トネリコのリコ
「着きました」
ガレリアの後ろを着いて歩きながら、魔王の隣を歩いていれば先程の部屋に着いた。
だがおかしかなことに、目を覚ました部屋にも、その1つ手前の部屋にも俺が殺した筈のエルフの男女の死体が無い。
魔王の言葉通りならこの木に既に死体を吸収されたと考えられるが、それにしても一切の跡も無いのはおかしかった。
「天魔の魔王様と天界の方々をお連れいたしましたリコ様」
ガレリアがベッドのような場所の前で傅き頭を下げた。
するとベッドから湧き出るかのように木が盛り上がり、それは人型となり、出る所は出て引き締まってる所は引き締まってる、そんな全裸のエルフに成った。
そしてそのエルフの女は、俺の上に跨がっていたあの女のエルフだった。
「ありがとう私の娘。本当に貴女は良い娘ね。
久し振りね魔王ちゃんにアンガルミアちゃん。
そして、さっき振りね、私の新しい番ちゃん」
その豊満な胸を強調するように、一般的に言えば艶かしく挨拶して来た女に嫌悪感を覚えつつ、中指を立てることで挨拶しておく。
後ろを盗み見ればアンガルミアという天族の女も額に血管が浮き出ており、魔王にいたっては目が死んでいた。ゴミを見るような目だ。
「随分と好き勝手してるみたいだねトネリコ」
「あら魔王ちゃん、そんな殺気立たないでよ。発情しちゃうでしょ」
「常に発情している駄木が何言ってんだか。
それで、世界のルールを守らなかったらどうなるかって話は前にしたよね?なんで破った?」
「破った覚えは無いわよ?ただ味見してる間に寿命が尽きちゃっただけ」
「それが通らないのはわかりきったことだよね?」
「もちろんよ」
空気は剣呑としたもので、魔王も天族も今にも目の前のエルフに仕掛けようとしていることがよくわかる状況だった。
それを感じ取っていないわけでもないだろうに、魔王にトネリコと呼ばれたエルフは気にした様子は無かった。




