油断が出来ない
目を覚ますと近くには湯気の立っている美味そうな食べ物がベッド横の机の上に置かれていた。
唐突なことに一瞬飛び起きて構えたが、こんなことをするのは1人しか居ない。
少し周りを見てみれば、扉の横には何度か見たことのあるメイドが立っていた。
俺と目が合うとメイドはスカートを上げお辞儀をすると、その状態のまま話し始めた。
「我等が王より言伝を預かっております」
「聞こう」
「『依頼達成ありがとう。巨人族については俺の方でどうにかしておくよ。人界でやり残したことが無くなったらいつでもおいで。』
以上でございます」
「了解した。この料理は?」
「我等が王より、『目を覚ましたらお腹空いてるだろうし、温かい物を食べたいだろうから用意しておいたよ。』とのことでございます」
「わかった。食べたらすぐに魔界に帰る。
食器類はどうする?俺が持って行こうか?」
「それは我々侍従の仕事にございます。サース様は私のことは気にせずお寛ぎください」
「じゃあ、食べる。食べ終わったら声を掛けるから、それまではゆっくりしていてくれ」
「畏まりました。隣の部屋で控えておきます」
メイドはそう言って1度頭を上げ、もう1度お辞儀をしたあと退室した。
それを見届け、隣室に入ったことを強化した聴覚で聴き終えたところで、食べずに一旦中身だけを指輪に片付けた。
理由は単純で、あのメイドが信用出来ないからだ。
確かに魔王の所で何度か見たが、それだけの相手だ。だから警戒するに越したことはない。例え魔王の部下だとしても俺との直接的な面識は無い。だから魔王やアンガントやサタンやレヴィアタン達からの食べ物は基本的に手を付けないようにしてる。
これが本当に魔王からの物だったとしても魔王が居ない場所で魔王以外の奴から『魔王から』と伝えられた物を口にするつもりは無い。
指輪から干し肉を取り出し齧りながら時間が経つのを待つ。
そして少し経ってから隣室に移動し、さっきのメイドが待っているであろう隣室に入った。
すると中には明らかに驚きカオを引き攣らせいて、なんと言うか、案の定だった。




