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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第九章:人類の敵
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卒業試験:VS総帝Ⅲ


 目に直撃する。それを認識する前には自然と体は背面に反っていた。

 それを眼前を通り抜ける破壊の針を見届けながら、これから訪れるだろう破壊の雨に備えるために自分を囲うように水球で自分を覆って、水圧を上げては魔力を追加しその体積を増やす。


 時間が経てば経つほど強固になっていく俺にとっての防壁だが、その時を待ってくれるほど優しくはなく、次々と破壊の針が水の防壁に刺さり刺さった所から魔力を破壊されて行くのを感じた。



 「──────────!─────────!!」



 奴が何かを叫ぶ。唇を呼んだ感じだと、「よくもやってくれたな」「いますぐころしてあげる」か。

 事前情報で既にわかってはいたが、相当沸点は低いらしい。たった1発殴っただけであぁなるんだ、本当に命に届くような攻撃をしたらどうなってしまうんだろうな。


 自然と上がる口角をそのままに、水の防壁に色を付けて行く。

 当然色は黒だ。それで奴から俺の体を隠す。


 水の防壁が黒く染まり、外界の情報が入らなくなったと同時に攻撃の勢いが増した。黒くする前は供給過多で削られるよりも早く防壁の強度が上がっていたが、今は逆に魔力の供給が追い付かなくなってきた。


 水の防壁を完全に剥がされる前に、俺は足許の地面に穴を掘る。

 正確には開始する前から水で掘ってはいたが、その速度を上げて、あとは維持の限界を感じた直後に穴に入れば良いだけの状態にする。


 黒い水の防壁はすぐに限界を迎え、両腕を広げたぐらいまで縮小された。

 魔力を視る眼に切り換えてから防壁に当たる攻撃の正体を探る。

 すると攻撃しているのはただの球体と極太の光線のような魔力の奔流が見えた。


 限界だと判断して作った穴へと入り込む。

 そして俺がまだ踏ん張っていると勘違いさせるために、水の防壁への魔力の供給は完全に破壊されるまで続ける。


 地面を伝って、地上の音を拾うことと魔力を視る眼で観察し情報を集める。


 どうやら奴は浮いているらしい。水の防壁よりも高い位置に居ることが見て取れた。

 ならばと地面の振動を気にしなくて良いため地面を掘り進めて奴の真下まで移動する。


 真下まで移動したら、奴に水の奔流を浴びせるために右腕を構えて魔力を練りながら待つ。

 狙うは奴が攻撃する手を止めた時だ。その時には魔王から聞いている奴の情報通りなら確実に油断する筈だ。



 破壊の攻撃は黒い水の防壁をいよいよ完全に壊し切れるところまで削っているようだった。

 俺の体の形に変形させた黒い水の防壁で俺の姿そのものは見えないだろうが、奴からすれば俺が必死に破壊に抗っているように見えることだろう。


 そして間もない内に完全に黒い水の防壁は破壊された。

 地面の下だが、観客達が言葉を発していないことは地面越しでもその静かさでわかった。


 口許に布を当てて喋っているように鮮明には言葉を拾うのが難しいが、どうやら奴が俺を最後の魔族とか言ってる言葉が聴こえた。

 俺を殺したことへの弁明みたいだ。


 かなり油断してくれている奴に強襲するべく、構えた腕、指に嵌まる指輪から、あらかじめ収納しておいたこの首都が沈みそうなほどの大量の海水を撃ち出した。



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