スァールァドゥークとの別れ
2人の行き先が確定したと言って良いのは俺にとっては僥倖だ。なんせ2人の今後をどうしようか割と本気で考えていたからな。
彼等が亡くなるか、彼等がこの技術を習得するまではスァールァドゥークが面倒を見てくれることだろう。
談笑もそこそこに、俺達は次の目的地である魔王が創ったという大陸の中心を目指すことにした。
「もう行くのか。もっと美味い肉が食いたかった」
「いい加減火を使うことを覚えろよ。そしたら少しはマシになるだろ」
「火は怖い!火は何も形が無いのに私達を一方的に焼くんだぞ?私にはどうすることも出来ない!
サース達ニンゲンが異常なんだ。なんでお前達は私達と同じ獣なのに火が怖くないんだ?」
「お前の場合は怖がり過ぎなんだよスァールァドゥーク」
確かに、スァールァドゥークの言う通り火には本質というものが無い。一見本質を視る眼で火を見たらそこには何も無い。だから本質が見えない火が怖いというのもわからなくは無い。
無いんだが、魔猪の調理をしている時、スァールァドゥークは燃え移らない際の際まで近付いて調理されてる魔猪を見ていた。
本人言葉から無自覚なんだろうが、スァールァドゥークは少なくとも火を怖れず近付くことは出来てる。なのにこの怯えようだ。怖がり過ぎというのは妥当だろう。
まぁ、こんなことを本人に伝えても意図は正確には伝わらないんだろうが。
「じゃあ行く。お互いに何か無ければまたな」
「あぁ、さようなら、サース」
魔法陣を展開し、ブラファー夫妻を魔法陣の内側に入れる。
そしてスァールァドゥークに手を振った後、目的の大陸へと転移した。




