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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第三章:亀裂
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「速いな!」


 「はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…」



 大きく肩で息をし奴の首を落としたところでその場に背中から倒れて呼吸を整える。

 久し振りの生きるか死ぬかの戦いに確かな満足感を覚え、胸の内を達成感が満たす。


 どれ程の時間が経っただろうか。

 体感時間も身体強化をすれば変化するため正確な時間はわからないが、少なくとも2時間は経ってない筈だ。


 俺用ポーションの効果でかなり回復して来ているが未だ戦えるほどは回復していない。だから追加で回復ポーションを脚のポーチから抜き取り口へと運ぶ。

 口に含むと同時に体にポーションが染み渡り、俺用ポーションとの相乗効果で肉体の回復はすぐに終わった。

 しかしスタミナや精神力の回復はしていない。重い体を動かし起き上がると同じく起き上がり手を彷徨わせている奴の体が近くに有った。



 「は?」



 思わず間抜けな声が出る。しかしすぐに意識を切り替えて大剣を手に取り距離を取る。


 落とした奴の頭を見れば、ギョロリとした眼がジッと俺のことを睨み付けており、その口からは唸り声を上げて今にも生前のような咆哮を出しそうな迫力が有った。


 離れた所から奴の同行を見つつ、いつでも動けるように身体強化する。


 それから暫く奴の体は動き続けたが、生命力が尽きたのか最後には地に沈み、その体は地面に吸収されるように消えた。

 場には奴の頭と手に握る片刃の大剣だけが残り、部屋の中央最初に奴が居た所にパッと見金で出来た手前から開くタイプの箱が現れた。

 奴の頭を見れば、やはり俺のことを相変わらず睨んではいるものの迫力は鳴りを潜めていた。



 大剣で箱を突いてみる。突いてみて少し待ったが、中に何か動くものが入ってるということは音的に無さそうだった。


 近付き今度こそ普通に開けてみる。すると中には小さな鎖で繋がった指輪と腕輪が入っていた。

 これといった装飾は無いが、指輪には腕輪と繋がる鎖の反対側にリングの真ん中に紅く丸いルビーのような装飾が有り、腕輪の方は鎖側に大きなターコイズブルー色の丸い大きな装飾が有った。そして指輪と腕輪の両方の内側には魔法陣のような彫りが装飾されていた。


 他に何か入っていないか確認するが、特に変わった所は無い。

 恐らくこれが魔王の言っていた道具、外から生物を誘い込むための餌の1つなのだろう。


 しかし物が物だけに、どんな効果が有るかわからないため身に付けたりはせずに荷物入れの鞄の中へ仕舞い奴の頭を見る。


 視界の外へと移動した筈なのにいつの間にか俺の方を見ている頭に薄ら寒い物を感じたが、大剣共々残っているということはこの頭も宝の1つなのだろう。

 それに、初めて見る素材だ。もしかしたら魔法薬学で何かに使えるかもしれない。だから、



 「悪いな」



 奴の頭へ近付き、短剣を抜いて奴の角の付け根からエラに沿って刃を入れて解体する。


 顔の皮膚、髪、下顎、歯、舌、目、脳、角。それぞれの部位毎に飲み終わったポーションの瓶や採取用の瓶にそれぞれ納めて行って、それを仕舞って一息吐き、ディザスマウスを回収してから他の道が無いかを捜し、無いことを確認してから来た道を戻った。


 戻ると突き当たり、俺がこの道に入って来て立っていた場所辺りに魔法陣が出現していた。

 パッと見でわかったが、それは転移の魔法陣だった。これに入れば元の場所に戻るのだろうと雰囲気で察する。


 魔法陣へと入り、魔法陣が光ると、案の定元の直進の道へと戻っていた。

 しかし遥か遠くから迫ってきている黒は、普通に地平線よりこちら側の場所まで近付いていた。



 「速いな!」



 即座に黒とは反対方向へと全力で身体強化をして走る。


 また走る時間が始まった。



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