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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第九章:人類の敵
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失望


 その感情を一言で表すのならば、『失望』以外に適切な言葉が無かった。


 確かに魔族の中には乱暴で横暴な奴は居るだろう。そして人間を恨んでる奴や人間を見れば殺したくて仕方なくなる奴も中には居るだろう。


 だがそれは人間も同じだ。同じ筈だ。


 ただ容姿が魔物に近いから。ただ人間よりも発達している所が有るから。ただその肉体的構造上普通の人間と同じように過ごすのが難しいなだけ。ただ、ただ、ただ。


 魔族の中には臆病な奴も居るし怠け者も居る。他人の前に姿を現す奴が自分の力を誇示したいか人間に恨みが有るだけで、恨みも無ければ敵対理由が無ければとても友好的な奴も居る。


 全部この人界での人間と同じなんだ。勘違いされているだけ、知らないだけなんだ。


 だけどそれは、今すぐ解決することではない、解決出来ることではないとわかっている。わかっているが、



 「もう、いいよ」


 「ァン?」


 「もういいって言ったんだ。もう、いいよ……」



 立つのに必要な力だけを残して全身からあらゆる力を抜く。


 なんかもう、何も見たくないし聞きたくない。


 水の腕を出してそれにトラトトを持たせ、胸倉を掴む腕を雑巾を絞るかのように瞬時に出来る最大強化で身体強化を使って捻る。それだけで土帝の皮膚は裂け、その下の筋肉まで所々断裂し、骨にもヒビが入った感覚が有った。

 それで無理矢理腕から解放されると同時に水の腕に持たせていたトラトトを自身で掴み直して、水帝が待機させていた水球の制御権を奪って2人を水球の中に閉じ込める。


 トラトトが有れば近接が苦手な水帝なんて戦闘の出来ない一般人と変わらない。俺が土帝の拘束から逃れようとした時も攻撃しようとしてきたが、新しく出した水も含めて全部制御権を奪ってやった。


 会話だけは出来るようにそれ用の穴だけ作ってやり、それ以上はヘタなことをされても困るため水に圧を掛けることで物理的に動けないようにする。

 土帝は抗おうと必死に藻掻き、水帝も必死に抗おうと魔力を使って何かしようとしているようだが、ただ彼女の拘束が強力になっていくだけだった。



 「やっぱりテメー、人類を裏切ってやがったな!!」



 開けた空気穴から土帝の怒声が聴こえる。

 一瞥してやれば、何故か絶句したように怒声は何処へやら、借りてきた猫のように静かになった。



 「もう、お前達と話せることは何も無い」



 それだけ伝えて魔王の方を見れば、その空間だけが魔王と奴だけを残して何も無い状態になっていた。


 何も無い。本当に、何も無い。色で表現するのも風景を表現するのも難しい。強いて言えば、2人を中心に半径3メートルほどの大きな穴が在った。



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