4,いろんな魔法
この世界には炎・水・風・雷・氷・土・光・闇・聖・無の10つの属性が存在する。
誰しもが1つは持っており、2つ持ちは100人に1人で3つ持ちは1万人に1人の確率である。
※全ての人間が聖属性以外の属性を所持しているが、最も高い属性をいくつ持っているかで上の様な確率になる。
魔法を極めしものに与えられる称号「賢者」は大抵5つ以上持ち合わせているが稀に全属性持って産まれてくる人が歴史上に一人だけ存在し、500年前に亡くなった勇者がそうだと言われている。
ハル「お嬢様…リース、魔法の授業をしましょう!」
レイン「え!?」
リース「お嬢様は分かりますが、なぜ僕まで?」
…このハルという方はスクワーズ家に仕えている魔法使いであり、この領土の魔法団の団長でもある方だ。
ハル「マリア様の伝言によれば、後数年したらヴァルンド王国の学園に通わせると言ってたような…」
リース「もしかして…ヴァルンドファブルズ学園のことでしょうか。」
ヴァルンドファブルズ学園とは、ヴァルンド王国にある大きな学園で剣や魔法を6年の年月をかけて学ぶ場所である。後2年ちょいで行くことになる。
リース「せっかくスクワーズ家内で隠しているお嬢様の事は大丈夫なのですか?」
ハル「それもマリア様が大丈夫とのこと。」
リース「ならいいのですが…」
ハル「後2年間は私ハルと剣士の…今は居ませんが…担当しますのでよろしくお願いします。」
僕が得意とする魔法は風である。風を使って武器や自分自身を強化して戦う感じであり、1対1の際は力を発揮しやすい。
レインお嬢様は聖と水の2属性を持っていて、聖属性は聖女特有の属性でどんな傷を負っても回復したり浄化することができる。
ハル「私は炎・水・風が使えて特に炎が高い感じだね。」
リース「一応は教えることができる感じなんですね。」
レイン「私も魔法が使えるの?」
ハル「はい!」
リース「お嬢様に勉強ができるのかな?」
レイン「私だってできるし、リースより上手く使いこなすし。」
こうして僕とお嬢様の魔法の訓練(授業)が始まったがここで問題が起きた。
ハル「まずは魔法を使う為のMPを増やすための訓練を行う。」
ハル先生の言ったことはこうだ。1m程の魔鉱石に自分の魔力を注ぎ込んで光らせるといった事だ。
一見簡単そうだが1mの魔鉱石となると今のところじゃ1日魔力を注ぎ込んでも半分にも満たさないどころか、魔力切れで倒れてしまいそうだ。
※魔鉱石:大きさは1cmから3mになる石で主に鉄と交えて剣を鍛造したり、杖につけて簡易的に魔法を放ったりする代物。
※1cmで大体1万コル=1万円する。
リース「なんとかいけそうだ。」
ハル「リースは毎日稽古しているだけあって覚えが早いな。」
レイン「私だって負けてられないんだから。」
授業は朝から始まり夕方になった時、僕は注ぎ終わった。
元々魔力量が人より数倍持っていたのか日々の訓練の成果なのか全く疲れた感じがしないが、お嬢様は未だ半分も満たない位でした。
レイン「なんでリースの方が先に終わっちゃうの?私だっていっぱい注いでるのに。」
ハル「お嬢様、今やっているやり方では明日になっても終わりませんよ。」
ハル先生はお嬢様に魔力の扱いについて説明した。
魔力というのは体全体に血管のように繋がっていて、魔力を作り出す心臓部から魔力が流れている。
今は魔力を注ぐので、その体全体にある魔力を一点に集中させないといけません。
レインお嬢様は一点に集中ではなく、拡散的に魔力を放出しているので一向に貯まりません。
レイン「どうやって1つにまとめるの?」
ハル「お腹に力を入れるように魔力を貯めてください。」
レイン「こうかな…」
ハル「その溜まった魔力をだんだん上に上げて手の方に移動させてください。」
