▼side Another act3:理性を残されたかった者達Ⅱ
ラズマリアの様子から、どうやら土帝と水帝への認識はペット枠らしい。それも自分では何も出来ない生まれたての雛鳥等と同じ認識なのだろう。
辛うじて人間は生肉を食べるとダメということを経験で覚えた。それは彼女自身の経験であり、土帝や水帝に"エサ"を与えた時の経験からだった。
だからこそ用意した肉を焼く訳だが、どうやら換気の良い所じゃないと煙の問題や人肉を焼いた時の異臭への知識は身に付かないらしい。
一頻り焼き、持って来た時のように鷲掴みにしてそれぞれの口へと押し付ける。
押し付けられたことで本能的と刷り込まれた反復行動により口を開き、肉を噛み千切り、噛み砕き、咀嚼する。そして飲み込む度に嗚咽をし、その瞳から涙を流し、ゾンビが吐き出してそうな臭そうな噯気を出してまた肉を噛み千切る。
涙を流すのは微かにでも残った彼等の人としての矜持故か、連綿と受け継がれた人間としての矜持故か、それともその両方か。
そんなこと、全くどうでも良いラズマリアは、自分の都合でその涙を解釈する。
「泣くほど美味しいか、そっかそっかー」
ラズマリアは本当に楽しそうに、自分のことのように愛おしそうに笑顔を浮かべ、彼女的に2人の世話をする。
垂れ流された糞尿と処理されなかった間に発生した細菌を破壊することで掃除を行い、2人の頭を撫で、自身も服を脱ぐ。
「さぁ、ご飯を食べたら運動だよ!」
そう言って、再び地獄が始まる。
一通り終わったあとは、また色々と破壊による処理を行って、彼女は部屋から出ていく。
「じゃあママは寝るね、おやすみ。良い子にしてるんだよー」
返事は無い。しかしラズマリアは満足そうに扉を閉め、自室として改造した旧ギルドマスター室のベッドの中へと潜り込んだ。
元土帝と元水帝だった、元人間であった2人は、サース達とラズマリアの戦いの決着がついたその後も、2度と人間に戻ることはなかった。
果たしてそれは、幸なのか不幸なのか。




