竜人族の村の子供達
第十章、始まります。
奴との決戦を終えて数日。肉体的にも精神的にも十分な休養を摂れたと判断した俺は、本格的な旅に出た。
目的は魔王から頼まれた人界に住む人族、獣人族、エルフ族以外の人間の勧誘のため。そして魔王が創ったらしい大陸の中心に託された何かの種を植えるため。
だからまず、居場所がわかっている竜人族の村へ転移した。
「よぉ」
「サースか。いつもの取引にしては早いな、何用だ?」
「俺の方も色々有ってな、村長と話がしたい」
「……ふむ。良いだろう。村の広場辺りで待っていてくれ」
「はいよ」
門番を仕事にしている竜人族のオリジュラに連れられ村の中へと入り、村の中心である広場の舗装された地面の一部を土に変えその土で遊んでいる子供達の許へ近付き、声を掛ける。
「何作ってんだ」
「あ、サース兄ちゃん!来てたんだ!」
「ねぇねぇサース兄ちゃん今時間有るー?」
「今日こそ遊んでよ!」
人族で言うと3歳か4歳ほどの子供達にズボンに抱き付かれたりよじ登られたりされながら「遊んで」とおねだりされる。
最初は俺のことを警戒してか散々警戒していた癖に、通うに連れ距離が近くなって喋ることも増えて、それが今ではこうして集られる始末だ。
アレだ、スウィスウィビーのハチミツをコイツ等の前で、小腹が空いたからと食べたのがダメだった。最終的には村人全員に集られて、手持ちのスウィスウィビーのハチミツが失くなったのは流石に読めない。
スウィスウィビーのハチミツを食べてからの子供達は、それから俺を見付ける度に何かをねだるようになった。毎度遊ぶか甘い物をやらないと今みたいに服が汚れるとか、そういうこっちの事情を無視して群がって来る。
精神年齢が3歳4歳というのも問題だが、人族と竜人族とでは肉体的な潜在能力が圧倒的に違う。
体感だが、この3歳4歳ほどの子供達の力の強さは、ギルドランクB相当の力自慢共並みの力が有る。そんな力の強さで力加減無しに体によじ登られたり時には叩かれたりすれば、身体強化をしていなければまず間違いなく命が危ない。普通に危険だ。
ただ、そういうことをこの子供達に言っても全然理解してくれない。親達に言っても「子供の強さ程度神に勝利した君には有って無いような力だろう」と流され、マトモに取り合ってもらえなかったことで、この事については諦めた。
それに、甘い物を与えてやれば大人しくなる。だから余裕が無い時や相手をする気分じゃない時は甘い物をやってる。
「悪いな、今日もまた遊べないんだよ」
「サース兄ちゃんそればっかし!つまんない!」
「サース兄ちゃん!それだったら甘いのちょうだい!そしたらかいほーしてあげる!」
「サースお兄ちゃん、遊ばなくて良いから今日1日一緒に居て?」
「あー!ルーちゃん顔真っ赤ー!」
「ホントだ顔真っ赤!お熱有る?」
「うわ、ルーティカが顔赤くするとか珍しい!さっすがサース兄ちゃんだ!」
子供達は本当に元気なもので、少なくとも前まではその元気さに疲れていた。
しかし今回は何故だかこの元気さが微笑ましい。
「今日は村長に会いに来たんだ。だから呼ばれるまでなら相手をしてやろう」
「え、マジィ?!サース兄ちゃんが!?やったー!!」
「サース兄ちゃん、ちょーつよい建物の作り方を教えてあげる!見てて!」
「サースお兄ちゃん、お膝の上に乗せて?」
「あー!ルーちゃんズッルーイ!クーも乗せて乗せてー!」
「あ、アタシも乗せて!」
子供達にそうやって弄ばれながら、時間を潰すこと少し。オリジュラが戻ってきた。
「サース、村長が呼んでる」




