「……ハァー。取り敢えず、着替えるか」
レヴィアタンが食堂から出て行った。いつもならここでサタンとルシファー辺りが絡んで来るのが必定と言えるほど毎度のことなんだが、やはり今回は席を立とうとすらしない。
やっぱり今回は魔王が絡んでる。
そう確信した俺は、溜め息1つ溢して、この後に待ち受ける未知である億劫な現実に気が滅入った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
食事を終え、1度魔王に用意してもらった部屋へ移動する。
正直このままここで寝ても良いだろって気持ちは無くは無い。レヴィアタンとデートなどするより、『休む』ということが目的なら絶対このまま怠惰に部屋で過ごす方が良いだろうから。
だが、
「面倒、だよな……」
レヴィアタンは思いの外乗り気だった。それこそ自分の意思でという様子で。
確かに前々から彼女からはそういう意味での誘いをされていた。されていたが、当然全部断っていたし、アレが彼女なりの人との関わり方で、もしくは彼女の存在意義的にそうせざるを得なかったんだろうと思っていた。
だけど、さっき了承した直後の彼女の反応は本当に嬉しそうにも見えた。見えただけに、それを認知して尚無碍にする気は、少なくとも今の俺には無かった。
「……ハァー。取り敢えず、着替えるか」
デートなんてものは未知のものだ。だから酒に酔って自身の嘘か本当かわからない武勇伝を語る先輩冒険者達や、結婚していて嫁と子の自慢をして後輩冒険者に語る先輩冒険者の話を参考に、取り敢えず身嗜みは整えることにしよう。
髪も伸びたしな。
そう思い、なんの加工もしていないナイフを取り出し適当に短く切って、洗って綺麗な状態の服へと着替えた。




