「鐘が鳴ったからな」
ドワーフ族の街へ訪れて約1週間。
遂に鐘が鳴った。
この1週間は特筆することが何も無かった。
俺やブラファー夫妻が宿に宿泊している。たったそれだけのことで、ドワーフ達にとっては俺達の存在なんて彼等の生活にはなんら関係の無い異物だったということだ。
だから特にすることも無かったため、ドワーフ達の技術を見て学ぶことにした。
俺は鍛冶はやらない。だけど砥石なんかの調整は出来る。
俺は裁縫なんかやらない。だけど破けた所を縫い合わせることぐらいは出来る。
俺は小物造りをやらない。だけどちょっとした小道具は作れる。
職人の街。それがこの1週間で改めて結論付けたこのダンジョンの特徴だ。
鐘が鳴ったためドルドルンの居る場所へ向かう。
ブラファー夫妻もウリューも居ない。竜人夫婦はまず食事の時以外に見ることがなかった。ウリューについては初日に宿に案内してもらったきりで、その後は姿を見ることさえ無かった。
作業場へ辿り着くと、搬入口の前にドルドルンが立っていた。
「来たか」
「鐘が鳴ったからな」
「奥に来い」
そう言ってドルドルンは作業場の中へと入って行った。




