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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第三章:亀裂
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「この中か?」


 「お帰りサース。ん?どうしたんだい?」


 「説教が決まってしまったから少し寮に戻るのが憂鬱でな」


 「外泊取り消しとか自室謹慎になんてなれば元も子も無いから気を付けなよ」


 「覚えておけるよう努めよう……」



 外泊ということで寮の自室で野宿用の道具を一式持って再び魔王の許に転移し、そのまま彼に連れられ何処かへと転移した。


 着いた場所は緑が鬱蒼とした場所で、明らかに人の手が一切加わっていないようだった。



 「ここは?」


 「サース達の住む人間の生存圏をこの大陸の南側としたら、ここはそこから北西方向に在る大陸の端の方さ。

 前人未踏の地、というヤツだね」



 言われて初めて俺達の住んでいるこの地が大陸という物で、その南側に住んでいたのだと認識した。


 いや、大陸ということは歴史の書物を読み解けば、その情報をどうやって知ったのかは別として大陸という単語はよく出てくる。それに海という塩の混ざった大きな湖が世界には拡がっているということも情報で知っていた。


 そんな見たことの無い物が、少なくとも魔王は知っているというのは納得と共に色々と感じるものが有った。


 だけどそれは一先ず頭の隅へと仕舞い、目の前にポッカリと空いた洞穴のような場所へと目を向ける。



 「この中か?」


 「そうだよ。この洞穴は物凄く短くてね、それこそ大型動物やゴブリンや中型の魔物が巣穴にするぐらいしか使い道の無い横穴だったんだ。

 だけどその1番奥にダンジョンの入口が出来てしまった。


 ほら、臭わないか。物凄く美味そうな物がこの奥に有りそう思わせる臭いが」



 言われて、確かに良い匂いがすることに気付く。それもこの洞穴の奥からだ。



 「どうやらここのダンジョンは1度入ればクリアするまで出られない場所みたいなんだ。だからここのダンジョンはこうやって良い臭いを出して獲物を誘き寄せ、入ったと同時に閉じ込め糧とする。とても狡猾なダンジョンなんだ。


 でも難易度は今のサースにはちょうど良いくらいで、1日も有ればクリア出来ると思うよ」



 洞穴の奥を見ていた魔王がこちらへ向く。

 だからこちらも向き合えば、続きを話し始めた。



 「ダンジョンには色々な種類が有る。例えば魔物ばかりを出すダンジョンだったり、罠ばかりを設置しているダンジョンだったり、その両方を均等に配置したダンジョンだったり、在り方は様々だ。


 ここはどちらかと言えば罠寄りのダンジョンで強い魔物はそれほど居ない。でも魔力が無いと厳しい場面がいくつか有って、サースにはちょうど良いと思う。


 罠の種類については教えない。それじゃあ意味無いからね。


 そういう訳だサース。後は頑張れ」



 魔王はそれだけ言うと、転移で何処かへと言ってしまった。


 薄々こうなるんじゃないかと思っていたが案の定だった。


 改めて荷物の確認をし、不備が無いことを確認してから俺は洞穴へと足を踏み入れた。



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