▼side Another act2:『 』Ⅳ
「『んー、んー……、ん?ん??ん???
へぇー。ほー。ふぅーん。えぇ?!え、マジィ?ふぅーん。なるほどね?』」
『 』の一人言が魔王へ念話という形で漏れる。
最初それは何か、目を通しておかなければならない溜まった書類を流し見しているような様子だったのが、何か引っ掛かりを覚え、数度確認し、納得し、そして驚き感嘆したものへと変わって行った。
『 』との邂逅はこれで数度目だが、それでも『 』がこんな反応をしたことを魔王はこれまで見たことが無かった。それ故に、『 』が何故そんな反応をしたのかが気になった。
しかしそれを尋ねることはせず、黙って『 』からの返答を待つ。
魔王の経験上、『 』がこうして一人言を漏らす時は、何かを"視ている"ことがほとんどだからだ。
「『よし、君の嘆願についてだけど、却下で』」
「……」
「『そこで理由を聞かないのは君の美徳だね。でも時には聞いたって良いと思うよ?』」
「お戯れを……」
「『僕としては君ともっと仲良くなりたいんだけどねー?』」
「恐縮です」
「『ホント態度崩れないなー。まぁ良いや。君が聞かないってことなら詳細は省くけど、君の嘆願は僕が対応しなくても解決するよ』」
「…………なるほど」
「『キーアイテムは、なんて言ったっけ?セスフンボスとかいうパンドラの箱みたいなトンデモ合成キット。アレが重要だから、今は君が監理してるみたいだけど、アレを使いたいって言われたら気兼ね無く使わせて上げたら良いと思うよ』」
「…………畏まりました」
そう言って魔王は立ち上がり、深くお辞儀をしたあと部屋を退出した。
考えることが山ほど出来たが、セスフンボスの名前が出た時点でどうにかするのがサースだということがわかった魔王は、セスフンボスを使わせることについて複雑な感情を抱きながら、しばらく親友に使わせるかどうかを悩むこととなった。




