「約10年だ」
魔王のこととか魔界のこととかは一切伏せて、2人にはある程度話した。
話を聞き終えた2人は口を開いて固まっていたが、整理が落ち着いたのかすぐに「随分濃い9ヶ月だったんだな」とだけ漏らした。
「やってることはこの2年変わってないけどな」
「いや、だとしても、戦う相手がキラー種というのが俺達からすれば……」
「俺の卒業課題が要約すると帝と戦うことだからな、最低限強くなっておかないと」
「「………………」」
俺が帝の話題を出した途端に2人は黙った。
何を言いたいのか、何を言われるのかわかった上で、敢えて黙っていると、レオポルドが口を開いた。
「やはり相手は総帝殿なのか?」
「もうわかってんだろ?総帝はフォルティス・サクリフィスだ」
「…………」
「約10年だ。俺はこの時を約10年待った。なんなら俺はこの為だけに生きてきた。その目的の場がもう目の前にある。なら、やれることはやっておきたいと思うのは当然だろ」
空気が重くなる。
まぁ、前から2人とはこの件で数度ぶつかったから、少なからず何か思うところが有るんだろうし、俺がもう絶対に止まらないこともわかってるだろうから、なんて言って良いかわからないんだろうな。
「まぁ良いじゃないか、あんなクソ野郎のことなんて。今はそれより、俺達の親交を深めようぜ」
ぎこちないながらもその言葉を皮切りに、俺達は昼休憩の時にやっていた語り合いを退店するまで追加注文しながらじっくりと行った。
最初こそ2人はぎこちなかったが、話す内に話の内容の方に意識が向いたのか自然と笑顔が増え、退店する頃には満足したようなカオだった。