レインの魔鉱石は一瞬にして魔力が貯まった。半分にも満たなかったはずなのに、一分1秒経たずして魔力が貯まったのを見たハルは好奇心で他の魔鉱石も出した。
ハル「お嬢様…こちらの魔鉱石達もお願いします。」
ハルは他の魔鉱石1m級の物を数個置いたらレインお嬢様は次々と魔鉱石に魔力を貯め始めた。
魔鉱石は武器や魔法に使う物だが勿論魔鉱石に魔力が貯まってるほうが値段も2倍になる。
白金貨=100万コル=100万円
金貨 = 1万コル= 1万円
銀貨 =1,000コル= 1,000円
銅貨 = 100コル= 100円
となっているが今ここにある魔鉱石だけでも軽く500万コルはあるとみる。
リース「先生、勿論報酬はありますよね?」
ハル「子供だと思っていたがそうはいかないか。7:3でどう?」
リース「僕とお嬢様が7ですよね?」
ハル「3の間違いじゃないか?」
結局6:4で僕とお嬢様が4で200万コル程だった。
レイン「私はコルはいらないから魔法を教えてほしい。」
お嬢様はこんなにも言っているのに対して僕はお金にがめつかった自分が恥ずかしく思った。
ハル「日も暮れたから次の授業は明日だね。」
リース「次、お嬢様をお金しのぎに使おうとしたらマリア様に言いつけますからね。」
ハル「あはははは…冗談が上手いな。」
リース「冗談に見えます?」
ハル「あレ…あ…あれだろ、4割だった事が悔しいんだろ?」
リース「ではマリア様に報告しまー」
ハル「待って待って待って…それだけは本当に駄目。私は魔法だけしか取り柄がないの!ここを追い出されたらもう宛がないのよ!」
うぁ…これが魔法団団長の姿とは思えない。
ただただ駄々をこねる子供みたい。こんなのをお嬢様に見せるわけにはいかないのでお嬢様の目を手で覆い隠した。
レイン「リース、なにをしてるのかしら?」
リース「いえ…目の前に虫が集ってるのでこのままお邸に戻りましょう。」
レイン「?」
ハル「おいてかないで!!」
ハル先生は僕の服を掴んで泣き寝入りしてきましたので、引っ張られながら無視して戻りました。
ハル「明日魔法の実践で領外に出れるようマリア様に交渉するからさ…」
僕はその言葉が聞きたかった。なんせ訓練では魔法力やMPは鍛えることができても、
基礎体力は鍛えることができないから領外で魔物との実戦が必要なのである。
それに、冒険者になってそれなりの地位を確立することができれば…
ハルはマリア様になんとか説得することができ、領外に出れるのであった。
次の日…
領内のほのぼのとした空気感とはちょっと違うかのようなそうでもないような感じがした。
なんだろうこの緊張感…誰かに見られているような…
リース「ハル先生、魔物が近くにいるのでは?」
ハル「勘がイイねリースくん。私も丁度感知でどんな敵、敵の数が分かったよ。」
リース「これくらいだったたら僕達でもいけますか?」
ハル「どうだろうね?」
レイン「昨日みたいにやればいいの?」
リース「そうですねお嬢様、魔力を一点に集めて放出してください。」
レイン「分かった。」
レインお嬢様を軽く見ていた。我々はとんでもない人を世に放ったんだと…
レインお嬢様は初級水魔法のウォーターボールを放とうとしたのだが、一般的なウォーターボールの大きさは半径10cm〜30cm程でレインお嬢様が出したのは半径5m程の大きさで宮廷魔法使いでも1mが限界だという。
1m級の魔鉱石を一瞬で魔力補充できるくらいだからこれがお嬢様本来の力なのか…
レイン「えっとさ…これどうすればいいの?」
お嬢様のウォーターボールは少しずつ大きくなり始めました。
ハル「魔力を断ち切るんですよ。そうしたらウォーターボールが大きくなるのが止まりますから。」
レイン「こうかな…」
リース「そのウォーターボールをあの草むらに投げ込んで下さい。」
