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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第三章:亀裂
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「なんだと思う?」


 翌朝、普段通り起き、一通り朝の行動をしてから食堂へ行き朝飯を貰う。


 食っていると、目の前の席にレオポルドとイリコスの2人が座った。

 意図を察し内心少し憂鬱になりながら、話し掛けて来ない限り反応しないことにする。


 とか考えていたら、今度はストゥムとチャーラルが座る。俺を両脇から挟む形で。


 そして最後にエンラジーまで現れ、俺の近くの空いた席に座った。

 お前等完全に狙ってやっただろ。


 最初に話し掛けて来たのはレオポルドだった。



 「サース、一昨日振りだな。今回の修行はどうだったのだ?」


 「雁首揃えておいてその言い草はねぇよレオポルド。何を言いたい」


 「本題に入る前に世間話をするのは時には大事な事だと思うのだがな。

 お前がそう望むのなら望み通り本題に入ろう。


 お前の師匠。アレはなんだ?」



 言うに事欠いて「なんだ」か。まぁ、今の俺でも魔王との差は生物の枠組みを超えているところだから気持ちがわからないことはない。出会った頃なら尚更だ。その結果死に掛けているわけだし、つまり俺を運んだ時に魔王は姿を学園の生徒や教師に見せたってことなんだろう。

 それで魔王の正体を知りたくて朝から詰め寄って来たって訳だ。


 朝から嫌な気分になりそうだな。

 適当に流すか。



 「なんだと思う?」


 「おいハザードはぐらかすな。我々が聞きたいことはわかっているだろう。誤魔化すな」



 イリコスがなんか言って来たけど、まぁ無視しよう。一昨日アレだけしっかり詮索を拒絶しておいたのに聞いてきたんだ、答える義理は今のところ無い。



 「一昨日、獣人族の奴等で俺を囲んで色々聞き出そうとしていたけど、その時俺はハッキリと詮索を拒絶していた筈なんだがな?なんでそこまで踏み込んで来るんだマハラ帝国の方々」



 敢えてお前等の態度は国としての態度だと指摘してやる。つまり『なんで仮想敵国の奴等に情報を漏らさないとダメなんだ』ってアピールだ。


 そうすると、ほら。イリコスは今にも掴み掛かって来そうな勢いで体に力を入れたみたいだが、それをレオポルドが防いで首を振る、なんて茶番が始まった。


 そんな彼等を無視して食事を続けようとすれば、今度はエンラジーから声が掛かったんだ



 「じゃあ同じ国の民である私の質問なら答えてくれるかなサース君?私がこの場に同席したのは彼等に声を掛けられた訳じゃなくて、彼等がサース君を囲んでいるのを見掛けたから来たんだ。だから私は彼等とは無関係だ。

 また後で話す時間を作ってそこで教えてくれると嬉しいな」


 「本当にどうしたんだよアンタ等。1人の人族に寄って集って、俺は今尋問でもされているのか?尋問される謂れは無い筈なんだがな?」



 言ってそれ以上踏み込んで来るならコッチも考えが有るぞという意味で戦闘態勢に入る。

 本気で戦るつもりはない。本当に威嚇目的でだ。


 俺が戦闘態勢に入る、つまり殺意を漏らせば、少し騒がしいぐらいだった朝の食堂が音を奪われたかのように静かになった。声を発する者は誰も居らず、この場に集まる全員だけでなくこの食堂に居る全員から視線を集めていることは見なくてもわかった。


 だからどうしたとばかりに俺は続きを話す。



 「いや、別に良いんだ。気になることが有って、その事を聞く。その行為事態は良いんだよ。だけどこれだけ話したくないと意思表示しているのに数で押しての恫喝行為は高貴な方々の筈なのに如何なものかと俺は思うわけだ。


 アンタ等が学園外の地位をチラつかせて話し掛けて来るなら、コッチも徹底抗戦だ。なんせその『力を持ってる奴等』相手に生まれてこの方やりたい放題されてきたんでね。


 だけどこれだけは答えてやる。

 俺の目的はアカバ王国の2人が知ってるかは知らないが、マハラ帝国の2人にエンラジー達には既に伝えてる通りだ。


 見返したい奴等が居る。

 復讐したい奴等が居るとでも言い直そうか?


 俺はその目的の為にこの9年間を過ごして来たし、その目的を知ってその上で協力してくれてるのが師匠だ。

 これ以上俺から語る気は無いぜ?それでも踏み込んで来るなら仕方ない。犯罪者の汚名を被ろうとも徹底的にテメー等力に抗ってやる」



 言い終わると同時、遠くから「お腹空いた~」という暢気な声が食堂の中に響き渡る。

 声の発信源へと視線を向ければ、案の定奴が居た。

 だから咄嗟にあらゆる痒み成分だけを抽出した液体を指輪から取り出し、水の魔法球を作ってそこに混ぜて、奴の顔面にぶつけてやった。


 魔法球は見事に奴の顔面にぶち当たり、奴の体がびしょ濡れになる。


 一拍を置き、その直後には「ふぉぉぉぉぉぉ!痒いいいいいいいいいい!!!!」と女も居る場にも関わらず奴は裸になって身体中を掻き毟り始めた。



 「痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒いいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!


 こんなことするのはどうせ1人しか居ない!

 サース!!スッゴい痒いんだけど?!!」


 「知るかクソ野郎。自室の洗面台の排水口相手に盛ってろ」



 一気に食欲が失せ、残った食事を口の中へと掻き込み、呆けたカオをしている周りの奴等へ向け言いたいことを言ってやる。



 「俺に構ってる暇が有るなら少しでも強くなるために何が出来るか考えたらどうだ?


 普通に話す分にはこれまで通り普通に話す。

 互いに触れられたくないことの1つや2つ有る筈だ。いつ頃まで朝起きたらションベン漏らしてたとか初恋の人を想って人に言えないような妄想をしたとかな。


 俺に構ってないで自分に出来ることをやれよな」



 言って立ち上がり、返却口にお盆と食器を戻して作ってくれた人達へ向け「美味しかった!夜もお願いします!」と言って食堂を出た。


 終始クソ野郎が裸で五月蝿かったが当然無視した。

 反応する理由が無いしな。



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