「お茶、ご馳走さま」
今回、残酷な描写を表現する言葉が多々含まれます。
ご注意ください。
「と言ってもやってることは単純だ。死ぬ寸前まで追い詰められて、回復してもらって、今の自分の実力に合った敵と戦う。これの繰り返しだ。相手が弱ければ自分に何かしらの縛りを設けて戦う。魔力を使わないとか、逆に魔力だけで戦うとかだな。
俺の最近の修行内容はそんな単純の繰り返しだ」
「そんな単純の繰り返しって……」
息を飲む、言い換えるなら絶句する声が耳に届く。
発したのはストゥムだった。対照的にレオポルドは腕を組んで何かを考えている様子だ。国風も思えば俺の戦闘へ掛ける意気込みはマハラ帝国寄りだ、何か思うところが有るのかもしれない。
案の定、神妙な面持ちでレオポルドは「具体的には?」と聞いてきた。
「先週の、アイツの回復魔法は見たと思う。アイツは死んでいなければそれが生来の物でない限りどんな傷も癒すことが出来る。
だから何度も殺され掛けたんだよ文字通りな」
「……どういう意味だ?」
「腕や脚が失くなった。腹は当然、胸や首や頭に穴が開いた。眼なんて当然何回潰れたかわからない。肺を焼かれた。筋肉を残して骨を溶かされた。目の前で心臓を抜き取られたし、その心臓をただ嫌がらせの目的の為だけに喰われたこともある。食人と言えば切り落とされた腕や脚を焼いたり味付けなんかして無理矢理口の中へ入れられたこともある。
それは学園やギルドのあの闘技場のような場所だったり、時には街だったり村だったり、野だったり洞窟だったり湖の畔だったり、荒野で、岩場で、水中で、空中で、森の中で。ありとあらゆる場所で戦えるよう、ありとあらゆる場所で何度も死を経験した。
そうやって死に掛ける度にアイツは俺に近寄り、俺を治し、休憩挟まず次を部下に命じた。
時には何の説明も無く、興が乗ったただそれだけの理由で魔法の弾幕を俺が対処出来るギリギリで撃たれ続けた。
放課後はアイツの待つ場所で永遠とアイツと模擬戦をし続ける。
休日はアイツの部下に殺され掛けるか、最近はアイツの見つけた訓練施設のような場所でアイツの力を借りずに命懸けで生き残る。
これをお前等と会う1ヶ月前から俺はやってる。命懸けで鍛えるってだけなら既に9年間続けてる。
どうだ、満足したか?」
とは聞いたものの、当然返ってきたのは沈黙だけだった。
当然だ、端から見たらただの狂人だし、最高にイカれてる。
だから続く言葉はわかりきってるため、最後にこの言葉を付け足す。
「そこまでやってでも俺は成し遂げたいことが有る。レオポルドとイリコスには既に言ったよな」
最後の言葉を付け足し、彼等の反応を待たずに立ち上がる。
少なくとも今これ以上彼等と話すのは時間の無駄だ。
「じゃあなレオポルドにストゥム、また学園で」
お茶、ご馳走さま。そう言って俺は店の外へ出た。そして路地裏へと足を運び、そこで廃城へと転移した。




