大刀・餓鬼
今の魔力の使い方を考えれば今以上に放出系の魔法を使う訳には行かない。使えば最後、どう頑張っても処理が追い付かなくなって終わる。すぐに限界が来て終わる。だから必然的に放出系の魔法以外で攻めなければならない。
魔力の余力で言えば10ほど有る。しかし10というのは魔法の基本である魔力球すら作り出せない魔力量だ。
幸い俺の身体強化や大刀や柄や魔力球に使っている分の魔力はほぼ無限だ。だが感知の為に垂れ流している腕輪に溜めた魔力は有限だ。つまりこの有限の魔力が尽きる前にどうにかしなければならないわけだ。
こういう時、もう少し総魔力量が有ればもっと動きやすいのだろうとどうしても思ってしまうが、無いものを強請っても仕方ない。今有る物でどうにかするのはいつでも同じだ。
だからまずは、
「?!!」
大刀へと余力分の魔力を徐々に溜め、溜まったと判断した時に一気に襲い来る魔法を処理して核たる魔力の塊を斬り裂こうと画策した。
それを行動に移そうとした直後だった。ふとダンジョンで出会い死合ったピュアオーガ、その斬り落とした頭が脳を過った。
大刀に魔力を溜め襲い来る魔法を処理し核へと近付くほどにあの頭が頭から離れなくなる。
だから、根拠も無いしこんな極限状態でやることではないとわかっていたが、これは宗教的な言い方をするなら天恵なんだと直感的に察した。
正直神なんて居ないと思うし、もしもラウムか魔王が俺へ何かしたのだとしても、だからこそかもしれないがこれ以外にこの状況を打破する術は無いように思えた。というかそうとしか考えられなくなった。
だから、
「少し時間を貰うぞラウム!!」
探知の為に放出していた魔力を全て俺を守る為の鎧へと換える。
鎧に換えると言ってもやることは結界のような扱いだ。探知の為に垂れ流していた魔力を俺を中心に半径2メートルほどまで縮小させて、その中を俺の魔力で固めてラウムの魔法や魔力が介在出来ないようにし、迫る魔法の一切を阻む。ただそれだけの壁だ。
そうして出来た一時の空白の時間を利用して、指輪からあのオーガの眼と牙と角を取り出し大刀に重ねる。
最初から大刀に柄は無い。目釘穴が1つの茎が剥き出しの状態だ。これを身体強化で強化された握力で無理矢理握っていたが、正直この力は余分だった。もっと早く柄を用意しとけば良かったんだと思う。
だが、今この時はこの茎剥き出しの状態が何よりも良かった。
オーガの眼と牙と角を重ねた大刀の茎に昨夜造った刀身の無い柄を重ね、大刀の刃で腕の皮膚を切ってそれぞれの素材に血を掛ける。
そして昨夜ヒロィクリから教わったことをやる。
今からやるのは昨夜教わったことの応用だ。
ヒロィクリから聞いた素材は揃ってる。あとは魔力を籠めるだけだ。これで彼等の理論上では新しい武器になる筈だ。
目が合うなんてことは無い筈なのに、ピュアオーガの眼にずっと見られているような気になる。
その視線を受けながら、ラウムの攻撃を防いでいる壁以外のありとあらゆる魔力を素材たちへと注ぐ。身体強化はもちろん、魔力を捉える目さえ解除し、その魔力さえ素材たちへと注ぐ。
魔力はほぼ無限に湧き上がって来るんだ、これから産まれるであろうコイツが満足するまで魔力を注げるだけ注いでやる。
魔力を注げば注ぐほど、魔力を捉える目を使っていないにも関わらず視認出来るほどの輝きを放つ。
それは次第に目を開けていられないほどの輝きになり、それでも満足することはなく、遂には俺を守る壁やこの空間内の魔力まで吸い始めた。
俺の魔力操作を無視して、俺の命など関係無いとばかりに注いですらいない場所からも魔力を吸われているような感覚がする。
「このッ、注いでる俺の魔力だけで満足しやがれ!」
悪態を吐き、それでも更に魔力を求めるならと大喰らいを満足させる為にありったけを注ぐ。それこそ命を燃やして魔力としているんじゃないかってぐらい籠める。籠め続ける。
気付けば壁は最初展開した時の円型ではなく、俺や大刀に纏わり付くようになるほど縮小された。
なんとかそれ以上の縮小を必死で魔力を操って、注ぐ魔力についても先程までのように我武者羅に注ぐのではなく一定になるように籠める。
ここまで壁が縮小されてわかったが、要するにこれは、俺とこれから産まれるコイツとの主導権の奪い合いだった。
コイツは無尽蔵に喰いたいだけ魔力を喰う。俺はそれを躾るかのように調整する。互いにどちらか上かわからせる為のやり取りだったわけだ。
それがわかってからは籠める魔力の量を減らした。
そしたらコイツは癇癪を起こすガキのようにより魔力を吸う量や速度を上げやがった。
「テメーは既に俺に敗けて死んだだろ!だったら素直に俺の糧になりやがれ!!
