イチャイチャするな
宿へと移動し、ブラファー夫妻の部屋を訪ねると、まぁ案の定2人の世界を作っていた。
「おい、ブラファー、アルメガ、ちょっと良いか?」
扉をノックしても反応せず、扉を開けて2人の目の前に移動して声を掛けても反応しない。完全に2人だけの世界を作っている2人。
この2人がこれほど仲睦まじいと知っていれば、竜人族にどう対処すれば良いか聞いておけば良かったと若干の後悔が生まれる。
仕方なく、敢えて2人の口を押さえるように無理矢理2人の距離を引き剥がし、ブラファーは強めに、アルメガは弱めに指で鼻先を弾いてやった。
そこまでしてようやく2人は俺を認識したようで、座りが悪そうに慌てて取り繕い始めた。
「ささ、サース殿、唐突にどう為された?」
「取り繕えてないぞ。まぁ、それは良い。俺はそろそろ発つ。お前等2人はどうするつもりだ?」
「む、もうそれほど時が経ったのか。早いものだな」
「お前等の場合、寝食忘れて2人の世界作ってんだ、そもそも時間の概念なんて端から無いだろ」
「……サース殿、なんだか里を出てからというもの、何やら我々に冷たくはないか?」
「人の目気にせず、ずっとその調子でそれを見せ続けられれば嫌でも扱いは雑になる。
で、どうするんだ?」
「ふむ、そうだなぁ……」
ブラファーはアルメガを一瞥し、アルメガが頷いたのを見ると、腕を組んで唸りながら考え始めた。
しかしすぐに結論は出たらしく、返答が返ってきた。
「うむ、我々もサース殿と共に発とう。ここは時間を忘れて過ごすのには快適だが、如何せん空は飛べぬのでな」
「そうか。だったらドルドルンの所に行って挨拶を済ませよう。挨拶が済んだらすぐに発つ」
「承知した」




