▼side Another act1:その頃の学園の生徒達Ⅲ
「不思議そうなカオをしているな」
ストゥムの指摘にガラギスは肩を反射的に上げた。図星を突かれたからだ。
その様子にストゥムは仕方ないとばかりにこめかみを押さえる手を離してガラギスのことを見据えた。
「彼の地位や僕達の地位を思えば彼を気に掛ける必要は無い。あの強さだ、悪党に堕ちた時は手が付けられそうに無いという可能性は有るが、その心配は誰に対しても抱いて然るべき些事だ。
だが彼が僕達の友人だと考えればどうだい。
言っただろう。ここには彼の友人として居ると。
僕達は彼の友人として、死に急いで生きてる彼を心配しているんだよ」
「……その、どうしてそこまで彼にその、入れ込むのですか?」
「彼の飾らない態度がこの学園に入るまで周りに居なかったというのも有るが、1番は彼と話すのが純粋に楽しいんだよ。特に魔法や魔法陣学や薬学なんかの話はとても刺激的で有意義なんだよ」
「俺の方も前半は同じ理由だ。奴の飾らない態度が新鮮なのだ。そして俺の方は、生身で魔力や魔法の強化もせずに獣人族と戦える存在というのが珍しくも有り、何よりサースとの戦いは常に新しい発見と気付きをくれる。やればやるほど強くなるのを実感出来るのだ。仲良くしたいのは当然だろう」
2人の答えにガラギスは「そうだったんですね」と返しつつ、内心冷めた目で2人の王子を見ることになりそうだと思う。
それを自覚したからこそボロが出る前に話を切り上げようと判断したガラギスは、そこで続く言葉を紡がず口を噤んだ。




