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綺麗な声

作者: 秋葉竹



いまとなっては

すこし悲しいくらいの

干からびた笑い話だが

僕は

じつは

二十歳になるまでに

死にたかったから

世界をバカにするのも当然だと

信じていた


どんなあたたかな抱擁もない

寒くて凍えるひとたちとの関わりの中で

拗ねた目をして

すべてのひとの視線を

避けずに逃げずに真っ正面から

受けつづけていたのは

じつは

二十歳になるまでに

死にたかったからだった


ただそれが

とても綺麗な空気を吸い込むみたいな

心を蘇らせる魔法なのだと知っていた

のは

ちょいズルかな

とはいまとなっては深く想う


生きていて

嫌なことのないいちにちなんて無い

それでもやっぱり

たまに感じる幸せなんかに

すっかり騙されてしまうバカみたいに


周囲四面が真っ暗な空気の壁だと

感じられたとき

さらに上下にも真っ暗な壁を

感じてしまったとき

僕はその立方体から

逃れるすべのひとつも知らずに


身につけた自尊心が邪魔をして

その絶望に泣き喚くことさえできない

ほんとうは叫びたいのに


できることと云えばただ


二十歳になるまでに

死にたかった想い出だけ胸に抱いて


うん、うん、と


よく頑張ったよ君は、と

ひとりじぶん自身を慰めるやさしい

見苦しさ、だから死にたかった

死にたかったと

いまとなってはそんな嘘ばっかり

振り絞り、搾り切るような濁声で述べて

しまっているだけだ


あるいは、涙声で、か







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