▼side Another act4:「つまらない」
図書館へと赴き、管理者に挨拶と童謡などの物語系の置かれている場所を尋ねたサースは、紹介を受けた場所へと行き、適当に何冊かを手に取って近くの適当な椅子へと腰掛けた。
パラパラとページを捲り、内容に目を通し、目から入ってくる情報を頭の中で変換し咀嚼する。
その作業をわずか十数分で国語時点の半分ほどは有る作品を1冊読み上げたサースは、本が痛まない程度に乱雑に机の上へ置き、椅子の背凭れへと体を預ける。
「つまらない」
話の内容…に対してではなく、そもそも学術書以外の本全てへの感想を述べたサースは、ボォーッと図書館の天井を見つめた。
そして読むのに掛かった時間と同じかそれ以上か経った頃に取り出した本全てを本棚へと戻し、図書館を後にしようとする。
「キサマがサース・ハザードか?ハッ、学年1位様は余裕だな」
その時、サースがまさに図書館に残された足を踏み出そうとした時、彼の耳にそんな声が届いた。
反射的に立ち止まり、後ろへ振り返ったサースの視界に入ったのは、図書館に入った時には居なかった初めて見る生徒だった。
服装はラフな物で、貴族などのお金持ち達と違い装飾の無いTHE・平民といった格好の男子生徒で、歳もサースと変わらないように見える。
しかしそれを認識しただけで、ただ自分への嫌味を溢しただけだろうとサースはそれ以上その生徒に関わる気は失くなり、止めていた足を進めるべく体を再び図書館の外へと向けた際、またも声を掛けられた。
「ハッ、学年1位様は自分以下の人間とは関わる気は無いってか?お高く止まりやがって、何様のつもりだよ?
…………あー待て!俺様が話し掛けているだろう!無視をするな!!」
無視をして街にでも行こうかと考えていたところで、自身へと近付く小走りのような足音で二度足を止め、改めて後ろを振り返る。
振り返ったサースの目の前では、先程の生徒が苛立たしげに額にシワを作り、腕を組んで組んだ手から見える指をトントンと貧乏揺りのように忙しなく動かしていた。
「なんだ?」
「なんだとはなんだ。俺様の貴重な時間を使ってキサマの相手をしてやっているのだろう!むしろ感謝しろ!!」
「そうか」
コイツは何がしたいのだろう。そんな疑問が浮かび上がるサースだったが、経験から酔っ払い共のようなただのうざ絡みだろうと高を括り、今度こそ去ろうとした。
しかしその肩に手が置かれることで、三度去ることは叶わなかった。
「……お前、友人も居なければこの学園の内外問わず話す相手居ないだろ。いったい何がしたいわけ?」
「なっ、ななな、なぁーに言って証拠って話だ!!」
「動揺し過ぎだ。本当になんの用だ?幸い今日は暇してるから単刀直入に話すのなら相手してやるから、さっさと用件を言え用件を。
さっきまでの意味の無い言葉を繰り返すようなら今後は一切無視するからそのつもりで」
サースの言葉に鳩が豆鉄砲を喰らったようなアホ面を晒す男子生徒だったが、サースの言葉と彼の心底めんどくさそうなカオを見て、湧き上がって来た数々の言葉を飲み込んだ彼は、1度深呼吸した後こう発した。
「俺様の名前はウィリアム・パリス様だ!!」
その名乗りで、サースは早くも話を聞く姿勢を取った事を後悔した。