お嬢様はウォーターボールを敵がいる方向に投げると、地面についたウォーターボールは弾けてその衝撃で草むらに隠れていた敵が出てきました。
ゴブリン「ウギャアァ」
リース「ゴブリンが…4体…」
ハル「いや、あそこの木で弓を引いてるゴブリンが一匹いるね。ゴブリンにしては頭脳的な戦いをしてるけど…」
リース「"エア・ランス"」
エア・ランスとは主に遠距離での攻撃に使うもので射程は長いものの威力が乏しいので、先制攻撃みたいな感じで使える。
エア・ランスは木の葉で隠れているゴブリンを貫いた。
ハル「中々いい判断能力だね」
リース「あの後ろにいた弓兵のゴブリンは前線のゴブリンに注意を惹かせ気づかれないように相手を射抜こうとしていた…」
レイン「へぇ…そうなんだ」
ハル「リースは魔力の訓練だけではなく自分の立ち回りを理解しているんだね。」
当然である。僕は日々お嬢様をこんな輩(ハル先生みたいなの)から守る為隠れて訓練に勤しんでいたからね。
ハル「後の敵は私が倒してあげるよ。」
ハル先生は右手に炎魔法の火球・左手に風魔法のエアカッターを出しそれを一つに合体させた。
それをゴブリンのいる方に放つと炎の竜巻が天高く舞い上がった。
魔法の合成又は合体は一般の魔法使いレベルでは到底できない。やはりハル先生はただのバカではないようだ。
ハル「どう?これが2属性混合上級魔法"ファイアストリーム"よ!」
レイン「うぁ…すごいすごい。ハル先生カッコいいです。」
リース「そうですね(棒)」
ゴブリンが焼きって灰になった後光る石があった。アレは魔石だ。
魔石というのは魔物から出る魔鉱石のような物で、上級な魔物や大きさなどで価値が変わってくるがこのゴブリン集団はどれも進化していないゴブリンなのでスライムの次に価値が低いとされている。
ハル「冒険者になるのに必要な物だから低魔石でも仕方がなよ。」
リース「ゴブリンを倒すことが冒険者になれる条件なんですか?」
ハル「まあ…そのくらいは倒せる実力がないと冒険者の試験に挑めないからね。」
レイン「試験って何があるんですか?」
冒険者の試験は主に3つあって1つ目は筆記試験だが、難しいわけではなく毎年同じ様なものが出題される。
2つ目は魔力測定+魔法測定で、持っている魔力量と今使える魔法を20m位先の的に当てる試験で、魔力が低かろうが高かろうがそういう理由で落ちることはない。
3つ目は低ランクダンジョンに潜って出口までたどり着く。このダンジョン葉あらかじめ冒険者協会が用意したものであって高ランクの魔物が出ることはないが4人チームで協力してダンジョンの出口まで向かわないといけない。
途中で一人でも逃げたり諦めたりした場合そのチームは連帯責任で退場することになる。
リース「1つ目と2つ目は難なく行けそうですが3つ目が…」
ハル「ダンジョンのことか?」
リース「いくら低ランクダンジョンとはいえ生半可な気持ちで挑めないですし、知らない人とその日限りの協力ができるかどうか。」
万が一お嬢様に危険が及べば執事として失格いや、クビといったところか…
レイン「私、強くなる。色んな人に守られて来たけど、これからは私が皆を守りたい。」
お嬢様の熱意…僕としたことが、お嬢様の気持ちを踏み潰してしまうところだった。
リース「早速冒険者協会に行って手続きをしに行きましょう。」
ハル「まぁまて、少年。冒険者試験は2日後だから慌てる必要はないぞ。」
リース「ではお勉強ということですか?」
ハル「本当に察しがいいね。毎年同じ様な問題が出題されるけどたまに、意味が分からない問題が一問程あるからさ。」
レイン「お勉強…」
リース「そうですよ、お嬢様のだ~いすきなお勉強です。」
レイン「やっぱり冒険者になるの止めようかなぁ…」
こうして僕とお嬢様はハル先生の下、試験勉強に勤しみ当日に備えるのであった。