ドルドルンの葛藤
「……まさかと思うが、ダンジョンの転移魔法陣を改良したのか?」
「改良したというか、ダンジョンの転移魔法陣を覚えて、その覚えた魔法陣に闇属性の魔力を流しただけだ」
「流しただけって、そんなことすればあの家族達は魔界の何処に出るかわかったもんじゃ」
「言っただろ、魔王は最強だって。この世界の理外の存在だって。
魔界は魔王の世界だ。だから今この時だけは、魔法陣を介してに限り、行き先は固定されてる」
「そんな、無茶苦茶な……」
「このダンジョン限定であれば似たことがドルドルンにも出来るんじゃないのか?」
「出来るが、理論上出来ると実際に出来るかは違うんだぞ」
「自分が出来ないから自分以外も出来ないって考えは不味いと思うぞ?まぁ、俺にはもう関係無いが。
ブラファー夫妻の所に行く。その後彼等次第だが、もう1度ここに来るからもう少しの間ここに居てくれ」
話すことはもう無い。そう判断した俺は、ブラファー夫妻が居るだろう宿へと向かおうとする。
二度手間になるが、1度ブラファー夫妻に声を掛けてからもう1度ドルドルンに別れの挨拶をしようと思う。
地下から作業場に移動したところで、ドルドルンが追い付いてきた。肩に手を置かれて止められた形だが、何かを話す素振りは見せない。
「……何がしたいんだ?」
「…………」
肩越しに聞けば、肩に置かれる手の力が増した。
しかし何も言わず、やはり黙ったままだ。
仕方なく振り返り向き合うと、その手には短剣が握られていた。
何をしようとしたのか察しはついたが、何故そうしようとしたのかはわからないし、結局思い留まったようだから何かをするつもりはないが……、どうしたいんだろうな。




