測れないらしくそれ以上の者は先ほどのように本が燃えるとのこと。
ちなみにアレクサンドル賢者の魔力は約20,000で宮廷魔法使いの10倍の魔力を保有しているが、お嬢様はそれを超える40,000とのこと。有に宮廷魔法使いの20倍、アレクサンドル賢者の2倍に想定される。
アレクサンドル「この位の魔力量だと火球ですらそこらの魔法使いが使う上級魔法と変わりないじゃろ。」
お嬢様は魔法測定は魔力量が大きい為被害が出るとアレクサンドルは感じ取り免除にした。
ちなみに僕の魔力量は3,600と宮廷魔法使いの魔力量を1,600程越していたので、魔法測定の火球は的を破壊して合格になった。
次のダンジョン攻略では魔法のコントロールは必須なので魔法測定で基準値より下の者は不合格となり、その時点で終了となる。
※基準値:最大6回まで的に当てることができ、2発的に当てることができれば合格。
リース「やはりお嬢様はとてつもない魔力の持ち主だったんですね。」
レイン「私もあそこまで大きいとは思ってもみなかったわ。」
最後のダンジョンの時には僕とお嬢様を入れても20人しか残っていなかった。
リース「受験時には100名程いたのですが、魔法コントロールで落ちた方々が沢山いましたね。」
そしてその時間が来ました。運良く僕とお嬢様は同じチームになり、後の2人の方も見たところ良さそうな方々ですね。これならチームワークもなんとかなりそうです。
試験官「これよりダンジョン攻略をしてもらいます。先程発表されたメンバーでダンジョン前に集まってください。」
リース「お嬢様行きましょう。」
レイン「そうね」
僕とお嬢様は先程メンバーになった2人と共にダンジョン前に集合しました。
試験官「各自軽い自己紹介をして輪を和ませとけ。」
確かに。名前も知らないままではチームワークのチの字もありませんね。ここは僕からご挨拶しましょう。
リース「僕はリースと申します。得意魔法は風魔法で主に武器や自身に使って近距離の立ち回りをしています。」
レイン「私はレイン。魔法は水魔法が使えます。ウォーターボールが得意です。」
ユウト「俺はユウト。16歳で家の手伝い…木こりをしていたので、斧を使って戦う。片手に斧もう片手に盾を装備しているのでタゲ取りなんかができると思っています。」
トゥーラ「私は弓が使える。この長い耳で敵の足音も瞬時に聞こえるから偵察もできる。」
パーティ構成は…
最前衛:ユウト・前衛:リース
後衛:レイン・最後衛:トゥーラ
というように役割が確立されているため指示も出しやすい。
試験官「ではチーム2ダンジョンに潜りなさい。」
リース「お嬢様、僕らの番ですよ。気を引き締めて行きましょう。」
レイン「そうね」
僕らチーム2はダンジョンの中に潜った。このダンジョン自体整備されている為松明が等間隔でおいてあった。
それでも魔物は湧いてくるようで僕らの前にスライムが数匹現れた。
スライムは低級魔族のためか少し透明な身体の真ん中に魔石が存在する。その魔石めがけて攻撃すれば簡単に倒せるのだが…
ユウト「ひぃ…こ、これが魔物!?ネバネバしていて気持ち悪い…」
リース「スライムだぞ、スライム。」
ユウト「俺…ネバネバしたのが大の苦手なんだヨ…」
そう…最初なんかいい感じに思えたこのチーム。戦えるのが僕とお嬢様しかいないのだから。ユウトに関しては最初オラオラ系でどんな魔物もかかってこいと勢いが強かったのだが、とたんにスライムみたいなのを見ると気持ちが悪くなり最前衛の役割を果たしていない。
トゥーラに関しては敵の足音の察知能力は長けていたが、いかんせん何処からその魔物が来るのかまでは分からないため、僕の感知スキルを使ったほうが何処にいるのかも敵の数も分かるので今のところトゥーラがいてもいなくても同じである。
お嬢様は水魔法が効かないスライムを除いてゴブリンやスケルトンをお得意のウォーターボールで倒している。流石お嬢様、ここ数日で目まぐるしい成長を遂げている事に僕は感激いたします。
リース「ユウトとトゥーラさん、次敵がいたらお願いしますよ!」
ユウト「ネバネバ以外だったら任せろ!」
トゥーラ「…」
僕達はダンジョンに入って20分くらい経った後、ようやくここのボス的ドアを見つけました。
リース「皆さん気を引き締めていきましょう。」
僕はそう言ってドアを開けた。ドアの先には何もなくただただ広い空間だけがそこにありました。
ユウト「ボスは…」
トゥーラ「みんなここから離れて!早く!」
トゥーラは何かを察知して部屋の外側に寄るよう指示しました。
リース「トゥーラ、何かいるのか?」
トゥーラ「地面にいる、多分ゴー…」
その時地面から6m程のゴーレムが現れました。
ユウト「なんじゃこりゃ!?」
レイン「ゴーレム…でも…」
リース「ただのゴーレムではないようですね。」
このゴーレムは土でできたゴーレムで地面が土なのでゴーレムを砕いても地面の土で何度でも再生してしまう。
