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美味しくならない魔法をかける  作者: 比嘉パセリ
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NO3 今夜の食材

「――ねえお父さん、お母さんたち今何してるかな。」


明けの明星と共に、帰路を歩く小さな影と大きな影。

そのうち、小さな影は時折ぐらぐらと揺れたり、跳ねたりと感情に促されるまま動く姿は可憐でありながらも、手を伸ばせば気化してしまいそうな程儚くも見えた。



 

「さぁな…、まだ起きるには早いだろうから、ベッドで眠っているんじゃないか?

特に、ニーチェなんか父さん達がいない代わりに母さんの手伝いで疲れてるかもしれないしな」


「う〜…、なんだか少し寂しいな。…でもなんで寂しいのかって聞かれたら“分からない“って答えちゃいそうなぐらい、頭の中ですごくもやもやしてる。」


少女は一度足を止めて、薄らぎ始めた儚い星に手を伸ばした。

しかし、その手が星に届くことは絶対的に有り得ない。


「…お星さまってなんでこんなに儚いんだろう。

なのにこんなに綺麗に輝いてて、意識を盗られて何もかも忘れるくらい頭を空っぽにしてくれるの。…けどいつか、私の目の前から消えていく人たちもこうやってお星さまになるんだって考えたら、お別れも余り寂しくないかも。」




少女はにこりと笑いながら、隣にいる父親にすがりつくように歩き出す。



「土に還って誰かの踏み台になるぐらいなら、星になるのも悪くないな。」


「お父さんもそう思う?

ふふん、やっぱお父さんは私の理解者だ!早くお母さん達に会って、この二日間の出来事を沢山聞かせてあげたいな〜!」




           ***







「おい起きろ、少女。」


眼を縫われたかのように、ぴくりとも反応しない少女を見上げる男は呆れたように一言吐いた。




「…起きないですね。でも起きてないほうが、さっさと下処理終えられますし…或る意味好都合では?」


男の肩に座りながら、ぬいぐるみなのか、それとも喋る玩具の一種なのか不明の物体が男の言葉に返答する。



「それはあながち間違っていないが、私は一度口を聞いて、食材の未練が残らぬやり方で始末したいんだ。邪魔をするな。」


「ワア、御主人の趣味は何千年経とうと理解が出来なさそうです。」


「お前に理解と共感を求める行為をする者は余程の狂人だろう。分かったら口を縫え、耳元で騒がれるのは癇に障るのだ。」


広々としていながら、賑やかな声や楽しそうに談笑する者の姿すら見えない館。

そのうち、小さな一室のみ蝋燭の儚い炎で照らされていた。


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