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魔王の親友は勇者の親友的立ち位置の俺  作者: 荒木空
第二章:違和感
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懊悩


 モヤモヤとした物を抱えながら1ヶ月が過ぎた。

 あの時請けた依頼は無事達成扱いになり、あの時の班は解散した。報酬である金銭の分け方について話し合ったが、最後に足を引っ張ったと言って固辞し、早急に転移で魔王が居るであろう廃城へと飛んだ。


 飛んだ先では蛇の獣人族と魔王が話し合っていた。蛇の獣人族は声的に男のようだった。


 そこで嫌な想像をしてしまい、俺は学園の正門に転移し、寮の自分の部屋へと駆け込んだ。その時はただ1人になりたかった。



 その日から10日後にはあの村が半壊したことと、それをやったのが蛇の獣人族の男だという情報がギルドに行った時に知った。

 聞いた時は隣に魔王が居たが、その魔王から今日はやめておこうと言われて寮の自室へと戻ったのを強く覚えてる。


 その翌日から毎日廃城へ飛び、魔王に頼んで魔界の魔物と戦わせてもらった。

 魔界の魔物は食事を必要としていないらしいのに獰猛で普通に魔族を襲うらしく、何も考えずに討伐して良い魔物だと説明されていたからなんだか気が楽だった。


 それを1週間もやれば感情の整理は落ち着き、一応普通に学園生活は送れるようになった。


 レオポルドとストゥムの2人はどうやら同じ班だったらしく、依頼は一応成功して得るものが有ったらしい。

 それを流し聞きながら、しかし俺の話をしないわけにも行かず、あらましだけ話してその話はそこで終わりにしてもらった。


 クラスメイトの話に聞き耳を立てれば、ほとんどの班が無事依頼を達成したらしい。アバズレ共以外で何人か居ないみたいだが、聞いてる感じ的には大怪我はしたものの命に別状は無いらしかったため、俺達のクラスは全員誰1人欠けることなく今回の行事を乗り越えられたようだった。




 あの時。あの家のような場所に住んでいたゴリラとスネークコングの赤子のような個体。そして蛇の獣人族の男が頭にチラつく。


 別にチャーラルの言葉を否定するつもりは全く無い。俺だって今までそうして来た。だけどそれは毎回明らかに敵対的な奴等ばっかりだったからというのも有るが、何より敵と和解するってなんだって認識だから、そこについては特に引っ掛からなかった。


 じゃあ何に引っ掛かったのかと言えば、それは状況的に無力化していたというのも有るが無抵抗な人間を殺したのかもしれないという部分だった。


 あの時聞こえた声は、明らかに『いつ』と『帰って』だった。そしてその後の村の様子を思えば、そして蛇の獣人族という種族と廃城からあの村までの距離を考えれば、彼等が人間で、ただそこで生活しているだけだったんじゃないかと思ったからだ。

 しかもあの時チャーラルが言った「魔族なんて論外だ」という言葉はもっと引っ掛かった。


 たぶん、俺も今までだったらチャーラル達側だったと思う。

 だけど俺は、少なくとも魔界の魔族と関わりを持った。だからわかった事だが、確かに魔界の生物は人間も魔物も乱暴だし喧嘩早い。だけど話してみたら普通に話せる奴で、それは冒険者と変わらなかった。


 だからあの時チャーラルが魔族は論外と言ったのが、冒険者は論外と言ったようにも聞こえたし、異端の者は敵だという言葉は俺に突き刺さった。なんせ故郷の村では俺は異端の出来損ない扱いだったからだ。


 だからアレからモヤモヤとした物を抱えて日々を過ごしている。



 そうして更に1ヶ月が経ち、外は降り積もった雪で毎日が白銀の世界へと変わっていた。

 冬の間はこの大雪も相まってよっぽどのことが無い限り外には出ない。その日暮らしの冒険者や食べ物の無い者が買い出しに出たり依頼を請けたりするぐらいだ。


 学園はそれでも変わらず毎日授業が有って、そのため雪で埋もれた道を属性による差は有るが魔法で除雪しながら通う。

 そして俺の修行も季節は関係無いため毎日行われた。


 そんな冬を過ごしていたある日、魔王からこんなことを言われた。



 「ここ数ヶ月、何をそんなに悩んでいるんだいサース?」



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