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▼side Another act3:アンガントⅡ
気付けばルシファーの胸には魔王の腕が入っていた。
腕が入ったことに痛みは無かったが、すぐにまるで心臓を鷲掴みにされたような苦しみと、体から癒着した臓器を無理矢理その部位だけ引き剥がされるような叫ぶことすら出来ない拒絶を体と精神と魂が叫ぶ。
体と精神という器から何かが抜けた。
ルシファーがそれを知覚すると同時に意識を失い、しかしその直後にはすぐに意識が戻った。
しかし意識が戻ると同時にルシファーは己の無力感を自覚する。
そして同時に自分がもう『ルシファー』ではないということも自覚した。
自覚したからこそ、無力感を覚えるからこそ、ルシファーだった者はもはや何もかもがどうでも良くなった。
自分はもう強者ではない。だから自分にはもう価値が無い。
ルシファーだった者の胸の内は諦観で一杯だった。




