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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第十一章:やり残したこと
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名無し


 「人族の方、早とちりをしてしまい大変申し訳ございません」


 「サース、俺もごめん。こんなことなら最初から話しておけば良かったね」



 親子2人に謝られた。その困った顔は、確かに血の繋がりを感じさせるには十分なほど似ていた。


 魔王の母親の絶叫で発生した衝撃で飛ばされることはなかったが、着ていた服に大きな穴が空いていたこともあって上半身の服は完全に飛び去ってしまった。


 ルーンドゥルは縦に3回転ほどして顔面から落ち、そこから未だ起き上がっていない。

 彼を治療し終えた魔王は、次いで俺の治療も行った。その間、絶叫した本人は茫然自失といった状態で魔王のことをずっと目で追っていたが、俺と魔王のやり取りで俺達が親しい間柄ということを察したらしい。直ぐ様目に涙を浮かべて謝ってきた。


 それを一旦保留にし、俺と魔王のこれまでと、ここに来た経緯を改めて説明した。

 魔王の母親の顔色は、それはもう面白いほどに赤に青に白に茶色に変わり、飽きないものだった。


 そうして全ての話が終わった直後の謝罪がさっきの謝罪だ。

 魔王が謝ってきたのは……魂の件だろうな。恐らく。



 「謝罪は受け取った。もう良い。

 改めて、人族のサース・ハザードだ魔王の母親。気軽にサースと呼んでくれ。 それで、俺はなんて呼べば良い?」



 すると、2人は困ったカオをしてお互いの顔を見合った。それだけで、何故2人がそんなカオをしたのか察しがついた。



 「すみません。粗相しただけでなく名乗っていただいたのに、私には名乗る名がございません。今仰っていただいた『魔王の母親』で間違いはありませんので、そう呼んでいただければと思います」



 返ってきた言葉に、やっぱりかと溜め息を吐きたくなった。


 ただ、こうも考えられると思った。

 それだけこの親子はこの天界で絶大な力を持っているのだろうと。


 アンガルミアには名前が有る。

 ルーンドゥルにも名前は有る。


 だが魔王には名前が無い。

 魔王の母親にも名前が無い。

 そして確か、本人はリコと名乗っていたが、前任のエルフの郷の王も名前が無かった筈だ。


 こうやって来ると、世界規模で強い存在というものには名前が無いのかもしれない。

 そう考えると、不便ではあるが、下手に名付けなんてしない方が良いのかと思えてくる。


 まぁ、そこについては追々考えよう。



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