「ゆっくりしろだとよ」
「おはよう。慣れないことして疲れたんだろうね」
「……仕組んだのは魔王か?」
「お願いはしたけど、それ以外は彼女の意思だよ」
「…………マジかよ」
目を覚ますと、ベッドに腰掛けている魔王が居た。
確認のためレヴィアタンのことを聞けば、予想通りの返答であり予想外のことを言われ、より体から力が抜けた。
「ゆっくりしろだとよ」
「いつも俺が言ってたことだね」
「俺の餓えが満たされることは無いとよ」
「愚妹に剥がれたというのも有るだろうけど、たぶん生来の部分も有りそうだね」
「長くは生きられないのにな」
「……その為にソーマを飲ませてるんだけど?」
「なんだって良い。間に合うならな」
「…………」
微笑を浮かべた魔王は何も答えない。
ただ雰囲気的に哀しそうだ。
「君が左腕を失くした時、すぐに治しておくんだった」
「確かに。あの時治されてたら、俺は俺の寿命を知ることは無かっただろうな。おかげでどれだけやれば身が削れるのか知れて、思うように身を削れて、良いこと尽くめだ」
「せめて魔界に居る間はソーマを飲ませてる意味を考えて少しは大人しくしてくれていると嬉しいかな」
「善処する」
「頼むよ、ホント」
散々身を削っているのだから、どれだけ自分の寿命が削れてるかは俺自身がよくわかっている。
アレだけ無理無茶をしていたんだ、俺の胸の内に浮かぶ火はとても弱々しい無くなり掛けの蝋燭の火のようだ。
改めてスァールァドークには感謝だ。
もしかしたら俺の魂の弱さを見たから技術を教えてくれたのかもしれないが、いずれにせよ命の使い方が明確になってやりやすくなった。




