「仕事お疲れ」
城門前へと移動すると、門番の兵士に頭を下げられた。
何度か見たこと有る顔だ。頭を下げられたから、向こうも俺を覚えてくれているんだろう。
「仕事お疲れ」
「いえ、誉れ有る職務でございますれば」
「あー、俺に対してはそんな畏まった態度しなくて良いぞ。家族や友人達と話すように話してくれた方が楽だ」
「いえ、我等が王の最も親しき御友人に対して我が友等と語らう」
「あー、堅い堅い堅い。俺は砕けた態度で話されても怒らないし、それが例え喧嘩腰な態度だったとしても慣れてる。それに魔王もこんなことで怒ったりしないし怒らせない。俺が普通に接してほしいと頼んだ。だからアンタは普段通りに接してくれ。
俺が嫌いで、それを取り繕う為にその態度を崩さないというなら話は別だがな」
言葉遮り、何が何でも普通に接しさせようと言葉を吐き出せば、面倒臭そうな溜め息のような「あ゛ーーー」という音が門番から漏れた。
「そこまでしつこいなら崩すけどよぉ、絶対魔王様には漏らさないでくれよ?じゃないと俺と家族と友人の首が飛ぶ」
「それは無理だ。今この状況も恐らく魔王に見られてる」
「なっ、嵌め、嵌めめめめ」
「だから大丈夫だ。俺が怒るなって言ったから魔王は怒らない。もしも俺の知らない所で怒ってたら少なくとも数日は口効かんし、イギライアとデートにでも行って嫉妬させる」
「?!??!! お前死ぬ気か!!?」
「魔王がアンタやアンタの周りの奴等にこの事で手を出したらの話だ。魔王も自分の不機嫌がどういう影響を及ぼすかわかってる。だからこんなクソどうでも良いことで自分の機嫌を悪くさせるほど馬鹿じゃない」
「…………本当に、大丈夫、なんだな?」
「大丈夫だって。
なぁ魔王!大丈夫だよなァ?!」
門番を納得させるため、そんなことする必要は無いが、魔王に声が届くように空へと大声を上げる。
そうすれば目の前に紙が1枚落ちてきた。
手に取り見れば、『サース、彼や彼の周りには当然手は出さないけど、後で話が有ります。とてもとても大事で長い話が有ります。』と書かれていた。




