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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第十章:見切り
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竜人族の移住:発つ


 竜人族を送り届けて別れを惜しみ広場に残る彼等を見送り、俺とブラファーとアルメガの3人は村長宅へと移動する。

 そして居間のような場所へと通されたあと、アルメガはブラファーをクッションの上へと座らせた。



 「聞きたいことがいくつか有るだろう。だから確実に聞かれるだろうことを先に言っておく。


 我々竜人族は、次の長は前長の亡骸を使い武器を創るという習慣が有る。これは偉大なる前任者が次の長を護り導くという考えが有るためだ。

 もし前長が生存しているのなら、竜人族たる象徴を以て次長へ武器を創り、それを下賜することで長の座を継承する。


 今回次期長は2人だったからな、私の両翼と四肢それぞれ片方ずつを贈ることで継承とした。


 サース殿をドワーフ族達の許へ送り届けたあとは、そうだな。自然へと帰るまでの間、彼女を愛する為に費やそうと思う」


 「…………そうか」



 説明に、言葉はそれしか出てこなかった。

 最初はエリクサーを使って彼の両翼と四肢を復活させようかと考えていたが、あまりにも朗らかに満足そうに説明するから、エリクサーの治療は不粋かと思って口にすることを止めた。


 それでもブラファーが良くてもアルメガの方が良くないかもしれないため、後で彼女にはエリクサーを1つ渡しておこうと思う。

 しかし、そんな彼女も愛おしそうにブラファーを支えている姿を見れば、それすらも不粋に思えて、本当に渡そうか躊躇しそうだが。



 「……じゃあ、荷造りってのはアレか、この村長宅をさっきのヴィヌって奴に明け渡すための荷造りか」


 「そうなる。我々が旅立ってから間も無く彼等はこの家へと移り住むこととなるだろう」


 「荷造りの方は?」


 「アルメガ」


 「既に終えております」


 「との事だ。いつでも発てるぞ」


 「…………荷物を渡せ。俺がドワーフ族の所に着くまでは荷物を持つ。だからアルメガさんはしっかりとブラファーのことを支えてやってくれ」


 「当然でございます。そして、荷物持ちを買って出ていただき感謝いたします」


 「……。移動は早い方が良い。早速出るぞ」



 込み上げて来る言葉を必死に呑み込み、荷物を宝物庫へと仕舞い俺達はブラファーの指示に従い竜人族の村を発った。


 彼等2人の別れは村人達に知らされることはなかった。

 静かに、存在を気付かれず亡くなった孤独な老人のように、俺達は竜人族の村から姿を消した。


 俺達の出発に気付いた竜人族が居たかもしれないが、彼等は何も主張しなかったことから、これが彼等の在り方なのだろうと思い、やはり込み上げて来る言葉を呑み込むことで精一杯だった。


 種族や部族が違えば文化も変わるらしいが、竜人族のこの手の文化は俺には合わなさそうだった。



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