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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第二章:違和感
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▼side Another act2:魔王の評価


 旧オウカ宗教国家の首都に在る廃城。

 そこに今、1人の魔王と1人の獣人族の男が居た。


 現在この廃城は魔王が人界で活動するための最大拠点として運用している。その事をどうやって知ったのか、魔王への陳情の為に獣人族の男は命掛けでこの廃城へと訪れたのだ。


 この男は蛇の獣人族で冒険者ランクで言えばBランクとCランクを行ったり来たりするぐらいの実力だ。そんな彼であればこの廃城へ来ることは簡単だっただろう。当然だ、当時彼より弱いサースがこの廃城へ危なげなく来れたのだ、当時のサースより強い蛇の男がここへ命掛けで来ることは決して無い筈だった。


 では何故彼が命掛けだったのか、それは彼の現在の境遇と魔王の試練が故だった。


 彼は人界の世間一般で言うところの魔族であり、この廃城へ来る際には人目の付かないような場所を移動していた。そうするとどうなるかと言えば、ランクに関係無く彼を獲物と襲い来る魔物達との舞踏会だ。


 それを掻い潜りこの廃城の在る首都へと近付けば、今度はその首都内が木で覆われており、外に居たような魔物達もウジャウジャと跋扈していた。

 この首都内で跋扈しているのが魔王の試練であり、ここを乗り越え玉座の間に居る魔王の許へと到れない者に魔王は願いを聞き入れることを良しとしなかった。


 木についても普通の木ではなく、魔界産のキラートレントで、魔王はこのキラートレントからの情報を基に訪問者へと試練を課していた。



 そうして辿り着いた蛇の男の第一声は「偉大なる王へ願い奉る!」というものだった。



 「(またこの手の手合いか。じゃあおおよその願いの内容はわかるかな)」



 魔王は目の前の男のように自分へ何かを強請って来る者達をこれまでに何人も見てきていた

 そしてその者達の願いは大抵が力を欲するもので、そして力を欲した者の末路は大抵が自滅だった。

 魔王が現在基本属性である火・水・土・風の4属性が使えるのも、過去に彼が力を欲した者達へ与えた物を回収した結果だった。


 この者もまた過去の者達と同じように力を欲しているのだろう。そう考えると辟易する想いだった。


 魔王の視界の片方は今、彼が最近仲良くしている(と本人は思っている)人族の視界が写っていた。魔王の創り出した魔法の道具を参考に魔力効率度外視でサースが創った魔法を覚えて使っているためだ。


 その視界では今、サースが岩場に在る家のような場所に総帝を始めとした学園の生徒と突入しようとしているところだった。

 今はここに彼が初めて訪れた時に使っていた睡眠薬が中に充満するのを待っている途中のようだった。



 魔王にとってサース・ハザードという存在は彼の長い時の中で出会って来た誰よりも稀有な者だった。

 才能という点で言えばサース・ハザードは明らかに生産職に就いた方がその才能を遺憾なく発揮し後世に名を残すこと間違いなしと言えるほどに才に溢れた存在だった。

 しかし彼が進んだのは逆に才能としては並み程度しか無い戦闘職の道だった。


 彼の才能は戦闘面に於いても輝きを放った。体術、剣術、槍術、斧術、弓術、短剣術、暗鬼術。凡そ魔法を用いない戦闘系の才能は全てに適性が有った。しかしそれは戦闘力という総合力の前では並み以下に落ちるという残酷なまでの現実により、彼を戦闘職は不向きと断ぜざるを得なくなっていた。


 平均以下の魔力量。これはほぼ生来の物で凡その量がほぼ確定している。そんな世の中の中で、彼の魔力は平均の3分の1しかなかった。最大量の3分の1でも魔力が多い者達の平均の3分の1でもなく、一般人の平均の3分の1の量。これは戦わない者を基準とした時の数値だ。


 魔力以外の才能は余すことなく持っている、時代が時代であればそれこそ英雄と呼ばれても過言ではないほどの才能。しかしその才能は彼の幼馴染みにより見向きもされない物へと堕ちていた。


 普通の者であればその幼馴染みを支えるだとか、国のために頑張るだとか、そういう相応の結論を出し自分の得意な分野を伸ばそうとするだろう。

 しかしサース・ハザードという人間は苦手分野にも関わらず相手の得意分野で勝つという復讐の道を選んだ。


 これが魔王にはとても眩しい物のように思えた。

 なんとか彼と関係を持つべく事実を混ぜながら適当を吹いて彼との関係を持つほどに魔王はサース・ハザードという人間に一目惚れした。

 だから彼の無茶で無謀な無理難題を成就させるべく協力している。そして協力すればするほど、彼からもたらされる物は世に出せばまず間違いなく歴史に名を刻むものばかりだった。

 魔王が魔力に飽かせて創った便利な魔道具を解析し、それを低魔力でも行使出来るように調節したものを創り上げ、それを気にせず他に教える。これほど協力していて楽しい者はなかった。



 だからこそ、今からこの玉座の間に訪れる蛇の男の願いを思うと辟易したが、サースの輝きを見ることでその想いを鎮めていた。


 そして蛇の男が玉座の間に入って来るのとサース達が家のような場所に突入するのはほぼ同時だった。



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