脳筋共の会話Ⅲ
そんなサタンの牙城の崩し方は人体の急所たる関節部分や心臓や首を狙うのが常套手段ではある。
しかしその部位への攻撃ですら竜人族のような鱗で覆われた皮膚を前にしては生半可な攻撃では意味を為さず、取れる手段はサタンの防御力の上を行く破壊力で正面から潰すか衝撃を中へと送る武術を用いるしかない。
だがこの武術をさせてもらえるほど簡単な相手ではないという、とにかく相手をするのが面倒な相手だ。
そんなサタンへ挑んだのは、この衝撃を中へと送る武術がどれ程自分の物にしたのか、どれだけ破壊出来るか、この水の腕でも同じように戦えるか、そして今の俺はサタンを相手にどれだけ迫れるかを測る為だった。
己の得意分野を伸ばすという意味ではスケルトンも良いが、このサタン以上にちょうど良い相手は居ない。
何よりサタンとの殴り合いは楽しい。現に、サタンの口からはコバルトブルーの血が流れている。表情は破顔したものだが、どうやら俺の力はサタンに届くまでになっていたらしい。
殴る度、殴られる度に、サタンのその表情からの推測になるが、まるで「本当に強くなった」「もっと死合おう」みたいな気持ちが伝わって来るようだ。
ただ1つ、サタンとの殴り合いには大きな問題が1つだけ有る。
サタンに釣られ、俺まで防御を捨ててサタンのやり方に釣られてしまうことだ。
俺はサタンのような肉体を持っていなければ、総魔力が優れている訳でもない。結局俺の魔力に関する規模は総魔力量程度だ。
だから結局限界はすぐに訪れ、俺の方が先に力尽く。
開始の合図とも言える互いの右拳が相手の頬を捉えると同時、限界が来た俺の体は後方へと飛び、壁へとぶつかり、指1本動かすのも億劫な状態になる。
壁が崩れ砂埃舞う視界の先にサタンがゆっくり近付いて来るのが見える。
俺の傍に辿り着くと、落ち着いた声で聞いてきた。
「もう終わりか」
「少なくとも今の俺にはこれが限界らしい」
「そうか。では回復した後、再び死合おう。この短期間でよく俺に血を吐かせた。人間を相手にこれほど楽しんだのは恐らく初の事だろう」
「それは光栄だな」
「改めて問おう人間。名は」
「サース・ハザード」
「またなサースよ」
喋るのすら気怠い体に鞭打ち話せば、魔王達存在の上位者から最大の言葉を貰えた。
その事に身を震わせたかったが、去るサタンと入れ替わるように近付いて来る魔王を見て客観的に自分の体の状態を改めて認識し、大人しく体から力を抜いた。
次が楽しみだ。




