精神年齢が子供
「サース殿、ご無事か!」
入口の魔法陣に乗り、大山の裏へと帰ってきて洞窟を出たら、ブラファーにそう声を掛けられた。
時間にして一刻ほどしか経ってないが、2人は腹が減っていたようで、全長が5メートルは有りそうな魔猪を焼いていた。
意外なことに、近くにはスァールァドゥークの姿も在った。
アルメガが魔猪を焼いているんだが、それを涎を垂らしながら凝視していて俺の存在には気付いていないようだった。
「仲良くなったのか?」
「私は相変わらず嫌われているがな。アルメガが持っていた保存肉を食べた結果、アルメガには懐いた」
「あぁ。スァールァドゥークの精神年齢は子供と変わらないからな」
「彼は……どういう存在なのだ?見えない何かで掴まれる感覚が有るが、知覚出来ないから力の原理がわからずどう相対して良いかがわからん」
「俺もスァールァドゥークからその術理を学んだ身だからそう簡単には話せないな。知りたいなら自分でその術理を解くか本人に頼んでみるのはどうだ?」
「……ふむ。巨人族のことも有る。学ぶ為に頭を下げる価値は有るか」
「頼むのは良いが、少なくとも2人には一緒に来て欲しい場所が有る。そこに連れて行ってから頼んでくれ」
「それは何処なのだ?遠いのか?」
「俺も正確な場所は知らない。転移でしか行ったことないからな」
「……魔王殿とやらに関係しているのか?」
「魔王が創った大陸らしいぞ」
「創ッ?!」
魔王のやったことに驚くブラファーはさておき、現在進行形で涎を垂らし続け魔猪の丸焼きが出来上がるスァールァドゥークへ保存しておいた蜂蜜を熱して固めた甘味を指輪から出して投げる。
すると甘味に釣られてか、スァールァドゥークが素早い動きで甘味を追い掛け、口で受け止め、それはもう幸せそうな顔で甘味を味わう。
そこでようやく俺の存在に気付いたらしく、俺の方を向いた。