ユウト「"挑発"」
リース「ナイス!ユウトがタゲを取ってる間にお嬢様は水魔法を…僕はユウトの援護をしながら風魔法で動きを抑えます。」
ゴーレムはユウトを思いっきり叩いた。
ユウト「なんのこれしき!お前のパンチじゃこの盾は壊れないぜ!」
ユウトがゴーレム攻撃を受け止めてくれたおかげであれができそうです。
リース「"ハリケーン・ウォーリア"」
風魔法本来の竜巻をモチーフにした技で攻撃にも使えるが今回は敵の動きを制御する為の技になる。
リース「今です、トゥーラさん。」
トゥーラ「分かってる!」
レイン「私も援護を!」
トゥーラは矢に魔力を貯め、レインはトゥーラに魔力の補助に回った。
トゥーラ「"ハンドレッド・アロー"」
トゥーラは斜め上に弓を向けて放った。その矢は1つの矢から百の矢に変わりゴーレムに突き刺す。
竜巻の外はある程度の投擲物は跳ね返すが唯一の弱点は上からの攻撃である。竜巻の上は空いている為攻撃ができるのだ。
だがこれで倒れるゴーレムじゃない事は分かっている。ゴーレムの核は土で守られてるはずなので先程の攻撃で丸見えになっている。
リース「魔法を解くからありったけの攻撃をユウト、頼む!」
ユウト「任せろ!」
ユウトは身体強化と斧の武技である"メガ・スラッシュ"を放つ構えを取った。
リース「解い…」
ユウト「うぉぉぉぉぉ!!」
僕とユウトのコンビネーションが噛み合っていたのか偶然なのか魔法が解けたコンマ数秒のタイミングでユウトがゴーレムの核に切りかかった。
ユウト「ま…まだだ…。まだきれてない切れてない…」
リース「っ…。」
レイン「下がって、私の水魔法で!」
リース「お嬢様…ウォーターボールでは壊せま…」
お嬢様が水魔法で出した物はウォーターボールではありませんでした。水を剣…いや、レイピアの形に変えて構えを取りました。
そしてお嬢様がその場でそのレイピアを突き刺すと刃先が勢いよく伸びゴーレムの核を貫通しました。
ユウト「ナイス!これならなんとか壊れそうだ!」
ユウトの言う通りゴーレムの核にはヒビが出てき始めました。ユウトがダメ押しの2回目の"メガ・スラッシュ"を放った。
ゴーレムの核は砕かれてゴーレムは消滅しました。
試験官「そこまで。チーム2は目の前のドアを進んでください。」
そっか、ここは開拓されているダンジョンだったんだ。ゴーレムとかは試験官が魔法で出したものなのだろう。
僕達はゴーレムの後ろにあるドアを開け目の前の階段を上がっていきました。
上がった先はダンジョンの入口とそれほど離れていない場所に位置していて冒険者ギルド職員と試験官が待っていた。
職員「おめでとう御座います。あなた達4人は晴れてDランク冒険者になります。」
ユウト「Dランク?」
トゥーラ「Fランクになる為の試験じゃないのですか?」
試験官「元々はそうんだけど、最後のゴーレムは初心者が倒せないように少し細工したゴーレムなんだよ。」
職員「それを倒すってなるとなぁ…Fランクじゃもったいないって事で。」
僕達は今日からDランク冒険者になった。冒険者のランクは上からS・A・B・C・D・E・Fになっており、大体の冒険者がDランクである。
大体の冒険者が目指しているランクはBランクでほとんどのクエストを受ける事ができたり、冒険者ギルドのサービスも良かったりとするから。
ランクの上げ方は単に高ランクの魔物を倒せばいいわけでもなく、どれだけ村・町・国に貢献したかという日頃の行いもランク上げの対象になっている。
レイン「やったねみんな!」
リース「最初はヒヤヒヤする場面もありましたが結果的に、いい方向に進んで良かったです。」
ユウト「自分の力を過信していた部分もあったから見直せる機会を貰えた事に感謝だな。」
トゥーラ「強大な敵に阻まれようと諦めない心が大事だと今感じた。」
無事に試験が終わり冒険者になったのだが、とりあえず僕はお嬢様の執事兼冒険者としてゆっくり過ごそうかな。
学園まで残り2年と4ヶ月あるから苦手な属性の魔法を特訓でもしようかな。
ユウト「俺はとりあえずこのまま冒険者として生きていくかな。先に上のランクで待ってるぜ。」
トゥーラ「私は自分の村の近くで活動しようと思う。」
レイン「じゃあ私とリース以外は離れ離れだね。」
ユウト「次集まった時は一緒に冒険しような。絶対だぞ!」
リース「当たり前だ。」
こうしてユウトとトゥーラと別れた。僕とお嬢様は家に戻り冒険者になった事を報告しに行きました。
ガルド「レインたん…怪我はなかったかい?魔物は怖くなかったかい?(泣)」
マリア「二人共おかえり。冒険者になったお祝いで今晩はご馳走よ。」
ハル「君達ならやり遂げると思いましたよ。」
夕食を済ませた後僕とお嬢様は疲れていたのかすぐベットに横になり寝ました。冒険者になったのは嬉しいですが、まだDランク。まずはCランクを目指していこうと思う。