「先に動く!」
荷物を纏めてブラファー達と共にもう1度作業場へと足を運んだ。
そこにドルドルンの姿は無く、ドルドルンが居ないことで気付いたが、作業場までの道程でアレだけ鳴っていた鉄を打つ音も聴こえなくなっていた。
「ブラファー、アルメガ」
「うむ」
「心得ております」
俺はトラトトを、ブラファーは即席で鉤爪を、アルメガは長槍を何処からか取り出し手に持った。
明らかに雰囲気がおかしい。
そう思い、俺を先頭にアルメガ、ブラファーの陣形で作業場の中へと入っていく。
するとそこには、俺達に背を向ける形で炉の前の椅子に座ったドルドルンが居た。
「ドルドルン、別れの挨拶をしに来たぞ」
身構えながらそう言えば、ドルドルンは静かに立ち上がった。
振り向いたその表情は理性を感じられないもので、ここがダンジョンだということ、ドルドルンがダンジョンマスターだということ、ダンジョンの理不尽さというものが俺の危機感を激しく刺激した。
「先に動く!」
ブラファーやアルメガに構ってる余裕は無くなった。
ダンジョンマスターであるドルドルンから理性が無くなったということは、十中八九侵入者である俺達を殺しに来る状態になったということだろう。
ダンジョンは理不尽なものだ、そのダンジョンが明確に敵意を出したということは、即ちどちらかが滅ぶまで戦い続けるということだ。
トラトトによる突きをドルドルンの頭へ見舞う。
しかしそれは、何処からか現れた左手の鉤爪に引っ掛けることで防がれ、右手に持った鎚でトラトトの柄を殴られる。
殴られた場所に水球を産み出すことで鎚の威力を殺し、その間に左手に同じように取り出した鉤爪で鎚の柄を狙う。
「…………」
鉤爪は鎚の柄を捉えた。だが捉えただけで、手から落とそうと捻ったが落とすことは出来なかった。




