プロローグ
【神話歴前10年──魔なる獣達が活発になり始める。】
【神話歴元年──英雄フォルティス誕生。神話の始まりとも呼ばれる年であり、後の英雄フォルティスの意志を継ぐ者達がこの一連の時代を神話歴と名付ける。】
【神話歴12年──この頃から英雄フォルティスが頭角を現し始め、『人類の希望』と当時の人々から賞賛され始める。】
【神話歴13年──英雄フォルティス、各地を回り、危機に瀕する人々をその力で救う。】
【神話歴14年──この年に人類の裏切り者サース・ハザードと魔王マクスウェルが邂逅していたと後の記録により明らかとなる。】
【神話歴16年──明確にサース・ハザードは人類を裏切り、魔王マクスウェルの甘言に乗って魔王マクスウェルと共に人類を脅かさんがため魔なる獣を使い人類を次々と殺して回る。】
【神話歴17年──人類は着実に数を減らされ発狂する者も居る中、英雄フォルティスと彼と志を共にする後の英雄フォルティスの妻となる聖女ヒーアと英雄フォルティスの師であるソイロックの奮闘により被害は徐々に落ち着いて行く。】
【神話歴18年前期──英雄フォルティスとその仲間達の活躍により、人類の裏切り者サース・ハザードは討たれる。彼を惑わし甘言により彼の人としての在り方を歪めたマクスウェルは英雄フォルティスに畏れをなし、魔王の本拠地である魔界へと逃げ帰る。】
【神話歴18年後期──地上の状態を憂いた絶対神が魔術神スァースァ=ズゥアーダと天使を遣わし、魔術神スァースァ=ズゥアーダは人類に魔術を与え、天使は人間では考えられない力を用いて復興の手助けを行い、人類の復興を導く。】
【神話歴19年前期──英雄フォルティス死去。サース・ハザードとの戦いにより生命力を相当消費しており、復興の目処が立ったところで19年という短い生涯を終える。】
【神話歴19年後期──英雄フォルティスと聖女ヒーアとの子供が生まれる。英雄フォルティスの才能を余す所無く受け継いだかのように聡明であり武を示したとし、神子として崇められる。】
【神話歴25年──絶対神が遣わした魔術神スァースァ=ズゥアーダと天使が人類はもう大丈夫だと人類に人界を任せ天界へと帰還する。】
【神話歴30年──当時動物の特徴を有した人型で魔なる獣である獣人と呼ばれた種族と魔に長けた耳の長い人型の魔なる獣が人類を滅ぼそうと侵攻を開始する。生存競争という名の戦争が始まる。】
【神話歴35年──神子が人類の代表となり獣人達と耳の長い人型の魔なる獣達の侵攻を齢15ほどでその武勇により膠着状態へと持っていく。】
【神話歴40年──神子の出陣から5年の月日を経て人類は勝利し、人類が事実上の地上最強の種族へと到る。】
【神話歴50年──生存競争の戦争により疲弊した人類は再興を果たし、新たなる始まりとし、この60年を神話歴と名付け記録し、人類だけの新たな西暦を英雄フォルティスの名から取りフォルティス歴と定める。】
【フォルティス歴元年──神子はオールと名乗り始め、偉大なる父と己の名を冠するフォルティオール王国を建国する。】
【フォルティス歴2年──人類の生存圏を拡げるため、かつて存在していた──────】
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「さて、読んでわかる通り、この世界の歴史には『神話歴』なんて本当に存在したのかわからない年号が存在する。ただフォルティス歴というのは今の西暦になる直前の2000年も続いた年号だ。
この時代について様々な学者が頭を悩ませてるが、通説とされてるのがこの年号だ。フォルティス歴末期の書物がいくつも見つかっているためこの神話歴というのは実際に有ったと考えられる。だからこれが一般的な常識とされているから、明らかに作り話だと思ってもこれで覚えるように。
ちなみに俺は一切信じてない!」
教壇に立つ歴史の先生があんまりなことを気持ちの良さそうな笑顔で言う。
それをマスクの下に口を開けたアホ面隠して眺めながら、ゆっくりと視線を落として今説明された教科書の『神話歴』を見る。
昔から神話とか所謂『紀元前』の話が好きだ。現代の若者風に言うなら二次創作やサブカルチャーの部類の話を妄想するのが大好きだ。
だから神話とか紀元前の話とか、当時の様子を想像してどんな暮らしだったとかどんな生き物が居たとか考えるのが大大大大大好きだ。
当然この神話歴についてもこうやって学ぶ前から何度も町の図書館とかで調べたりしたことが有る。
ただ調べれば調べるほど、内容がファンタジーによってしまう。だから今歴史の先生が言ったみたいにこの神話歴は胡散臭い歴だと言われている。
でも先生が言ったみたいにフォルティス歴事態の存在は確認されてるから、そのオマケで記録されてる年号。フォルティス歴の前身として記録だけ残されてる。
ただまぁこの神話歴、実はこうやって記録されている理由がもう1つ有る。
それは、実際に当時の物と思われる手記が残されているんだ。しかも一切経年劣化すること無く。
でもその手記を書いたとされる人物が問題なんだよね。
その手記の書き手は神話歴に於いて人類の裏切り者であるサース・ハザード。どうやらこの経年劣化もしない手記は、彼が書いたものらしいんだよね。
じゃあ経年劣化もされていない実物が存在しているならそれが歴史の事実じゃん!となるのが普通なんだけど、書かれてる内容が内容だけに、この神話歴が胡散臭いと言われる要因に拍車を掛けてる。
