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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第四章:強化期間・前編
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答え合わせ


 要するに、空間のラウムは魔王やクソ野郎のように火・水・土・風、この基本の4属性や、魔族や天族やエルフ族の闇や光や樹属性のような種族属性以外の、創造や破壊と同じ類いの特殊な属性持ちなのだろう。名乗りから考えて空間属性とでも呼ぼうか。

 要は一瞬で移動したように見えたのも、正確に刃の位置を把握出来たのも、全部これが答えだった訳だ。

 つまり最初から視覚に頼らない視野を持っていたという事だ。不意打ちの攻撃が彼に届かないのは当然だった。


 そして俺の切り札のような上位互換のアレは、ただの存在的格の違いから生じた本能的な恐怖に訴えかける技だ。

 人間という俺と、ドラゴンという彼の存在的格は当然違う。そして当然ドラゴンの方が上だ。生物ってヤツは本能から来る恐怖には基本的には逆らえない。つまりラウムは、その恐怖を利用して命令してやれば良いだけだ。普通に自分の要求を言えば良いだけだ。そしてそれを、無自覚にではなくしっかり自分の武器だと認識している。

 つまり彼からの言葉は強く意思を持てば簡単に無効化出来る。最初、魔王に殴られて痛いと叫んだだけで俺が気を失ったのは彼という存在の心からの言葉だったから脳が錯覚して俺自身にも痛みが生じて気絶したんだ。痛みによるショック死なんてしなくて本当に良かったと思うし、この経験や透明な魔力の壁にぶつかりそうになったりしたおかげで気付けた。



 ラウムというドラゴンの強度についてもある程度の察しは着いた。

 彼の肉体は魔力量で言えば10000以上の魔力を使う魔法レベルでないと傷を付けられないだろう。

 それを思えば俺は総魔力量が圧倒的に少ない。10分の1にも満たないんだ、俺が彼を傷付けることが出来ないと判断されるのも納得する。

 だが、要するに魔力量10000以上に相当する攻撃であれば通るというわけだ。

 この10000という数字を先程は魔法で例えたが、冒険者のギルドランクで例えるとSランク以上に相当する。そしてラウムがSランク程度な訳が無い。つまり推定帝規模の攻撃が必須というわけだ。



 魔王の試練が、つくづく俺のレベルの少し上を毎度突いて来ることに、もはや言葉が出ない。


 当然呆れも有るし、見方を少し変えるだけでかなり鬼畜なものと言えるだろう。

 だが、俺にはこれぐらいがちょうど良く、そしてこの緊張感が堪らない。

 本当にこの天魔の魔王という存在は俺の要求を叶えてくれる。


 その事が当たり前にならないように、調子に乗らないように、そして最大の感謝を胸に、ダンジョンから帰った際に魔王から教わった魔法斬りの技術習得の際に一緒に身に付けた技術を行使するために、眼へと魔力を集める。


 集めて、集めて、集めて、集めて。集めていると、ある時を境に眼に写る景色が少し変わる。

 目の前の空間に空色の濃淡入り交じる線だったり面だったり、魔石のような核のような塊が写る。

 目の前に写るこの空色がラウムの魔力で、そして行使されている魔法なのだろう。


 だから自ずと何処を狙えば良いのかがわかる。


 敢えて、俺がわかることをわからせる為に、手始めに1番近くの核のような部分を大刀で斬り裂く。

 そうすれば空間はまるで悲鳴を挙げる女性のような音を立てて震える。


 それを見たラウムは、ドラゴンの姿でも人型の時と同じように目を見開き驚いた様子を見せた。


 たまたまではないと証明するために、次の塊へと近付き斬り裂いてやれば、やはり再び悲鳴を挙げる女性のような音が鳴り空間が震える。


 2回もやれば確信したのだろう、次へと向かおうとすれば、何も無い所や死角から魔法が飛んでくる。

 それを時には斬り裂き、時には殴り、時には掴み、時には投げて凌ぎ、投げる時は必ずラウムへと投げた。



 「『よもや、既にこれほどまでに到っていたとは……』」



 ラウムがそんなことを溢す。しかし、俺から言わせてもらえばそんなことを悠長に言っていて良いのかとどうしても思ってしまう。


 何より簡単過ぎた。もはや作業だ。

 だから更に難易度を上げるために、挑発する。



 「そんな暢気していて良いのか空間のラウム。

 貴方はこの空間を攻略しろと言った。そして俺のやってることを見れば、最後がどうなるかなんてわかりきっているよな?」


 「『なっ?!それだけはさせんぞサース・ハザードッ!!』」



 飛んでくる魔法は急に苛烈さを増し、明らかに魔法の核を潰さねば死にかねないレベルの魔法の壁が四方八方から俺を襲う。


 それに自然と口角が上がり、腕輪の中の魔力までもを使って自分の周囲半径10メートル以内に魔力を垂れ流す。


 現在展開されているラウムのこの魔法には核となる魔力の塊が複数有る。この魔法を成立させる上でその重要度が高い塊ほどその空色の塊は光を放ちより濃くなる。

 その塊の中に、他の核とは違い明らかに魔力で強化せずとも見える物が有る。ラウムの角とラウムの顎だ。

 特に顎の方が濃く光は眩しいぐらいだ。弱点を曝すなんて、マヌケと言わざるを得ない。


 そしてその顎にせよ角にせよはラウムにとって、恐らく竜にとってとても大切な部位なのだろう。だから攻撃が苛烈になったんだろうな。

 自分の考察が合っていたことと、その余りの慌てっ振りに思わず笑ってしまう。

 だから、その苛烈な攻撃を一先ず凌ぐために溜め込んでいる魔力を解放した。


 そうして、その範囲に入った魔法で対処が間に合いそうにない魔法には魔力球を飛ばして勢いや破壊力をある程度殺いでから盾にした柄で防ぎ、それ以外の対処出来る魔法については大刀で悉く斬り裂いた。


 互いに譲らない攻防とはこういうことを言うのだろう。

 しかしいつまでもこうしていて、絶対に先に力尽きるのは俺だ。

 だから、次の手段を塊へと近付きながら防ぎ斬り伏せ、加速しきった思考を更に働かせてどう攻略するかを考えることにした。



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