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「そこまで酷かったか?」
「久し振りね。元気にしていたかしら?」
案の定声を掛けてきたのはこの魔女の瞳の店主であるナディア・ガレリアだった。どうやら接客は終わったらしい。
「相変わらず片腕が無いこと以外は元気だよ」
「……そうらしいわね。本当に元気そう」
少し間を置いて言われた言葉と様子が、少し前に見た物とかなり似ていた為、思わず溜め息が漏れる。
「そんなに9ヶ月前の俺と違うのか?」
「反応を見るに、学園かギルドでも驚かれでもした?」
「クラスメイト達に珍獣を見るような目で見られた」
「それまでの貴方がそれだけ抜き身の名剣のように鋭かったんでしょうよ」
「そこまで酷かったか?」
「少なくとも、今みたいに表情豊かでは無かったわね」
余程俺は調子に乗っているらしい。
考えられる理由は1つしか無い。
親指で填まる絆の指輪を撫でながら、笑って誤魔化す。
しかしそれも9ヶ月前の俺では考えられない反応だったらしく、そこから魔界産のマンドラゴラのような人界では珍しい商品を卸し本題に入るまでの間ずっと弄られ続けた。