教科書の年号に合わせて言えば、どうやらこの手記は神話歴16年頃~神話歴18年前期頃に書かれた彼の人生を描いた自伝みたいなんだけど、なんと言うか、内容がとにかく思春期の我の強いガキ大将の自語りみたいな内容なんだよねぇ……。
最初は英雄フォルティスへの嫉妬や殺意で一杯で、読んでるこっちがしんどくなる。初見だと絶対メンヘラ構ってちゃんかよってなる。
ただ魔王マクスウェルと出会ったであろう頃から、その内容は徐々に内面の成長を感じられる内容になるんだけど、まぁ書かれてることが厨二病なんて呼ばれる思春期の妄想全開みたいな内容で、何処から何処までが事実かわかったもんじゃない。
彼のこの手記によって胡散臭さに拍車を掛ける神話歴は、でも1つだけ謎というか、純粋にサース・ハザードの視点だけで考えればおかしな点が有る。
実はこの手記はサース・ハザードが死んだ後のことも記されてる。
冷静に考えればその死後の内容を書いたのは魔王マクスウェルだと予想される。だけどその筆跡はサース・ハザードの物で、そこで語られる心理描写なんかもまるで死んだ筈のサース・ハザード本人のように続きが記されてるんだよね。
だから現実的に考えれば有っても無くてもあまり変わらないとされる神話歴だけど、そういった謎からこの時代のことを研究する学者も居るから歴史書の一部に載せられてるんだよね。
この神話歴、そしてフォルティス歴は、他にも様々な所に影響を及ぼしてる。
例えば手記の書き手であるサース・ハザード。彼の存在は、確かに人類に多大な影響を及ぼした。人類が激減するようなことを起こした訳だし、当時の規準で考えれば彼のやったことは災害と変わらない。
だから災害という言葉はハザードと呼ばれたりもする。それにサイスって言葉が有るんだけど、このサイス、サース・ハザードのサースが語源になってて、災害=命が失くなる。その諸行がまるで命を刈り取ってるみたいだ、=連想で鎌。だから鎌は別名サイスって呼ばれてる。本来は農具の筈なんだけど、それを人に使った危ない人が居たらしい。その様子が、まるで命を刈り取ってるみたいだって昔の人が感じて、つまりサースだって言われるようになった。それが時を経てサイスになったってわけ。
こじつけもいいところだけど、そんなこじつけが生まれるぐらいにはサース・ハザードというのは僕達人間にとって悪い物って認識になったんだよね。
親の躾にも「言うこと聞かないとサース・ハザードが鎌を持って襲いに来るよ」とか言われるぐらいには浸透してる。
例えば魔王マクスウェル。彼は確実にサース・ハザードを味方に引き込み人類を裏切らせた張本人だろう。サース・ハザードが力を望み、実際に力を与えることで己を信奉させて、世に不信感を抱かせた。それはまるで、小さなことを吹き込み常識という大きなことを排斥するかのよう。
マクスウェルの悪魔と呼ばれるマクスウェルって物理学者が提唱した思考実験と似てる部分が多く有るから、実はこの物理学者マクスウェルは魔王マクスウェル本人なんじゃないかとか、そういう陰謀論を生んでる。色々とこじつけが凄いと思う。マクスウェルさんは一切関係無いのにね。たまたまマクスウェルって名前だっただけにそんな疑いを掛けられて、生き難かっただろうな……。
例えばスァースァ=ズゥアーダ。なんか音がサース・ハザードと似てるけど、神話歴に於いて彼の御柱は大きく人類が自分達で立って歩いて行けるよう尽力したと語られてる。
ただ魔術なんて現代には無いから、そもそも本当に存在したのか、天使も本当に存在したのかは不明だ。当時の人々が再興の際に心の拠り所にしていた偶像の神と神の遣いがこのスァースァ=ズゥアーダと天使だと考えられてるのが通説だ。
そしてこの神話歴を語る上で絶対に外せない存在、英雄フォルティス。
サース・ハザードの手記によれば勇者とか呼ばれてたみたいに書かれてるらしいけど、実際はどうなのかは定かじゃない。ただ実際に魔王は存在しているとされてる訳だし、魔王を討ち倒すのは勇者の役目だ。だから彼が勇者と呼ばれてるのにも納得が行く。
ただ彼についてもサース・ハザードの手記を規準にすると、どうやら魔王マクスウェルの妹に体を乗っ取られていたとか、そんな荒唐無稽なことが書かれてる。そもそもこの神話歴の問題の発端は、その魔王マクスウェルの妹が原因だと記されているけど、通説での彼の活躍を思えば彼の株は上がれど下がることは無いだろうし、その後の発展についても魔王の妹なんて存在は妄想も良い所で、存在すら確認されていない訳だから妄言だと判断されている。
とまぁ、とにかくこの神話歴とサース・ハザードの手記については胡散臭いとしか言いようが無い。中学生の書いた自分を主人公にした創作物として、人類最古の創作物として文化的価値しか無い。だからこそこの神話歴の存在が怪しまれてる。
サース・ハザードの手記だけじゃなくて他の記録が残っていたり、もしくはそもそもサース・ハザードの手記すら遺っていなければこの神話歴の信憑性はもっと高かっただろうに。
サース・ハザードという存在は、後世に於いても人類に迷惑しか掛けないらしい。
もし彼が何か活躍したと言えるとしたら、この妄想全開の手記を遺してくれたおかげで、サブカルチャーの幅が大きく拡がったぐらいかな?
