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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第二章:違和感
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▼side Another act2:報われない者達へ


 蛇の男の願いは力を欲するものではなく、彼と彼の家族の庇護だった。

 蛇の男は魔王息子だけでも魔王の庇護下に置いて欲しいと願い出る為だけに遠路はるばる、そしていくつもの戦いを乗り越えてこの場へと訪れていた。


 残酷な事に、話を聞いていた魔王のもう1つの視界ではその家族と思われる2人の命は男が語り終える頃には既に無く、魔王は内心どうしたものかと悩んでいた。


 目の前の男の願いは未来永劫もう2度と叶わないことが確定したからだ。彼がせめてもと望んだ子すら既にこの世には居ない。しかし試練を乗り越えた者にその報酬を渡さない訳にもいかない。故に魔王は悩んだ。

 悩んだ末、魔王は彼に1つの魔道具を渡すこととした。



 「これを持って行くと良い。それを所持している者の魔力が尽きない限り、その者を半永久的に守ってくれるだろう」



 効果は男へ説明した通り。そんな能力の物を2個創り、彼へと下賜した。


 復讐に使うも良し。新たに家族を設けその家族を守るために使うも良し。どんな使い方であれ目の前の哀れな男への手向けとして魔王は男にその魔道具を贈った。


 下賜され魔王へと感謝の言葉を告げている時、男の後ろにサースが現れた。彼がこの場に来ることは共有する視界により察していたが、その表情を見て魔王は少しだけ後悔した。


 それはもう、今すぐにでも泣いてしまいそうなほどにその表情は曇っていたのだ。そしてその視線が自分にではなく蛇の男へと注がれたことも共有する視界で認識した。

 その直後には彼の寮の部屋のベッドが写っており、彼の視界はとても霞んでいた。


 蛇の男からの感謝の言葉を聞きつつ、サースの霞む視界で彼の様子を把握し、しばらくサースはこの場へは来ないだろうと蛇の男に1つ提案することにした。



 「なぁ君。良ければ少し、君に稽古をつけてやろう。その道具の使い方も体で覚えた方が、誰かに渡す時に伝えやすいだろう」



 案の定数日サースはこの廃城へ訪れることはなかった。

 その間、魔王は男を可能な限り鍛えて今後の彼の糧になることを祈った。


 どのような結末が訪れるかを察していながら。





 後日、サースから彼がどうなったかを聞いた。

 やはり案の定と言うか、彼は復讐に走ったようだった。

 彼に与えた魔道具を含めた彼の装備していた物は全て廃棄されたらしい。罪人の持つ物は縁起が悪いとその場で可能な限り解体して地下深くに埋めるのが習わしらしい。

 「より自分達の首を絞める道を選ぶんだな」。思わず溢してしまった言葉はサースに届くことはなく、思わず漏らしてしまった自分の失態を恥じ、今のサースの状態を察していて申し訳ないと思いながらも、この時ばかりは今の彼の状態を魔王は感謝した。


 だからこそ、罪滅ぼしではないが、魔王はサースの悩みを封印することにした。


 可能な限り丁寧に、サースに負担が掛からないように時間を掛けてじっくりとサースの状態を整えつつ、サースの悩みを封印するために魔王にしては珍しく心血を注いだ。


 そうして封印が叶った時、魔王は内心ホッと溜め息を吐きながら、数ヶ月振りのサースとの時間を楽しむのであった。



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