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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第三章:亀裂
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「止めてくれ、鳥肌が立つ」


 それからまた1週間が経ち、また俺は外泊の手続きをしていた。魔王にダンジョンに潜ると言われたからだ。

 この1週間は新しく手に入れた道具や武器の使い方をとことん試した。大刀の使い方についてはサタンが教えてくれた。どうやらサタンは昔、刀って武器にハマっていたらしく、大刀の使い方についても熟知しているらしかった。まだ10日も経ってないが、サタンから「俺より様になってる」と言われたため、まぁ実戦で使える程度の及第点は貰えたようだ。



 校舎から寮へと帰って来て届出を出す時、先週の転移の件とクソ野郎に向けて魔法球を食堂で放った件について寮長に怒られた。それはもうこっ酷く怒られた。次やったら学園の行事ややむを得ない事情以外での外泊を卒業まで今後一切認めないという罰も説明された。

 長く時間を掛けるのも勿体無いし、何より規則を破ったのは俺なため粛々と聞き入れて、説教が終わると同時に部屋へと急ぎ、学園に持って行ってる物を部屋に置いたあと戦闘用の服や装備に着替えて寮の玄関から外に出る。


 出た時、ちょうど寮へと帰って来る一団と出会した。

 今週始めの朝に俺を食堂で囲んだ面々だ。

 何を言われるか当然理解しているため軽く手を挙げての挨拶だけに留めて学園から早く出ようと駆け足になる。しかしやっぱりというか、見事に道を阻まれた。



 「あー、一応確認だ。通行の邪魔だぜ?」


 「もちろん承知の上だともサース。そしてそれをわかった上で僕達が君の行く手を阻んでいることも理解しているだろう?」


 「勘違いであってほしかったな」



 大袈裟に頭を垂れて落ち込んでますアピールをする。

 そして顔を上げたと同時に戦闘用の意識へと切り替えて奴等を見る。



 「で?何をしたい?」


 「サース、僕達と1度戦ってみてくれないか?」


 「……なるほどそう来たか」



 代表して喋ったストゥムの言葉を租借する。

 戦う。それはどれだけ相手が強くても、どれだけ相手が弱くとも、確実に俺が強くなる上で必要になってくる行動だ。

 つまり奴等の中で、俺を止めるには直接戦わないと言葉が届かないとかなんとか、そんな結論が出たのだろう。


 なるほど。なるほど。



 「ルールは?そちらの要求は?それ次第では戦ってやらんこともない」


 「ルールは僕達と1対1で戦うこと。命を奪うような大怪我をお互いにさせないこと。有効打が入ったと審判が判断すればその時点で決着。代わりに得物は真剣だ。


 こちらからの要求は、君の目的を洗いざらい全て話した上で2度と今やってるような無茶をやらないこと。これだけさ。

 どうだい?君も勝った時の要求は好きなようにしてくれて良いよ。当然僕達1人1人に対してだ」



 周りの奴等を見てみれば、全員がストゥムの言葉に納得しているようだった。


 なるほど全部折り込み済みか。



 「ルールに訂正だ。俺が1人で戦うのは当然だが、お前等は全員纏めて掛かってこい。そこまで追い込まれないとお前達と戦う意味が俺側に無い。


 代わりに俺が勝った時の要求は全員同じにしてやる。

 2度と俺の目的や周りを詮索するな。

 疚しいことは無いが、明け透けに言いたくないこともある。それを何度も聞き出そうとしたりこうやって無理矢理にでも聞き出して止めさせようとしてくるんだ、それぐらいは呑め。呑めないなら戦わない。


 そして戦うのはこれからだ。

 俺はこれから師に連れられてまた泊まり掛けで修行する。その時間をこれ以上取られるのは俺にとって時間の無駄だ。

 場所は……ギルドにしよう。エンラジーの身内は帝なんだよな?ならそのコネ使って場所と人員を確保しろ。それが出来なきゃ、この話は無しだ。


 この条件ならお前達の話を呑もう」


 「だってさ。君達、構わないよな?」



 ストゥムの言葉に全員が頷く。

 それを確認してから、俺は奴等に告げる。



 「そうと決まれば、俺は待たせてる師にこの事を伝えてくる。伝えたあとはギルドで待ってる。

 その間、お前等は戦う準備や場所や人員の確保に勤しめ。


 そうだな…、今から一刻ほど後にギルドの入口で落ち合おう。

 そういう訳だ、そこを退け」



 実際に退く退かないを無視して押し通り、学園の敷地外に出たと同時に俺は魔王の待つあの廃城へと転移した。


 転移すると、案の定魔王が玉座に座っていた。

 俺が話すために近付いていると、「見てたよ。面白そうなことになったね」なんて返して来る。



 「何が面白そうだ、俺からしたら迷惑も甚だしいんだぞ」


 「それだけサースが彼等に愛されてるってことなんじゃないかい?」


 「むしろアレは、俺がアイツ等の思う魔族と繋がっているかどうかの確認だろ。要するに異端審問ってヤツだ」


 「おいおい、大切な友だちだろう?そんな邪険に扱っちゃ可哀想だぜ」


 「俺に友だちなんて居ねぇよ。別に要らねぇし」


 「友だちなんて居ないなんて酷いなー。俺はサースの友だちじゃないのかい?」


 「アンタは友だちじゃなくて同盟者って感じだ」


 「やれやれ、いつになったら心を開いてくれるのかなサースは」


 「……俺にしてはアンタにはかなり心を開いてるつもりだけどな」


 「だったらもっと心を開いて、お互いに気安くあだ名で呼び合うような関係になりたいね!

 そうだ、いつまでも魔王じゃ周りに人界の人達が居る時に困るし、俺の表向きの名前を決めようよ!」


 「必要ないだろ。それでももし本当に必要なら普通に名前を名乗れば良いじゃねぇか」


 「あれ、言ってなかったっけ?俺に名前はないよ。生まれてこの方、親にも名前を呼ばれたことはない。

 坊やとか息子とかクソ兄貴とは呼ばれたこと有るけど、別に固有名詞じゃないし、魔界に着いてからはずっと魔王さ」



 思わず口を噤む。そういえばそうだった。魔王に魔王以外の呼び名がなかったのをすっかり忘れてた。

 自分の失態に居たたまれなくなり、頭をガシガシと掻く。


 そうだよ、コイツたまにこういう重いことをシレッと何事も無いように言うんだよ。もっと殺伐としたことの印象が強過ぎて忘れてた。



 「あー、じゃあ、マークンなんてどうだ?魔王のマを伸ばして君を付けただけだが、名前っぽくもなってるし、偽名としてはちょうど良いんじゃねぇか」


 「マークン……、良いね。じゃあ俺の名前は今日からマークンだ!

 名付け親はサースだね!


 ……俺はサースのことを、親しみを籠めてサー君とでも呼ぼうか?」


 「止めてくれ、鳥肌が立つ」


 「いつか気軽にマー君サー君と呼び合える仲になることを俺は願うね」


 「そんな願い捨ててしまえ」



 それから魔王と時間ギリギリまで準備運動も兼ねて戦い続けた。




 一刻=約2時間です。



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