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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第十一章:やり残したこと
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名前


 思いがけない惨事を受け流し、静かに魔王の後ろを着いて歩く。


 門を潜った直後の惨事に思わず言葉を発したが、そもそも門を潜った所から場の空気が変わっていた。

 例えるのならダンジョンのボス部屋。

 例えるのなら魔王と邂逅した時。

 例えるのなら、



 「俺はあまりそうは感じないんだけど、外から見たらかなり物々しいらしいね」



 圧倒されていると魔王が口を開いた。

 感じ的に、静かなのが堪えられなかった訳ではなく、こちらを気遣ったような声色だ。



 「物々しいというか、厳かというか。 まぁ、そうだな。空間そのものが静かな圧を出してるみたいだな」


 「その理由はもちろんここの奥で好きに過ごしてるヤツが原因だね。基本アレ、俺達のことを気遣ったこと無いから」


 「…………。 その『ヤツ』とか『アレ』とか呼んでるのって、いったいなんなんだ?」



 前々から魔王は何度かその存在について口にはしていた。その度に悪態を吐くものだから、流石にその存在の住まう場所に居るんだ、聞かずにはいられない。


 魔王は苦虫を噛み潰したような本当に嫌そうなカオをすると、溜め息1つ吐いた。



 「さっきルーンドゥルが言ってたこと覚えてる?」


 「……あぁ、この天界で男に生まれたのならってヤツか」


 「そうソレ。サースに分かりやすく言うと、エルフの郷の前任の王がこの奥に居るアレで、当時のガレリアの立場が俺って言えば伝わるかな?」


 「それ、は……」



 それは……、それはあまりにも惨い話過ぎないか?


 ……あぁ、だからか。



 「だから魔王は魔界の王に成ったんだな」


 「そういうこと。その内魔界の成り立ち詳しい話をしてあげるよ」


 「……楽しみにしてる」



 思ってた以上に残酷な話だった。

 だからアンガルミアも、後ろのルーンドゥルも、魔界の奴等も、誰も魔王のことを名前で呼ばないのか。

 そもそも生まれた瞬間から魔王には名前という固有名詞を持つ必要は無く、それは今でも『魔王』という立場が彼を指す言葉になるから名前そのものが必要無かった。そういうわけだ。


 …………。



 「なぁ」


 「何?」


 「前に仮名でマー君って呼び方の方が良いとか言ってたよな?」


 「あー、別に無理する必要無いよ?それはただの、俺の我が儘だからさ」


 「それでもだ。名前、考えとく」


 「……そっか。ありがとう。楽しみにしてるね」



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