「なぁウリュー」
「おう毛無し、爺との話は上手く行ったか?」
外に出るとウリューとブラファー夫妻が待っていた。
そしてウリューは良い笑顔で聞いてくる。
「上手く行くって?」
「なんか俺達に頼み事をしに来たんじゃないのか?ブラファーの兄さんに聞いたが、なんか俺達に話が有って来たんだろ?」
「そう言うことか。一旦保留だな。鐘が鳴るまで待てって言われたよ」
「鐘が鳴るっておまっ、良かったじゃねぇか!爺直々に鍛えてもらえるなんざ名誉以外のなにものでもねぇよ!!」
「……ドワーフ達にとってドルドルンに何か作ってもらうのはそんなに栄誉なことなのか?」
「そうなんだよ!良いか、俺達ドワーフ達は子供から大人まで全員が物作りが大好きな種族だ。そんな俺達の頂点に立つのが爺だ。
爺が作る物は全てが最高の一言以外無くて、最高で、もー最高なんだ!だから俺達は爺の作品に近付く為に死ぬその時まで研鑽を積む。
そんな爺の作った作品を貰うことは、俺達にとっちゃ選ばれた者か認められた者にしか与えられねぇ!
つまり!毛無し、お前は爺に認められたってこった!!これがめでたくねぇ訳がねぇ!今夜は毛無しの祝宴会だな!!」
いまいちウリューの説明に理解が追い付かないため自分に置き換えて考えてみる。
正直栄誉とか名誉とか、その辺の感情は一切理解出来ないが、ドルドルンを目指して研鑽を積むというのは、つまり俺が魔王を目指すということ、になるのか?
そう考えると、確かに目に見える形で自分の目指すモノを提示されるのは喜ばしいことか。
ただそうなると1つ疑問が湧く。
「なぁウリュー」
「どうした毛無し?もっと喜んで良いんだぞ!」
「それがどれだけ凄いのか実感が無いからわからないんだが、なぁウリュー」
「実感が無いのは、あー、まぁ、毛無しは俺達の事を知らないもんな。それはわかんなくて当然か。勝手に舞い上がってたわすまんすまん」
「あぁそれは良いんだ。それよりウリュー。ウリューは、というかドワーフ族は、嫉妬とか、誰かを羨ましく思うとか、そういう感情は湧かないのか?」
返答は、「何言ってんだ?なんの話だ?」だった。