実際魔術神スァースァ=ズゥアーダを主人公にした二次創作とか、聖女ヒーアを主人公とした英雄フォルティスとの恋愛創作とか、ソイロックの英雄フォルティスとの信頼か聖女ヒーアへの恋慕かの葛藤を描いた友情作品とか。他にも色々な創作物がこの神話歴から生まれてる。
僕も暇な時や空いた時間には大変楽しく読ませてもらってる。
そう、耳の長い人型の魔なる獣は今じゃエルフって呼ばれてるし、獣人達なんか今じゃ癒し枠として色んな創作物に出てくるし、手記に記された呼び名と特徴からファンタジーの鍛冶ならドワーフ!みたいに、サブカルチャーの分野に於いてだけはサース・ハザードの手記は多大な貢献をしてる。
でもやっぱりしつこいようだけど、彼の遺した手記が生むのは混乱か胡散臭さが主流だ。それが世間の評価だ。
だからそこに学者が生まれる訳だけど、頑張ってる人達には申し訳無いけど時間の無駄にしか思えない。
歴史の先生も概ね俺と同じ意見だ。今も年号に触れてからはサース・ハザードをこれでもかと痩け脅してる。
そして生まれるのは笑いだ。勿論僕も笑ってる。
神話歴、そしてサース・ハザードとその手記。これ等は嘲笑の対象であり、困った時にはこの話を出せば笑いを取れる、そんなコンテンツの筈だった。
筈、だったんだ……。
突如地震が僕達を襲う。
後から知ったけど、この地震は世界中で起こり、そしてこの後に人類が聴いた声は、全世界の全人類が聴いた。
『本当に、度し難い世界になったんだね……。
じゃあ良いよ、わかった。望み通り、君達が語る悪の親玉として、4000と80年振りに地上に出てやる。そして侵攻してやろう。
今を生きる全人類に魔王マクスウェルが宣戦を布告する。
俺達の献身を、俺達の苦労を、そして何より俺の生涯唯一無二の親友の名誉と尊厳と献身を!何もかもを無碍にし続けて来た君達下等生物共なんか滅びてしまえば良いんだッ!!』
その声は、新神話歴の始まりであり、最新の聖戦の始まりを告げたんだ。
これにて『魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺』完結となります。
如何だったでしょうか?
この作品は私が高校3年生の頃にとある作品へのリスペクトとその作品の続きが読みたいという想いで書き始めたのが始まりです。
当時想定したいた内容とは大きく変わりましたし、本当に大筋をなぞるように書いた作品となりました。
色々と思う所は有ります。
そしてこの作品への想いを語りたい気持ちも有ります。
ですがそれはここで書くことでは無いと思うので、あとがきという名のネタバラシは私の活動報告の方で語ろうかと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
このあとこの作品に於けるエピローグや後日談なんかをこれまでの幕間のように書いて行こうかと思います。
そちらも毎日投稿です。
それでは改めてここまでお付き合いいただきありがとうございました。
もう少しだけお付き合いいただけると嬉しいです。
そして感想なんかを書いてくださると更に嬉しいです。
『作者への誹謗中傷』以外の作品へのダメ出しでも良いですし、「ここが面白かった!」「この戦いが熱かった!」のようなものから、「乙」みたいな一言一文字だけでも嬉しいので、お手間かと思いますが書いてくださると幸いです。
それではこれにて本編完結です。
ありがとうございました。
この作品はノーマルエンドという名のIfエンドです。
トゥルーエンドという名の正史はカクヨム様の方で投稿しております。
第五章:強化期間・後編から分岐しております。よく読むとなろう版と比べて所々に違いが現れています。
気になる方はカクヨム版の方も気に掛けてくださると大変嬉しいです。
それでは今度こそ、失礼します。




