1,死神令嬢
あなたは好きになった人が目の前で亡くなったのを見たことがありますか?
この令嬢はそういう経験を何度も繰り返してきました。そのせいか、巷で死神令嬢と呼ばれるようになっていた。
これは令嬢に呪いがかけられており、令嬢が出会って恋に落ちた相手は絶対愛人になり、絶対好きになった夫が謎の死を遂げるといった呪い。
この呪いをかけた人物は既に亡くなっており祓う事が不可とされている為、令嬢は一人自分の部屋で閉じこもっていた。
この物語を深く知る為にこれまで令嬢が合ってきた愛人をゆっくりと紹介しよう。
ここはヴァルンド王国の東に位置する都市名を「ギラン」。この都市を治めるのが今回の主人公令嬢の父である。5代前に王から辺境伯の地位を貰い受けた由緒正しい貴族であり、農業に長けている都市で毎年農夜祭と呼ばれる祭りが開催され、世界中からこの都市に訪れる人がいる。
そして死神令嬢になってしまう可哀想な子がこのレイン・スクワーズ令嬢である。レイン嬢が産まれて6年程が経ったこの年にある男の子がスクワーズ家にやってくる。
名をリース。文学に長けており貴族の作法まで学んでいる優秀な平民で、レインの従者としてスクワーズ家に来ました。年齢は7歳とレイン嬢と同じ位であった為か初めて会った二人だったがすっかり仲良くなった。
リース「レインお嬢様起きてください、朝ですよ。」
レイン「まだ大丈夫…」
リース「お母様がお見えになってますよ。」
レイン「お母様が!?」
だかそこにはお母様の姿はなくリースがレインを起こす策だったのが分かった。
レイン「主に向って嘘なんて…最低よ。」
リース「お嬢様が起きないのが悪いではありませんか。」
レインの支度をするリースとメイド達、ギリギリ家族の朝食に間に合った。
ガルド「レインたん、お・は・よ!」
この筋骨隆々で立派なアゴヒゲが生えている大男はレインの父、ガルド・スクワーズである。ガルドは現辺境伯として従事しており、昨年は新種の薬草を発見したことにより王から褒賞を貰うなどといった功績を残している。
マリア「レインが嫌がっているでしょ、やめなさい。」
この方はマリア様、レインお嬢様のお母様である。マリア様の実家は商会をしていたので、それを活かして街の方で薬専門のお店を営んでいる。
クラシオ「レイン、今日も遅かったじゃないか。あれ程夜遅くまで起きるなって言ったじゃないか。」
こちらの方はレインお嬢様のお兄様のクラシオ様です。今はこの都市の学園に通っており、炎・水・風の三属性を使う事が出来る天才学生。
今日は待ちに待った聖典祭があり多くの子供が教会に集まっていた。聖典祭というのはいわゆるジョブを貰う場所である。10年前の聖典祭では勇者を出したことで有名になったとか。
レイン「私は何のジョブを貰えるのかなぁ。リースはどんなのが来たら嬉しい?」
リース「レインお嬢様を守れる守護者などでしょうか。」
レイン「私はねぇ、ふふふ…内緒。」
ジョブ自体は完全ランダムではなく親のジョブだったりを少し混ぜながらどうするかを決めるらしい。神様も大変だなぁ。
そんなこんなでお嬢様と僕、リースの番が回りました。この都市のお嬢様とあってか領民からはとても慕われており同時に、期待の眼差しで見ていました。
神官「リース前へ…」
リース「僕かららしい」
神官「リース…お前のジョブは…剣聖だ。」
領民は驚いていた。それもそのはず、剣聖は武術の頂点に位置するジョブの一つであるからして、王国に一人いるかいないかの珍しさである。
リース「レインお嬢様、やりましたよ。」
レイン「次は私の番ね。」
神官「レイン、前へ。」
レイン「はい…」
神官「レイン…お前のジョブは…聖女だ…」
無事に聖典祭は終わり屋敷に戻りました。屋敷に戻るとガルド様とマリア様が出迎えてくださり、お二人共ソワソワしていた。
ガルド「レインたん…レインたん、こわくなかったかい?」
レイン「怖くなんてなかったですわ。」
マリア「それで、何のジョブを授かったのかしら?」
レイン「聞いて驚かないで、私は聖女でリースは剣聖なのよ」
僕はお二人が驚くと想像していたが、驚くどころか静まり返った。
マリア「どうして…どうして…聖女に…」
マリア様は酷く涙を流しガルド様に倒れ込みました。
一般的な聖女は祈りで民を救うといった印象がありますが、救うということは勿論代償が付き物です。
そしてその代償は「恋の呪い」というもので、出会って恋に落ちた相手は絶対愛人になり、絶対好きになった夫が謎の死を遂げるといった呪いである。
まだ産まれて6歳の娘には重すぎる代償だった為マリア様は悲しんでいたというわけである。
ガルド様が僕のそばに来てこう言いました
ガルド「リース、レインを頼むぞ。それとレインとこれからも側に居たいならレインが恋に落ちないようサポートをしてくれ。」
レインお嬢様が恋に落ちないようにサポートする他、僕自身もレインお嬢様に恋を抱かないように立ち回らないといけないな。
その夜、僕はレインお嬢様の部屋に呼ばれたので行ってみるとお嬢様は涙をこぼしていました。
レイン「リース…私は…これからどうしたらいいの…」
僕はどう励ましたらいいのか分からなかったのでそっと抱きしめました。
リース「お嬢様が悩む事はありません。何かあったら僕が全て受け止めます。」
僕はマニュアルみたいな言葉しか話せず本当に言いたいことはここでは言えなかった。