どっちが上かなんてあの時既に決まってんだよクソがアアアアアアアアアア!!!!」
脳裏に映るピュアオーガの頭へ向け叫び、更に魔力を操作してコイツの吸う量を調整する。それこそ数値化するなら、魔力を100ずつ吸うように。
体に襲い掛かる衝撃でラウムからの魔法も更に苛烈になっていることを察する。
ラウムの攻撃を防ぎながらこのクソガキの相手もしなくちゃならないなんて、ホントこんな時にやるもんじゃなかったと自然と呆れの笑みが溢れる。
これで使い物にならないゴミになったらただじゃおかねぇ。
「いい加減観念しやがれこのクソガキィイ!!」
なんとか魔力を吸おうとするコイツに、言うことを聞かないクソガキへの怒りに似た感情を乗せながら途中から絞っていた魔力を、逆に溜め込めれるだけ体内で溜めて練りに練り続けた魔力を注ぎ込む。
すると輝きがより一層大きくなり、俺どころかこの空間そのものを包み込んだんじゃないかってぐらいその光が大きくなった。
「『なんだ……、それは。なんなのだ、それは……』」
光が収まり、俺より先に俺の持つクソガキを見たであろうラウムから言葉が漏れる。声色的に、本当に驚き過ぎて言葉が出てこないのだろう。
それを受けて、座り込んでいた状態から立ち上がり、ゆっくりと目を開く。
右手には黒の革巻きに柄頭が金のような金属で出来、真鍮無地の鎺でその中心にあのピュアオーガの眼の付いた、黄み掛かった鋼色の刀身をした大刀が在った。
思ったより落ち着いた意匠に落ち着いたことに少し驚きながらも、コイツが完成してから感じる全能感を必死に抑えながらパッと思い浮かんだ名前を口にする。
「大刀・餓鬼。恐らくこれまで俺が1人で戦いギリギリ勝ち残った魔物の中で1番想い入れの有る魔物が使っていてその命を奪った武器を素体に、その魔物の眼、角、牙、昨夜竜人族の技術で造り上げた柄、そして俺の血を材料に完成したこの世でただ1つの武器だ」
大刀・餓鬼を握る腕を振るう。それだけで魔力を大量に回復し、そろそろ底を尽きそうになっていた腕輪の中の魔力が簡単にこの試練が始まる前と同じほどまでに回復した。
それだけで何が起きたのかラウムはわかったのだろう、絶叫するように大きく口を開いて怒鳴る。
「『ふざけるな!!ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!!!!
その悍ましい武器の生い立ちなど知りたくもない!!それに見れば今産まれたことぐらいわかる!!
我が問い質したいのは何故そのような禁忌を産み出したかということだ!!
答えよサース・ハザードッ!!!!』」
ラウムがまるで慟哭するかのように叫ぶ。その姿はまるで何かに怯える子供のようだ。そんな彼の口から禁忌という言葉が漏れた。
禁忌か。なるほど、他人から魔力を奪う行為はこの世界では禁忌だったのか。
ハハッ、自然と笑いが込み上げてくる。
大刀・餓鬼を振るったことでその能力や効果がわかっただけに、そしてその素材となった者達のことを思うとむしろコイツがこういう風になったのは当然の結果と言えるんだがな。
「アンタには一生わからないさ空間のラウム。俺達餓えたガキの渇きなんて」
まぁそんなこと、ラウムはもちろん魔王すらわからないだろうさ。これを理解出来るのは俺が知る限りでは俺だけだ。
言って大刀・餓鬼を背中に背負うように構え、目に魔力を集めて、魔力を視認出来るようにしてから軽く地面を蹴る。
今は何も身体強化をしていない。にも関わらず身体強化を全力でやっている時のように簡単に1番近い核へと到り、それを大刀・餓鬼で撫でた。
それだけでその核は無くなり、逆に俺の魔力が回復した。
「『キサ、マァーーッ!!』」
ラウムが吼える。それだけで空間は悲鳴を挙げるように震え、まるで空間が歪んでいるのかあちこちが歪んで見える。
恐らくラウムは今、かなりの怒りを感じているのだろう。もしかしたら、魔王に喧嘩を売ったときのように。
その事にまたも笑みが込み上げ、次の攻撃が来る前に身体強化を軽く行って備える。
直後、俺を囲うようにもはや光の塊にしか見えない夥しい量の魔法の数々が展開された。
それを背中に鞘が有るとした時の抜刀の要領で袈裟に振り下ろし、右薙、左切上げし、右切上げ気味にその場で2回転しながら右薙払いをする。それだけで俺を囲んでいた魔法の全てが無くなり、その分だけ俺は魔力を回復し、それを腕輪へと溜めてまたも背負うように背中に大刀・餓鬼を構える。
そして高揚する心を落ち着かせようと、しかし無理だなと半ば諦めながら左の中指を立ててラウムを挑発する。
「たかが武器1つ。されど武器1つだ。その光り輝く角と顎の何か、必ず貰い受ける」
今度は普段の身体強化ぐらいの強化を行い、そして一息の間に残りの核全てを斬り伏せた。
「さぁ、第3回戦だぜ空間のラウム。止めるなら今の内だ。尻尾巻いて降参するなら今の内だ。じゃねぇとアンタのその立派な角は永遠にアンタの体から失われるぞ」
返ってきたのは大量の魔法と彼の尻尾だった。
大刀・餓鬼のイメージを有名作品の武器で例えると、穴の開いていない首切○包丁の能力と見た目をした、同作品の鮫○の能力も持っていて、サースとサースが認めた者が持つとデフォルトでその者が行う身体強化を魔力消費無しで行う対魔法士絶対殺すマンな武器です。
ゲームで出ればすぐにクレーム殺到でナーフ間違い無しのチート武器です。
いずれ魔王の武器になります。(ネタバレ)




